ダ女神の次は……
依頼を終え、ギルドに戻る途中、林の中で数体の花型の魔物に出くわした一行。
その中で、サザンカのためにオウカが逃げ道を作り、うまく逃げ切れたと思ったのだが、魔物はサザンカだけを狙い、ツルで捕まえようとしている。
当の本人はと言うと、捕まらないように必死に逃げ回っていた。
「もう、いい加減にして~~~!!!
皆~~~、どうにかしてよ~~~」
『つっても、火魔法も効かないしなぁ……。
どうすっかな……』
『……レイ……スキルでもわからないの?』
『……今発動させていますが……。
えー……あ、幻覚を見せる霧を発生させ、火魔法は効かず……花好き……という情報が。
それから、急所は花の中心ですね』
『花の中心とは……あの大きなお口が開いているところ……でしょうか……』
『ほぼ口の部分にどうやって攻撃を加えるかだな……』
「冷静に解析、鑑定してないで、早く助けて~~~って、わ?!」
レイ達が魔物の対処法を考えている傍ら、逃げ回っていたサザンカの足がもつれ、その場に転んだ。
その時、サザンカの懐からあるものが落ちた。
『あげは様?!』
『……なんか、落ちた……花?』
サザンカを追いかけまわしていたツルが、サザンカの元まで伸びた。
捕まると思ったサザンカは、目をぎゅっと強く閉じた。
だが、ツルはサザンカの懐から落ちた花に伸び、その花を拾い上げた。
その花は、先ほどサザンカが、依頼の花であるビナチアと間違えて採取した花だった。
『あの魔物……あげはから落ちた花を愛でているように見えるのは気のせいか?
というか、なんで間違えた花を持ってるんだ、あいつは……』
『……花が花をスリスリしてる……』
『花好きとは……そういう事ですの?』
『……どうやら……あげは様から落ちた花……マタタビ効果があるみたいです…特にあの魔物には効果的だと……』
『……だからあの時、あげは様、いい匂いがするって……』
『マタタビって……人型にとっては好ましくない匂いのはずじゃ……。
あいつの生態系、どうなってんだ……』
サザンカと魔物の様子を見守っていたオミ達がそんな会話をしている中、サザンカはと言うと……。
「……この魔物たち……さっきの花が好きなんだ……。
はぁ~~、よかった~~~。
今のうちに……」
サザンカが魔物から距離を取ろうと地を這って動いた刹那、サザンカと目がないはずの花型の魔物、一体と目があった……気がした。
「……え……なに……私……美味しくないよ……」
『……』
「……」
『……ぺっ』
お互いが見つめ合うなか、少しの沈黙の後、花型の魔物に何かを吐かれたサザンカ。
その吐しゃ物を体に浴びたサザンカは、理解するまでに少しの時間を要した。
「なんか、ぺってした! ぺって! しかも臭うし、もぅ、最悪~~~~!!!!!」
『あげは様!!』
その様子を見ていたオウカが、ゆっくりと魔物たちに近づきだした。
『……あげは様を……汚す輩は……このわたくしが許しません……』
『『『あ……終わった……』』』
オウカの様子を見たオミ達は、花型の魔物に同情のまなざしを向け、後ろに後ずさってその場から少しだけ離れた。
そのオウカはというと、手指の関節を鳴らし、笑顔を魔物たちに向けながらゆっくりと近づき、一言放つと、全身にエネルギーをまとわせた。
『成敗!!』
そういうや否や、オウカは地面を蹴り、魔物の一体に飛び掛かり、拳で花の弱点を殴打した。
その間、オウカの弟であるヒスイが、動けないでいるサザンカに結界魔法を施し、さらに風魔法で体を浮かして自分たちの所まで運び込んだ。
「ありがとう、ヒスイ! 助かったよ!」
『……うん……無事でよかった……。
けど……臭うから……あまりこっちにこないで……』
「ヒスイ~~」
『……こっちにこないで……』
サザンカとヒスイがそんなやり取りをしている中、オウカはと言うと、サザンカが自分や魔物たちから離れたことに安堵し、本領を発揮した。
エネルギーを身にまとわせているオウカは、力加減など通常よりも高い状態だ。
その力を使って拳で地面を殴り、魔物たちの体勢を崩した。
地面を殴った衝撃で出来た破片を、今度は風魔法を使って、体勢を崩した魔物たちの弱点である花の中心の口をめがけて飛ばした。
さらに、先ほど同様に殴打も繰り出した。
その多彩な攻撃が効いたのか、花型の魔物たちは次第に動きが弱くなっていき、最終的には動かなくなり、枯れたようにしなびれた。
『ふぅ……こんなものでしょうか。
あげは様! ご無事ですか?! ぅっ……』
戦いが終わり、サザンカに駆け寄ったオウカだったが、あまりの臭いに顔をしかめ、駆け寄る足をその場で止めた。
「……オウカまで……」
そのオウカの反応を見たサザンカは、ヒスイに続く反応だったため、項垂れた。
『汚女神……だな……』
『……まぁ、実際……ひどい臭いですし……。
オミ、私が魔法を使いますから、風と火魔法で乾かしてあげてください』
『おう! 洗濯もんの要領だな!』
「せ……洗濯物……」
『あげは様、しばらく息を止めていてください』
サザンカは涙目で頷くと、レイの言葉に従い、口と鼻に手を当て息を止め、目を閉じた。
それを見たレイは、サザンカに水魔法をまとわせ、汚れが落ちるように水を回転させた。
汚れが完全に落ちたのを確認したレイは、水魔法を解いて地面に放流した。
その後すぐにオミが風魔法と火魔法で暖かい風を作り、サザンカを包んだ。
二人の魔法のおかげで汚れや臭いが取れたサザンカは安堵した。
その場が落ち着き、辺りに新たな脅威がないのを確認した一行は、再びギルドに戻るため、街の方角へと足を向けたのだった。
街へ戻るまでの道中、サザンカの汚れや臭いが取れたとはいえ、ヒスイがサザンカから距離を取りながら歩いていたのは、言うまでもない。




