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癒しの雨

 炭鉱内にいたガイラドラゴンを全て倒し終え、オミ()レイ()が他にも魔物がいないか念の為確認をした。


 炭鉱内のすべての場所の安全を確認し終えた一行は、倒したガイラドラゴンをアイテムボックスへとしまい、街に戻るべく炭鉱内から出た。


 その際、オミ()達狼は、人型に姿を変えたのだった。


 皆が街に戻ろうと道なりを歩いてると、街の方から来た青年と思われる垂れた犬耳を持った一人の亜人とすれ違った。

 その亜人の顔や腕、足には痛々しいほどの包帯が巻かれていた。


「……今のは……」


『……すごい包帯……何か気になるの?』


「……そのケガが気になるな……って……」


『やめとけ。

ヘタに首を突っ込んでもいい事ねぇぞ』


『もぅ、行ってしまわれましたわ……』


『またかよ!

あいつ、もう、そろそろ首輪必須なんじゃね?!』


 オミ()はヘタに関りを持つ前にサザンカ(あげは)を制止しようと言葉を掛けたが、その言葉もむなしく、サザンカ(あげは)はすでに包帯だらけの亜人のもとへと駆けて行ったのだった。


「あの! すみません!」


『……はい』


「そのケガ……もしよかったら、治させてください」


『……お代とか……取るんですか?』


「いえ! そういうのはいりません!」


『……では……お願いします……』


 亜人の青年は怪訝な顔をしながら、ぎこちなく頷いた。


「いきますよ! スキル発動、『癒しの力』……」


 サザンカ(あげは)がスキルを発動させると、包帯だらけの青年が光に包まれ、彼の傷がみるみる治っていった。


『……ありがとう……ございます』


「いえ、傷が多いのが気になっただけなので」


 サザンカ(あげは)と青年が話していると、オミ()達が近づいてきた。


『用は済んだか? そろそろいくぞー』


「うん!


……では!」


 サザンカ(あげは)オミ()の言葉に、彼らのもとに戻ろうとした刹那、亜人の青年に腕を掴まれた。


『あの……。

都合のいいことを承知でお願いがあります……。

僕の街……ルーベルより小さいけど、この先にあるんです……。

その街にいる仲間達にもその力、使って頂けないでしょうか……』


「え……」


『おい、あげは、行くのか? その街』


 青年の話を遠耳に聞いていたオミ()達がサザンカ(あげは)に近寄り、話に入ってきた。


「うん……。

この子みたいにケガしてる人達がいっぱいいるなら、放っておけないし……」


『……どんだけお人好しなんだよ……』


『それがあげは様なのだから、致し方ありませんね』


『……レイ()の言う通りだね……』


 皆は、サザンカ(あげは)の言葉にあきれながらも、仕方ないと微笑みを浮かべた。


 サザンカ(あげは)は皆に満面の笑みを見せ、青年に道案内をお願いした。


 その道案内で、一行は青年の住んでいる街を目指したのだった。


 青年の道案内でしばらく道なりを歩いていると、ルーベルの街からそう遠くない場所に家がちらほら見え始めた。


 サザンカ(あげは)達がそのまま歩みを進め、街の中に入ると、先ほどの青年と同じように包帯を巻いた人で街は溢れていた。


 それだけではなく、街の建物は所々崩壊しており、活気がなく寂れた様子だ。


「……ケガをした人たちが……いっぱい……。

それに、ほとんどの建物が……壊れてる……」


『……先の戦いで皆、傷を負ったのです……。

建物は……パーソン族が……』


「……先の戦い?」


『……数日前、魔族と亜人が手を組んで、山を越えた所にある平原でパーソン族と戦かったんです……』


「……。

(あの時の……)」


 オミ()サザンカ(あげは)に視線を落としたが、すぐに青年に向けた。


『戦いの理由は?』


『……パーソン族が無理やり魔族領を乗っ取ろうとしたのです……。

この街を奥に抜けた所に魔族領があるのですが、そこは資源が豊富なのです。


最初はパーソン族にも分け合うなど、良好な関係だったのですが、近年、パーソン族が何かとケチをつけたり、資源の分け合いに欲を出したり……。

あげく、魔族や亜人をのけ者にして……』


『……変ですね……』


『……何か……疑問に思う事が?』


「(……レイ()さん?)」


『……旅の最中に聞いたのですが、その戦いは女神……サザンカ様のせいだと伺いましたが……』


『……あの時は……皆、余裕がなく、サザンカ様のせいにしました……。

ですが、時間が経つにつれて気持ちが落ち着き、考える余裕が出来ると、皆……反省と後悔の念に(さいな)まれたのです。


サザンカ様は戦いの最中(さなか)、身を守れるスキルを付与してくださりました……。

そのおかげで命拾いしたと、皆が思えるようになったのです……。


捕らわれて命の危険にさらされれば、抵抗してその場の者を(あや)めてしまってもおかしくないのですが、サザンカ様はそうはしなかった……。


逆に、女神様に危害を与える……という罰当たりな行いを制御した事になるので、この街にいる亜人や魔族は感謝しているのです……。


サザンカ様に会えるなら、お詫びしたいとも思っているのです……』


「……そっか……。

(悪い人達ばかりじゃなくて……よかった……)」


『……あげは様……いかがしますか?

傷を負っている者……そうとうに多い人数ですが……。

あげは様のエネルギーやお体に大きく負担がかかると思います……』


「……心配してくれてありがとう、オウカ(桜華)

考えはあるよ……。


レイ()さん、水魔法……この街の上空を覆えるくらい大きいのをお願いしてもいい?


エネルギーの補填(ほてん)は任せて……」


『……承知しました』


 サザンカ(あげは)の言葉に、レイ()は上空に向かって片手を伸ばし、水魔法を発動させた。


 そのレイ()の空いている手を取り、サザンカ(あげは)は以前、オウカ(桜華)に行ったようにエネルギーを流し始める。


「(……私のエネルギーを使ってレイ()さんを手助けして……)


……よし、これくらいかな……」


 レイ()サザンカ(あげは)、二人の力のおかげで上空には街を覆えるほどの大きな水の塊が出来た。


 サザンカ(あげは)はその水に向かって両手を伸ばし、スキル『癒しの力』を発動させた。


 すると、上空の水の塊が光を帯び輝きだした。


「……よし、癒しの力が含まれた水の完成……っと……。

(あとは、創造を使って……この水を小さな水……雨として、街に降らせる!!)」


 サザンカ(あげは)は、大きな水の塊を雨のように小さく降らせるイメージをして力を使った。

そのおかげで水ははじき、小さい水滴となって街全体に雨が降り、癒しの力として街の人達の傷を治していったのだった。


 さらに、建物を直すための再生の力を込めようとしたのだが、「自分の足で……」という、二番目の姉であるマツリカの言葉が脳裏をよぎり、その力は使わずに終わった。

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