みんなお揃い
宿の受付嬢についていき、泊まる部屋に着いたサザンカ達。
受付嬢とは一度別れ、さっそく扉を開けて意気揚々と先に中へと入ったのはサザンカとオウカだった。
「わぁ~!! 広い部屋―! 大きいベッドが二つーー!!」
『キレイなお部屋ですね~!!』
『お二人とも……あまりはしゃがないでください……。
他の宿泊客の方もいるんですよ……』
『このベッド……サイズは大きいが、この姿のまま五人で寝るには狭すぎるな……。
やっぱり、人型を解除しないとだな』
『……部屋も見たし、置く荷物も特にないし、これからどうするの?』
「ん~……皆はどうしたい?」
『俺は服が見たいな。
いい加減、初心者冒険者みたいなこの服から脱したい……』
「わかった! じゃぁ、衣服屋さんに行こう!」
『お着替え、楽しみですね~!!』
荷物はすべてサザンカのアイテムボックスに仕舞ってあるため、ヒスイの言うように部屋に置いておく物も特にないのだ。
部屋をある程度見終わった一行は、街の衣服屋に向かうため、宿を出た。
衣服屋に向かう途中、サザンカ達は街の中の活気のある場所に差し掛かった。
そこはレストランや雑貨屋、花屋などいろいろなお店が並んでいて、中には野菜やパンを売るなど、いくつもの露店もあり、いわば商店街といったところだ。
「わぁ~!! いろんなお店がいっぱーい!
あ、あのお菓子美味しそう! あ! あっちの果物も美味しそう~」
『あ、あげは様?! どちらに?!』
『あいつはまた……』
『……あげは様……さっきご飯食べたばっかりなのに……』
サザンカは、商店街の活気に気持ちが昂り、出ている露店を片っ端から見て回った。
その結果……。
「えっへへ~。
なんかいっぱいもらっちゃった!!」
『もらっちゃった……じゃねぇ!!
お前が美味しそうって声かけまくって金を払っていったからだろ?!
どうすんだ、その両手いっぱいの食いもん!!』
そう、サザンカが露店を見て回った結果、一人、また一人とサザンカに声を掛ける者が増え、おかげでサザンカの両手は紙袋に入っているものの、露店の食べ物でいっぱいになったのだ。
「でも、どれも美味しいよ?」
『そうかもしれんが……』
『お嬢ちゃん、こっちも美味しいよ! 出来立てのふっかふかのパンはいかが~?』
「食べます! 一つください!
あ! それと――」
『またかよ?!』
またしても露店の女店主に声を掛けられたサザンカは、両手いっぱいの荷物を抱きかかえながら駆けて行った。
しばらくして皆の所に戻ったサザンカの両手には、さらに食べ物でいっぱいになっていた。
それを見たオミ達は飽きれるあまり、言葉を失ったのだった。
『……あげは様? さすがに荷物が多すぎますわ……。
今から衣服屋に向かわれますので一度、アイテムボックスに仕舞うのはいかがでしょうか……』
「……うん……やり過ぎたかも……。
オウカの言う通り、アイテムボックスに仕舞うね……」
先ほどよりも手にいっぱいの荷物をアイテムボックスに仕舞い、一行は再び歩き出し、目的である衣服屋に向かった。
「さっきパンを買ったところの女将さんから聞いたんだけど、この先に街一番の衣服屋さんがあるんだって!
お財布にも優しくて、品揃えも豊富って言ってたよ」
『……あんだけ食いもん買ったやつが、今更財布の中身を気にしてらぁ……』
「だぁって、全部美味しそうだったんだもん! それに、あれだけ買ったからこその節約でしょ?!」
『……お、おぅ……』
『あげは様が聞いたという衣服屋……あの建物ですかね』
レイが指さす方に皆が視線を向け、その中でサザンカは目を輝かせた。
今回は一人で先に行くなんて事はしないものの、そのお店に早く行きたくてうずうずしている様子だ。
サザンカは足早になりながらも、皆と出来るだけ歩幅を合わせながら歩き、ようやく衣服屋にたどり着いた。
衣服屋の中に入った一行は、各々見たいものを見るためにその場で解散となった。
『あげは様のはわたくしがお選びします! さ、参りましょう!』
しばらくして各々の衣服が決まり、会計を済ませてお店の前で合流した。
「わー……みんな見事に和装……」
『これが一番かっこよかったんだ!』
『……僕も……動きやすいのを選んだ……』
『賢者様が和服……って言ってましたね。
動きやすい仕様になっているようです』
『あげは様のはデザイン重視にしました!
キュロットスカートタイプの和服です!
わたくしのも動きやすい和服です!』
「ふふっ、選んでくれてありがとう、オウカ!
すっごく動きやすくて可愛い!
皆もすっごく似合ってるよ!」
衣服屋で買い物をする際に、寝るときの衣服と普段着も数着購入し、さらに、新しい服に着替え終えた一行。
その中で、来ていた服はサザンカのアイテムボックスに仕舞われた。
皆自分の買い物に満足げな表情を浮かべ、その足で宿へと戻って行ったのだった。
***
一行が宿に着いた頃には外は日が落ち、月が現れ始めていた。
「……夜ごはん食べるにはお腹いっぱいだし……」
『……いろいろありすぎて、僕もぅ眠い……』
『たしかに……たくさん動きましたね』
『悪いが俺ももぅ、休ませてもらうぜ~』
「オミったら人型解くの早っ?!」
『ベッドの一部を占領してしまいましたわ……』
『僕はお風呂入って寝る……』
『では、私も……この辺の床に失礼します』
「え、レイさん、そんな床でいいの?!」
『はい、硬い方が合っているみたいで』
『あげは様、わたくしも……』
「うん、おやすみ~」
狼たちが人型を解いて就寝に入ったり、就寝に入る準備をする中、サザンカも部屋の明かりを弱めて就寝の準備に入った。
「(あ、オウカ、眠れるようにベッドのスペースを空けてくれてる。
……ありがとう。
さて……私もベッドに……)」
そうしてベッドに横になったサザンカ。
横になった途端にどっと疲れが出たのか、早々に眠気に襲われ、深い眠りへと落ちていったのだった。
どれくらいか時間が経ち、サザンカがふと目を覚ますと窓の外は月が明るく辺りを照らしていた。
サザンカが体を起こし、部屋の中を見渡すと、皆は安らかな表情で眠りについていた。
「(少し……外に出よう……。
でも……狼の皆は気配とか気付くよね……。
……そうだ! 気付かれないように、スキルを付与しよう!
私自身にスキル『影隠れ』を付与!
効果は、感知を持っている者や、五感が鋭い者達にも気付かれない隠密のプロとします!
よし、スキル『影隠れ』を発動!)」
サザンカは自身にスキルを付与し、なおかつそのスキルを使って部屋の外に出たのだった。




