押し問答のすえ
店仕舞いをしていた武器屋で、武器を買う事にしたサザンカ達。
閑古鳥が続いた中でのサザンカ達の武器の購入がよほど嬉しかったのか、店主は通常よりも安くサザンカ達に売ろうとしていた。
だが、サザンカは店主のその行為を惜しくも断ったのだった。
「嬢ちゃん……気持ちは嬉しいが……。
この店はもう閉める予定だ……。
最後に、俺の好きなように売らせてくれないか……」
「……好きなように……。
そうかもしれませんが……でも……やっぱり、適正価格で買いたいです!!」
『そうだぞ、おっちゃん! 適正価格にしないと俺たち買わねぇからな!』
『そうですよ、割引は嬉しいですが、この割引は受け取れないですよ』
「嬢ちゃん達……ありがとうな……。
だけど、ほんと……いいんだ。
嬢ちゃん達が最初で最後の客でよかったよ……」
「……どうして……そんな諦めたような売り方なのですか……。
丹精込めて作った武器たちじゃないんですか……。
わが子同然では……ないのですか……。
何かを生み出すのは……とても簡単な事ではないはずです!
お店も……念願だったのでしょう?!
売り方も……もっと工夫すれば、買い手がいるかもしれないじゃないですか!
自分のしたい事……簡単に諦めないでください!」
『……あげは様……』
サザンカは、店主の諦めたような言葉を聞けば聞くほどやるせない気持ちがこみ上げ、少し感情的になり、カウンターに身を乗り出した。
「……売り方なら……工夫したさ。
店の中や外の見た目がダメなら、市場で売ったり露店を出して売ろうと考えて実行した。
だが……買い取りはあったが、店の噂を聞くと、皆、返しに来た……。
一部には、店の見た目が武器の信用に繋がるとも言われた……」
『……お店の見た目でそこまで言われるのですか……』
「……」
店主の話に、皆の口からはこれ以上の言葉は出なかった。
サザンカも言葉が出ず、静かにカウンターから離れ、そのままの足で店の外に出て行ったのだった。
サザンカが出ていき、店に残された皆に、店主は静かに話しかけた。
「すまんな……そういう訳だから……最後くらい、好きに売らせてくれ……」
『……おっちゃんの気持ちはわかったが……財布とか金は全部、今出て行ったあげはが持ってるんだ……。
あいつが戻って来るまで、ここにいさせてくれないか』
「……わかった。
俺は裏で荷物整理をしているから、何かあれば呼んでくれ」
そう言った店主は、寂しそうな表情を浮かべ、お店の裏にこもった。
『あげは様……どこに行かれたのでしょう……』
『……あげは様……何か考え事をするために外に行ったのかな……』
『あげは様の事だから、このお店をどうしたらお客でいっぱいになるか考えていると思うんだ……』
『ほんと、お人好しだよなぁ。
こんなお人好し見た事ねぇよ』
皆が、少し小話をはさみ、店の外に出て行ったサザンカを待つこと数十分。
突然、店の扉が勢いよく開かれ、大道具を持ったガタイの良い男たちが数十人、中に入ってきた。
「おーす!! 依頼があった店はここで間違いないんだよな?!」
『な、なんだ?!』
『いったい、何事ですか?!』
突然の男たちの訪問に戸惑いを隠せないでいる一行。
そこへ、威勢のいい声を聞きつけ、店の裏に行った店主までも慌てた様子で表に出てきた。
「な、なんだ、お前たちは……何用だ?!」
「俺たちは大工をしているもんだ。
この嬢ちゃんに頼まれてきたんだよ」
男たちがそう言うと、お店を出て行ったサザンカが、男たちの間を縫うようにしてお店の中に入ってきた。
「みんな、お待たせ!!
このお店をどうにか繫盛させる事が出来ないか考えてたの。
そしたら、いっそ改装してしまえばいいじゃんって考えにたどり着いたんだ!
それで、街一番の大工さんを聞きまわって、このハイラムさん達にお願いすることにしたの!」
サザンカの話によると、店を出て行った後、この店に何か出来ないか考え歩いていた。
そこで改装を思いつき、街の人達に腕の良い大工を聞きまわり、ハイラムが営む工場にたどり着いたのだった。
『……この人たち、あげはの仕業かよ……』
「え、な、嬢ちゃん……?」
「ウサギさん、どうしても武器を適正価格で売ってくれないなら、私も強硬手段ですよ!!
さ、ハイラムさん達、お願いします!
このお店を立派な武器屋さんへと変身させてください!!」
「ま、待ってくれ!!
うちに改装するお金なんてないんだ!
せっかく来てくれて悪いが……」
サザンカの言葉でさらに店に入ろうとするハイラム達職人を、店主は慌てて止めに入った。
だが、ハイラムの言葉によって店主は、ピタリと動きを止めた。
「金なら、もうこの嬢ちゃんからもらってるぜ」
「え、あ、なんだと……」
「ありゃぁ……驚いたよな、頭!
急にこの嬢ちゃんが工場に来て、「改装をこのお金でお願いします! おつりはいらないので!」って言って布袋から金貨を二掴みしてさ。
その数ときたら、たまげたもんだ!」
男たちの話に唖然とする店主やオミ達。
そう、サザンカは、ハイラムの工場にたどり着くなり、何の前置きもなく、用件だけを伝えて潔く支払いを済ませたのだった。
サザンカの急な訪問に驚いたハイラム達だったが、事情を聞き、大量の金貨を受け取ったことで、サザンカとともに廃れている武器屋へと足を運んだとの事だ。
「ま、そういう事だから、この店……好きに改装させてもらうぜ。
嬢ちゃんの気持ちや、もらった金を無駄にするわけにもいかねぇしな。
あー……と言っても、もらった金は額が大き過ぎて、仕事量と比べるとだいぶ余っちまうが……」
「構いません!!
おつりはいらないと言いましたから!
ただ……先ほど話したように、ちゃんと武器屋に見えるように改装をお願いしたいんです!!」
「おう! それなら任せな!!
よーし、やるぜ、野郎どもーーー!!」
「「「おーーー!!!」」」
ハイラムの威勢の良い掛け声で、職人たちはさっそく改装の作業へと行動を移したのだった。




