またしても……
サザンカ達が話しながらも、冒険者ギルドで見つけた依頼の花の採取に訪れた場所は、ルーベルの街から東に少し離れた林の中だった。
「この辺に依頼の花が咲いてるの?」
『はい。
ギルドから頂いた依頼に関する調書には生息場所はこの辺だとあります。
ちなみに花の名前はビナチアと言うそうです』
「よし、ならさっそく、そのビナ……」
『ビナチアです』
「ビナチアを探そう!」
ギルドの依頼の花を、イラストを見ながら散り散りになり、手分けして探す事数分後。
各々採取した花を手にして集まったのだが。
『あげは様……その花は違います』
「え、でも、イラストに似てるよ?」
『……似てるけど……葉っぱの形とか、花びらの形が違う……』
『全部間違ってんじゃねぇか……』
「えー……せっかく見つけたのに……。
それに、すごくいい匂いがするんだよ?」
『匂いの問題……なのでしょうか……』
狼の皆が手にしていたのは、紛れもなく依頼の花、ビナチアなのだが、サザンカが手にしていたものは、似て非なる花だった。
『困りましたね……。
皆の手に持ってる花の数を合わせても依頼の数を満たしていません……。
ちょうどあげは様の持っている花の数で依頼達成なのですが……』
『んじゃ、俺が行ってくるよ。
花の匂いはわかったし、これなら群生地もわかるだろ』
『でしたら、私も一緒に行ってオミを手伝います』
「あ! なら、レイさんにスキルを付与するね!
スキル、『解析・鑑定』を付与!
効果は、万物の解析、鑑定が出来て事細かに情報を得るものとします!」
サザンカはレイの許しを聞くこともなく、手早くスキル付与を施し、得意げな表情を浮かべた。
『……あの……あげは様? なぜに……スキルの付与を?』
「依頼の花を見つけやすいかな~と思って!」
『嗅覚があるので花の匂いは覚えています。
なので、スキルはいらないのですが……。
……取り消すことは』
「できない!」
『……はぁ……ですよね……』
『……なぁ、あげは……。
お前、神界でもこんな感じだったのか?』
「んー……うん! 姉様たちにもよくスキルを付与してたよ?」
『……追放された理由って……実は姉たちにスキルを付与し過ぎたからじゃないのか……』
「え……」
『……まぁ、付与されてしまったものは致し方ありません……。
あげは様がせっかく付与してくださったのですから、ありがたく受け取らせていただきます』
「レイさん……うん!」
レイの言葉に満面の笑みを見せるサザンカ。
そんな二人のやり取りをオミ達は、呆れた表情を浮かべつつも微笑んで見ていた。
サザンカとレイの話が終わったところで、先ほどオミが言ってた通り、依頼の花を見つけに向かったオミとレイ。
その間、サザンカはオウカと武術の特訓をしていた。
『あげは様! 腰が引けてます! もっと踏み込んでください!』
「武術、は、剣より、むずか、しい!」
『出す腕に勢いをつけてください! 勢いが弱いと攻撃になりません!』
しばらくオウカの指導のもと武術の特訓をしていたサザンカ達のもとにオミとレイが依頼の花であるビナチアを持って戻ってきた。
「おかえり~!!」
『ただいま戻りました、これで依頼は達成です。
数も依頼より多く採れましたよ』
『思った通り、群生地が見つかってよかったな。
おかげで早く採取出来たんだぜ』
『……そうなんだ……。
それじゃ、ギルドに戻ろう……』
一行が合流し、ギルドに戻るため街の方角に足を向けて林の中を歩くこと十数分。
「ねぇ……。
なんか……同じ場所を歩いてる気がする……」
『そうですわね……。
ただ……匂いは何もないですわ……』
『なんか……霧も出てきてねぇか……』
『……感知には特に何も引っかからない……』
『先ほど頂いたスキルをさっそく使って、この霧を調べてみます。
スキル発動『解析・鑑定』……』
「……レイさん……何かわかりそう?」
『この霧……どうやら幻覚作用があるようです』
『……なら、風魔法で霧を晴らして、皆の状態を回復をするね……』
『頼んだわよ、ヒスイ!』
オウカの言葉に静かに頷いたヒスイは、風魔法を発動させて霧を晴らし、皆にスキル『癒しの力』を使った。
「霧……晴れてきた」
『あぁ、幻覚の作用もなくなってきたな』
『……あ……まずい……。
囲まれてる……』
「え……えーーー!! 何この植物ーーー?! 背が高い! 花びらおっきい! ツルがうねうね~!!」
ヒスイのおかげで霧が晴れ、辺りを見渡せるようになったのはいいが、いつの間にかサザンカ達は数体の大きな花型の魔物に囲まれていた。
『あげは様! わたくしが風魔法で隙を作りますから、その間を全力で走ってください!』
「オウカ達はどうするの?!」
『わたくし達ならこれくらい、どうにでもなります!』
「わ、わかった!」
『行きます!! 風魔法……ウィンズバースト!!』
オウカが花型の魔物の根本付近に風魔法を放った。
そのおかげで、花型の魔物の根本付近や、胴体の一部がくり抜かれ、一人分の通り道が出来た。
サザンカは、オウカが作ったその通り道に向かって全速力で走った。
オウカの魔法でうまく魔物から逃げれたと思ったサザンカだったが、花の魔物の様子がおかしい。
「え、な、どうなってんの~?!
なんでツルが私ばかり追いかけるのよ~~~。
花自身も私を見てるし~~~。
というか、胴体までこっちに来た〜〜〜!!」
『……なんか……あの魔物、あげは様ばかり狙ってる……』
『あげは様! 捕まらないように、そのまま走りまわってください!!』
「そんな事言われても~~~!!」
『……オウカ……さすがにそれは、あげはの体力が持たねぇよ……。
俺が火魔法をぶち込む!!』
そう言ったオミが花の胴体や花びらに向かって火力強めの火魔法を放つが、効いている気配が一向にない。
それどころか、ツルによってちょくちょくサザンカの足元になぎ払われている。
「オミの意地悪~~~!! ちゃんと花を狙ってよ~~~!!」
『狙ってるが、そいつにはじかれてんだよ!!
なんで火魔法が効かないんだ?! あいつ植物だろ!!』
花の魔物に捕まらないように、さらには、はじかれたオミの火魔法からも逃げるために走り回るサザンカだった。




