お代はいりません!
サザンカが廃れた武器屋の改装のために連れてきた、大工職人のハインツ達一行。
彼らが意気込み、作業に移ろうと動いた刹那、武器屋の店主が再び彼らの作業を止めに入った。
「ま、待ってくれ!
改装は嬉しいが……どういう風に改装するつもりなんだ?」
「どんなって……嬢ちゃんの依頼通りに、ちゃんと武器屋に見えるようにだが……。
なんだ、不安か?」
「い、いや……不安とかではなくて……」
「あぁ、なるほどな。
あんたも職人だもんな。
それなりのこだわりがあるんだな」
「わ、わかるのか……」
「あぁ、わかるさ。
俺も大工職人だからな。
俺は俺で、それなりに職人としての意地やこだわりがある。
あんたもそうなんだろ?
んで、どんな風に改装をしたいんだ?」
「あ、あぁ、そうだな……えっとだな……」
同じ職人同士、通じるものがあるのか、終始戸惑っていた店主がハインツの言葉によって、自分の考えや提案を持ち出し始めた。
それは、自信をなくしていた店主が前を向き始めたという変化の証だ。
そんな店主達のやり取りを、遠目に見ていたサザンカはほっとしたような穏やかな表情で見守っていた。
「う~ん……どんな風に改装をして欲しいか、言葉で説明するのは難しいな……。
もっとわかりやすいように、絵を描こうか……。
だが、俺は絵がダメで……」
「店主の言葉での説明もわからんでもないが……絵があるとより分かりやすいな。
設計図って所だな。
それがあれば、店主の思うような改装が出来るんだが……」
店主とハインツの改装の話が口頭だけではまとまらず、店主が紙とペンを持ち出して想像する内容を絵にしてみるが、なかなか上手くいかないようだ。
その様子にサザンカは、店主に自身のスキルである、『スキル判別』を発動させた。
「(……ウサギさんのスキルは……鍛冶スキルと土魔法のスキルだけだね。
種族は亜人……マツリカお姉さまの眷族だから、スキルをもう少し持てるかな……よし!
ウサギさんにスキル、『イマジネーション』……想像力のスキルを付与!
効果は、頭の中に思い浮かんだ想像を人に伝えたい時、目の前に映写されるものとします!)」
サザンカは人に気づかれないように、そっと手を店主に向け、スキル付与を施した。
すると、改装の事で頭を抱えていた店主が一瞬だけ光った。
その光が収まったかと思った矢先、ハインツと他の大工職人たちに見えるように、空中に店主の思い描く改装の内容が映し出された。
「な、なんだ?!」
「こりゃぁ、驚いた……。
店主……こんなスキルを持っていたのか?」
「い、いや……俺には鍛冶と土魔法のスキルしかなかったはずだが……」
「なら、サザンカ様のおかげだな。
どこかで俺たちの事を見てて、スキルを付与してくれたんだろう」
「そうなんだろうか……。
言い伝えでは、活発で破天荒な方だと聞いたが……気まぐれなのでは……」
「たしかに、この広い世界だ。
一人一人見守るのはいくら神でも難しいだろう。
気まぐれかもしれん。
だが、仮にもその気まぐれなスキル付与のおかげで、俺たちは仕事がはかどり、あんたも満足のいく改装が出来るわけだ。
感謝しないとバチが当たっちまうな」
「それもそうだな……。
サザンカ様と……そしてハインツ殿たち職人にも……」
「よせやい。
そんな湿っぽいのは性に合わねぇんだ。
さ、今度こそ改装の作業に入らせてもらうぜ」
「あぁ、内容としてはこんな感じだ……――。
よろしく頼む……」
ハインツ達にスキルの『イマジネーション』で、思い描く改装内容を事細かく説明をして、改めて頭を下げて頼み込む店主。
その店主の言葉に、満足そうな笑顔を向けたハインツは、再び威勢のいい掛け声を職人仲間に放ち、皆で作業に取り掛かったのだった。
店主たちの事の成り行きを見守っていたサザンカ達は、作業の邪魔にならないように店を出ようと動いたのだが、それを店主が止めに入り、サザンカ達が買おうとした武器を持ちながら店の奥に案内をした。
店主によって案内された場所、そこは店の奥の作業場だった。
その作業場は表の売り場よりも広く、鍛冶をする大きな工場に大きな作業台、そしていくつもの武器や防具などがずらりとキレイに壁に沿って並べられていた。
「わぁ~、表よりも武器がいっぱい!」
『これは……とても大きく、立派な鍜治場ですね……』
『俺たちをこんな所へ連れてきてどうしたってんだ?』
「……嬢ちゃん達……今まで使ってた武器をここに置きな」
そう言った店主は、大きな作業台に持ってた武器をおろしながら、サザンカ達を促した。
「ウ……ウサギさん……まさか……この期に及んでカツアゲですか?!
最終的には身ぐるみまではがすつもりとか?!」
「ん~……嬢ちゃん、何を言ってるんだい?
そういうつもりじゃ……」
『すみません……この方、時々こういうところがあるんです……』
『このおっちゃんがそんな野蛮な事するわけねぇだろ、ド阿呆』
『そ、そうですよ、あげは様。
ド阿呆とまではいかずとも、このウサギさんがそんな事するはずないですよ』
『……姉さんと同意見……』
「ごめんなさい……」
サザンカの言葉に呆れや焦りを見せる一行。
皆の言葉にシュンとうな垂れるサザンカ。
そんなサザンカ達の様子に、店主は咳ばらいを一つした。
「あ~……嬢ちゃん達……さっきから俺の事をウサギさんと言ってるが……自己紹介がまだだったな。
俺は亜人族のヴォルフだ。
改めてよろしく頼む」
「ヴォルフさん……かっこいい名前ですね!
改めてよろしくお願いします!」
「……嬢ちゃんは復活するの早いな……。
さっきまで落ち込んでたのに……」
『こいつはこういうやつだ。
んで? 俺たちに武器を出させてどうしようってんだ?』
「それはだな……。
改装のお礼に、さっき買うと言ってくれた武器をさらに強力なものにする!
そして、今まで嬢ちゃん達が使ってきたであろう武器たちは、俺が買い取って新たな武器に生まれ変わらせて売りに出す!
もちろん、売り値のいくらかは嬢ちゃん達にまわすが……どうだろうか」
「……そういう事でしたら……この武器たち、買い取りのお代や売値のお代はいらないので、立派なものに生まれ変わらせてください。
そして、うまく使いこなせる人の手に渡るようにしてください」
「嬢ちゃん……本当に……お代はいらないのかい?」
「はい! お代はいりません!」
サザンカはヴォルフの話を聞き、ヴォルフが指し示した大きな作業台に今まで使っていた武器を置いた。




