いつものサザンカ
ロゼッタとリアナ、二人の少女に急遽お風呂に誘われたサザンカ。
そのおかげか、先ほどまでつっかえていた心のモヤモヤが晴れ、サザンカなりに答えを導き出した。
サザンカが答えを出した後も、三人はしばらくお風呂の中で楽し気におしゃべりをしていた。
サザンカ達がお風呂から上がり、着替えを済ませて脱衣所の扉を開けると、外で待っていたオウカとレイが、猫耳の女性と話していた。
「あ、おかーさん!」
「……おかえりなさい」
「聞いたわよ、ロゼッタにリアナ。
急にお姉ちゃんをお風呂にお誘いしたんですって?
お姉ちゃん達を困らせてはいけません。
すみません……子ども達が……」
「「……ごめんなさい……」」
「そんな、謝らないでください!
私……いろいろあって、気持ちが落ちていたところを、この子達に助けてもらったんです!
なので……あまり叱らないでください!」
「あなたがそう言うなら……わかったわ、ありがとう……。
私はアリア。
この子達の母です」
「私はあげはと言います。
お風呂……ありがとうございました!」
「よろしくね。
あ、そうだ、この後のご予定は? よかったら、軽食でもいかが?」
アリアと軽く挨拶を交わし、少し考えたサザンカ。
「……。
お誘いは嬉しいのですが……。
旅の仲間を待たせていますので……」
「旅? もしかして、冒険者か何か?」
「はい、一応、冒険者です」
「まぁ、そうだったの……引き留めてごめんなさい……」
「いえいえ、そんな!」
「……おねーちゃん……もう行っちゃうの?」
「……寂しい……」
「ごめんね……。
でも、この街にはまだもう少しいるから、また会おうよ! 約束!」
「……うん……約束」
「絶対だよ!!」
寂しそうな眼をする二人に、小指を差し出すサザンカ。
三人は小指同士を絡め、また会う約束を交わした。
「それじゃ、そろそろ行くね! 本当にありがとう!
ロゼッタちゃん、リアナちゃん!
アリアさんも、お世話になりました!」
「お気をつけて」
「おねーちゃん、またね!」
「またね……」
「よし、オウカ、レイさん、宿に行こう!」
『ふふっ、了解です!』
『承知しました』
アリア達親子にお礼と別れの挨拶をしたサザンカ達は、宿泊している宿へと足を向けた。
宿に着いたサザンカは、部屋に備え付けてある椅子に座り、机に向かった。
『あげは様……机に向かってどうされたのですか?』
「勉強するの!
今後、間違った力の使い方をしないように!
必要な時に必要な形でスキル付与ができるように!」
『オミ様の、『誰のために、何のために』……っていう言葉ですね!』
「うん!」
『勉強はいいのですが……どのようにするのですか?』
「ふっふっふ~……これ!」
レイの質問に答えるように、サザンカはアイテムボックスから鏡を取り出した。
『鏡……ですか?』
「これ、世界の様子を見る事ができて、その世界にある本を読むことも出来るんだよ!
あと、葉っぱとか……他の自然物だけ取り出せたりできるの!
前にちょっとだけスキルの勉強をした時は、地球の山の中で雑誌とか本とか、山積みになってる場所から取り出したんだ!
一応、「後で返します」って手紙をその場に残したの!」
『つまり……所有者がいない物を取り出せる……ということでしょうか』
「そういう事に……なるかな?」
『神器というものですね! あげは様すごいです!』
『それで……どのような勉強をするのですか?』
「とりあえず……食物連鎖とか、自然の摂理とか、弱肉強食とか……かな」
『スキル付与したことによって、矛盾が起きたりしないように……ですね』
『それと、あげは様の事だから、理不尽なことから万物を守るため……よ、きっと』
サザンカが机に向かって鏡を覗き、勉強をしている傍ら、オウカやレイも椅子に座りサザンカとともに机に向かって勉強をした。
しばらく三人で勉強をしていると、部屋の扉が開かれ、ギルドに行っていたオミやヒスイが戻ってきた。
サザンカは、鏡に向けていた視線を扉の方にいるオミ達に向けた。
『なんだぁ? 皆して机に向かって』
「ちょっといろいろあって、勉強してるの!
はい、オミ君、リピートアフターミー! 食物連鎖とは……」
『……』
「スルーしないでよ!」
サザンカの言葉をスルーしたオミは人型を解き、狼の姿でベッドに伏せた。
『……あげは様……なんだかいい匂いがする……
僕、この匂い好き……』
「えへへ~、ちょっとね」
『……』
「? ヒスイ? どうしたの?」
ヒスイがサザンカに近寄り、匂いを嗅ぎ取ると、ジッと見つめ、うつむいた。
『……さっきは……ごめんなさい……。
臭いがイヤだからって……距離取って……』
「ううん、もう大丈夫だよ。
街の子に助けてもらったし! それに、こうしていい匂いにもなれたしね!」
『それで元気なんだな』
「うん!
それと、スキル付与……やっぱり、今後もしていくよ。
これは私の仕事だから……。
でも、今後付与する時は……自然の摂理や食物連鎖とは関係なしに、理不尽から守る時と、個人の能力として付与をする。
そう……決めたんだ」
『そうか。
今の言葉……創造神様が聞いたら泣くだろうな。
たぶん』
『……うん……いつものあげは様だ……よかった。
あ、そうだ……これ……』
そう言ったヒスイは、自分の服のポケットから何かを取り出した。
「これは……リボン?」
『ここに来る途中、露店で見かけたから買ったんだ。
あげはに似合うだろうって、ヒスイが選んだんだぜ。
お詫びだとさ』
「……ヒスイ……ありがとう……」
『……うん』
『あげは様! わたくしが結って差し上げます!』
そう言ったオウカは、ヒスイがサザンカのために購入したピンクのリボンをサザンカから預かり、髪を結った。
『はい! 出来ました! ハーフアップにまとめましたよ!
リボンの幅がちょうど大きめで、長さもあるので、大きな蝶々結びが出来ました!』
『とてもお似合いですよ』
『……よかった……ちゃんと似合ってる……』
『ま、馬子にも衣裳だな』
『オミ様は素直じゃないだけですので、気になさらないでくださいね』
「ん? うん、気にしてないよ?」
『……あげは様……もしかして、馬子にも衣裳って知らないんじゃ……』
『……マジかよ……。
あー……悪かった、素直に似合ってるぞ』
『ふふっ、オミがこうも素直になるとは、あげは様は最強ですね』
「え、何? なんで皆して笑ってるの? 私、変な事言った?」
『いいえ。
あげは様は変わらず、そのままでいてくださいね』
「ん? うん、私は変わらないよ?
あー……でも、変わらないといけない部分もあるかもだけど……」
皆が、サザンカの言葉にやわらかい笑みを浮かべる中、サザンカは一人キョトンとしたり、勉強の事を考える姿勢を見せたのだった。




