武器選び
街の中にある武器屋を探し回るも、なかなか希望の武器屋にたどり着けなかった一行。
そんな中で、サザンカが見つけた武器屋の看板が釣り下がっている、廃れた建物に入ることにしたのだった。
「ごめんくださーい!!」
「……らっしゃい……」
『外もそうだが……中も陰気臭いな……』
一行が入った建物の中は薄暗く、とてもお店とは言えないくらい、おどろおどろしい様子だ。
その薄暗い店の中で、一人の男性が荷物をまとめていた。
その者は体格が良く、ウサギ耳をピンと立たせた男性だった。
「……ウサギ耳をもったおじ様……」
「……まぁ……否定はしないが……。
武器を……買いに来たというのか?
後ろの兄ちゃん達はともかく、嬢ちゃん……冒険者なのか?」
「そうですよ!」
「……とてもそんな風には見えないな……」
「……私……そんなに冒険者っぽくないのかな?
ギルドでも、冒険者に見えないって言われたんだよね……」
男性の言葉に、自分を指さしながらオミ達に視線を向け、言葉を求めるサザンカ。
『まぁ、ひょろくて弱そうだしな』
「……ひょろい……弱そう……冒険者っぽくない……ここでも……そんな……」
『オミ様!』
『んだよ、ホントの事だろ』
『……あげは様……元気出して……』
至る所で冒険者っぽくないと言われたサザンカは、よろよろとお店の隅に移動し、下を向いてぼそぼそ何かを呟きだした。
そのサザンカを励ますオウカとヒスイ。
オミに至っては、サザンカの様子を気にもとめず、店内を見渡した。
『にしても……おっちゃん、何してたんだ?』
「……売れ残りをまとめてるんだよ」
『あの……表に看板がさがっていましたので、立ち寄ってみたのですが……品物を見せて頂いても?』
「好きにしな……」
『なぁ……なんでこの店、こんなに活気がないんだ?』
男性は手を止めることなく、まとめた荷物を店の奥や端に移動させながら静かに話し出した。
「……この店は……俺がなけなしの金をはたいて買った、念願の店なんだが……。
契約を結ぶ前に見た店の状態と、後に見た状態がまるで違った……」
『……幻術をかけられたの?』
「……あぁ、その通りだ……。
値段は手ごろでキレイな建物、立地も良い……好条件だと思ったんだが……。
店を開けようと後日この店に来たら、すでにこのありさまだ……。
改装する金や建て直す金もなく、成す術がないまま開店したという訳だ……」
『……スキルで見たところ、品物は上級の物ばかりのようですね。
デザインも良く、これだけ質の高い品がそろっているのに、どうして買い手がいないのです?』
「看板がさがっていようと、外観と中の様子を見てそそくさと帰っていくやつが多いんだ……。
店を開けてから半年……ずっと閑古鳥さ……。
だから、こうして閉店の準備をしている訳だ……」
店主は寂しそうにうつむき加減に話し終えた。
『……この武器たちは、どこで作ってるんだ?
レイの言う通り、すげー上物ばかりだな』
「あぁ……それなら、店の奥でしてる……。
表はこんなでも、作業場は立派なんだ……。
陰気臭いのは変わらんがな……」
店主とオミ、レイの三人が話し込んでる中に、先ほどまでお店の隅にいたサザンカが話に入ってきた。
「あの~……ここにある品物……買ってもいいですか?
冒険者っぽくないなら、そう見えるように装備したらいいかな~って……」
「……俺は構わないが……いいのか?
こんな陰気臭い店の品物……」
『店はともかく、品物の質は高いですから、ぜひ見せてくださいな。
あげは様、どれになさいますか?』
サザンカ達の言葉に戸惑う店主をよそに、各々好きに店内を見て回る一行。
「ん~……どれにしようかな~……」
『……僕、この双剣にする……。
刃が少し短めで好み……。
それに、持ちやすくて手にしっくりなじむ……』
『俺はこのロングソードにするぜ。
デザインかっこいいな! 握り手のデザインが赤くて、燃えたぎる炎って感じだ!』
『私はこの魔導士用の杖にします。
杖先の魔石の色がとてもキレイな水色をしていますので……』
『わたくしは……基本、拳一つでいいので……あ、この片手ナックルにしますわ』
「……皆、好みの物が見つかっていいな~」
皆が好みの武器を見つけ、手に取り、見入っている中、サザンカはまだ好みの武器に出会えていなかった。
サザンカがさらに店内を見渡すと、カウンター横にほこりをかぶった武器とは思えない品物が目に入った。
「これ……武器?」
「あぁ……それは、エネルギーを流すと風魔法が使える武器さ。
その扇子……風魔法が組み込まれた魔法石をはめて作ってあるんだ」
『開くと紅色のキレイな扇子ですわね』
「うん……。
でも……エネルギーのコントロールがヘタだから……。
この武器は私には扱えないかな……」
「……嬢ちゃん……エネルギーのコントロール……ダメなのかい?」
「はい……」
『致命的だぞ』
「……なら……これを付けるといい……」
そう言った店主はカウンターの内側を探り、品物を取り出した。
「これは……リストバンド?」
「そうだ。
特殊な布で出来てるバンドでな。
強いエネルギーを放出しようとしても、そのバンドをしている間は、限界値が限られる。
だが、限界値内の少量までならコントールが出来るんだ」
「……すごい……こんなのがあるんだ……。
あの、これください!!
人に使う分にはいいけど、武器にはちゃんと流せなくて……。
どうしてもエネルギーが多く放出されてしまうんです……。
このままじゃダメだってずっと思ってて……だから!!」
「嬢ちゃん……。
そんなまっすぐな目を向けられたら、商人冥利に尽きるというもんだ……。
それじゃ、その扇子とリストバンド込みで嬢ちゃんの会計は金貨3枚だ!
兄ちゃん達のは金貨2枚で持っていきな!」
『はぁ?! 安すぎだろ!
武器ってのはだいたい、金貨5枚から値がつくんだぜ?!』
『オミの言う通りです!
先ほど見て回った所は金貨20枚からの値がついていたのですよ!』
「そんなに安いの?
ダガーナイフとか安い印象だけど……」
『たしかに、一番安くて扱いやすいものは銀貨5枚から値がつきます。
ですが、冒険者用の武器は命を賭す代物……一番安くて金貨5枚から値がつくのですよ』
「それを……安く売ってくれるなんて……」
「いいんだ。
誰も見向きもしなかったこの店に足を運んで、品を見てくれて、手に取ってくれて……俺は、もう……それだけで……」
「……ダメです……。
……念願のお店なのに……やっと買い手が見つかって、儲ける事が出来るかもしれないのに……。
絶対、適正価格でお願いします!」
オウカの説明を聞き、店主の好意を惜しくも断るサザンカだった。




