武器屋へと
サザンカが鏡で勉強したのちに、回避の修行を皆と行った日の夜。
皆が寝静まった後も、サザンカは一人、スキル『影隠れ』を使って宿を抜け出し、宿の裏にある小さな公園へと来ていた。
「(……皆、気配に敏感だから、スキルは発動させたままでいよう。
さて、昼間に鏡で見た動きはたしか、こんな感じで……)」
サザンカは、昼間に鏡で見た動きを一つ一つ思い出しながら自分の体に覚えさせていき、昼間に皆とした修行の動きも合わせて復習していた。
「(うん、だいぶいい感じに体を動かせるようになったかな。
やっぱり、体を上手く使うには実践とか修行とか、慣れが必要だね)」
しばらく一人で修業をしていたサザンカだったが、夜も更けてきたところで修業を切り上げ、宿に戻った。
宿に戻り、シャワーを浴びて汗を流し終えたサザンカは、ベッドに入り、次の修行として、エネルギーのコントロールをどうにかしなきゃと考えながら眠りについたのだった。
***
翌朝。
この日はいよいよ、ギルドマスターのライナーとの約束の日だ。
目が覚めた皆は、朝食を採るなど出かける支度をしてギルドへと向かった。
ギルドに着くと、サザンカはさっそく受付に行き、ギルドマスターに会えるように手続きをした。
しばらく受付付近で待ってると、奥の部屋からライナーが顔を出し、サザンカ達を部屋まで案内した。
「それじゃ、報酬の話だな。
今回の報酬は全部この布袋に入ってる。
一応、秤も用意したから、確認をしてほしい」
ライナーにそう言われ、レイが布袋と秤を受け取って、中身を数え始めた。
「この布袋は頂いてもいいんですか?」
「あぁ、かまわねぇぞ。
そういや、嬢ちゃんたち、まだこの街にいるんだろ? あとどれくらい滞在の予定なんだ?」
「とくに期限は決めてないです。
オウトに行こうとしてる途中なので、そんなに長くいないと思いますが……」
「そうか……なら、近々ウィスタードという街に顔を出してやってくれないか?」
「ウィスタード?」
「なんでも、癒しの雨を降らせてくれた冒険者がいて、五人のパーティーメンバーだと聞いた。
嬢ちゃんたちの事じゃないのか?
今この街にいる冒険者で、そんな神がかったことが出来るのは嬢ちゃん達しか思い浮かばないんでな」
『炭鉱帰りのあの小さな街の事でしょうか……』
「やっぱり、嬢ちゃんたちだったな。
その街の領主様に顔を出すように言伝を頼まれたんだ。
今から紹介状を書くから、ちょっと待っててくれないか」
ライナーは、自分の机の引き出しから書類とペンを取り出して、手慣れたように紹介状を書き始めた。
「ウィスタードって街……皆は知ってるの?」
『いいえ。
わたくし達は大きい街しか入ったことないので……』
『だなー……小さい街は行かないようにしてたなー』
「そうなんだ」
サザンカとオミ達が話していると、ライナーが紹介状を書き終えたようで、動かしていた筆を止めた。
「よし、出来たぞ。
これを街の警備員に見せるといい。
屋敷まで案内してくれると思うぞ」
「わかりました! 今度行ってみます!」
『お話、まとまりましたね。
こちらも勘定が終わりました。
全部で金貨580枚……たしかに頂きました』
「あぁ、ギルドとしても助かった部分がある。
ありがとうな」
『では、これはいつものように、あげは様のアイテムボックスに……』
「うん!」
ライナーとの話も終わり、報酬や紹介状も無事にもらい終わった一行は、ライナーに別れを告げ、ギルドをあとにしたのだった。
『あげは様、次はどこに向かわれるのですか?』
「うーん……。
あ! そうだ! 武器屋に行かない?!」
『……新しい武器……。
僕、見たいかも……』
『そうだなー……今の武器もいいが……他のも見てみたいな』
「そうと決まれば、レッツゴーー!!」
目的が決まったサザンカ達は、武器屋を目指して街中を歩いた。
ギルドからそう遠くないところの武器屋にたどり着いた一行。
「立派な構えだね~」
『はい。
ですが……まずは私が中へ行きます。
あげは様からのスキル『解析・鑑定』を使いますね』
「う、うん……」
そう言ったレイは、スキルを発動させて一人、武器屋の中へと入っていった。
『……武器屋の中には、ぼったくる人がたまにいるから……』
『品が悪いわけではないのですが、あまりにも高額に売りに出してる商人もいるのですよ。
割に合わない……とでもいうのでしょうか……』
『あまり良くない品でも高く売るやつもいるしな。
どうせ買うなら良い品で、価格も割に合った方がいいからな』
「たしかに……。
武器屋にもいろいろあるんだね……」
サザンカ達が武器屋の前で話し込んでると、眉間にシワを寄せたレイが中から戻ってきた。
『……ダメだったんだね』
『はい……。
品物はいいのですが……価格帯が……』
『じゃ、次だな』
下界の事はオミ達が詳しいので、自然とオミ達の動きに合わせるサザンカ。
一軒目を後にし、二軒目、三軒目と武器屋を回るが、程よい武器屋がなかなか見つからないようだ。
なかなか武器屋が見つからない事に途方に暮れながら街中を歩いていると、サザンカが武器屋の看板を遠目に見つけ、一行はその建物に近づいた。
『……これ……武器屋?』
『看板は武器屋よ……』
『……お化け屋敷みたいですね』
『本当に営業してんのか?』
「とりあえず、行ってみよう!! ごめんくださーい!!」
皆が怪訝な表情を浮かべる中、一人、意気揚々と廃れた建物に入っていくサザンカ。
オミ達は顔を見合わせながらも、サザンカの後に続いて武器屋であろう建物の中へと入っていったのだった。




