買い取りと依頼
サザンカの話を聞き、さらに買い取りを依頼しようとしている手元の魔物を見たギルド内の冒険者達がその場を離れたのち、ギルドマスターと呼ばれた男性がため息を一つ吐いた。
「あー……まぁ、なんだ……嬢ちゃんが冒険者だってのは今ので証明できた訳だが……。
折り入って相談があるんだが……いいか?」
「いいですよ!
その前に、買い取りお願いします!」
「あー、そうだったな。
ジーク、買い取り頼む」
サザンカのアイテムボックスから魔物を取り出すのを手伝った男性の名は、どうやらジークと言うらしい。
「改めてよろしくな」
「よろしくお願いします、ジークさん」
サザンカとジークが軽く挨拶を交わしたのち、ジークは再び、サザンカと一緒にアイテムボックスからファークバイソンを取り出すのを手伝った。
すると、そこへギルドの正面の扉が開かれて、サザンカが街の入り口に残してきたオミ達が姿を現した。
『なんか……たくさんの冒険者っぽい奴らが血相を変えて向こうに走っていったぞ。
何があったんだ?』
『さぁ……なんでしょうか……あ! サ……あげは様~!!』
『まったく、先に走って行ってしまわないでください……』
『……置いて行かれて少し寂しかった……』
「あ、ごめんなさい……」
『んで? 買い取りの方は?』
「今、ジークさんに見てもらおうとしてるの」
「なぁ、嬢ちゃん……この大きさの魔物があと六体はいるんだよな……。
裏に直接持って来てくれねぇか……ここじゃ目立つし、収まりきらねぇ……」
「わかりました!」
『なら、今引っ張り出してるこいつは俺の風魔法で裏に運んでやるよ』
「あぁ、助かる」
ジークの言葉にギルドマスターや、サザンカ達一行は魔法を使ってファークバイソンを持ち運び、買い取りカウンターの裏へと向かった。
ジークに案内された場所は表よりもさらに広く、ファークバイソンのような大型の魔物を数体は置けそうな広さだった。
「さて、ここならいいだろう」
『……あげは様、手伝うよ……』
「ありがとう、ヒスイ!」
開けた場所にサザンカやヒスイ、オウカ達が魔物をアイテムボックスから取り出し、ジークに買い取りを改めて依頼した。
取り出されたすべての魔物を見るや否や、ジークやギルドマスターは驚愕の表情を浮かべた。
「こ……こんな状態のいいファークバイソンは初めて見たぞ……」
「あぁ……俺も長年、魔物の買い取りと解体をしているが、初めてだ……」
「? そんなにいい状態なんですか?」
「なんだ嬢ちゃん、知らないで買い取り依頼したのか?
通常、この魔物は物理に弱いが、弱いと言っても打撃を相当あてないと仕留められないんだよ。
そうなれば、体中殴打のあとで状態が良くない。
それに、魔法で仕留めようものなら、火力を強めに与えないといけない……どのみち状態が良くないんだよ……。
肉も硬くなって、美味しい部分が少ないんだ」
「だが、嬢ちゃんが持ってきたこいつは、通常に比べてすごく状態がいいんだ」
「私、やっぱりすごいのでは?!
ちなみに、買い取りは全部でいくらですか?」
「これだと……350万ベリルで……金貨350枚分だな」
『350万?! なんでそんなに値が付くんだ?!』
『高値だと聞いていましたが……』
「貴族や名のある大商会の間ではこいつの肉はうまいと評判だからな。
それなりに買い手がいて需要があるのに、供給が追い付かない……それで、高級品として高値で取引されるんだ。
んで、状態がいい事を踏まえて、一体50万ベリルの価値がある。
それが七体もいるんだ。
それ位の値がついてもおかしくないぞ」
「ちなみに、状態が悪い通常なら金貨5枚の値がつく」
『……それが10倍の値がつくなんて……すごい……』
『……ヒスイの言う通り、すごいわ……。
一気にお金持ちさんです……』
買い取り屋のジークとギルドマスターの説明に、サザンカ以外は目を丸くしてしている。
「それじゃ、解体も兼ねて買い取りするが……金を準備するのに少し時間をくれないか。
それと、肉はどうする?」
『少し持っていきたいから取り置き頼む!』
「おう! 任せな!」
「んじゃ、買い取りの話もまとまったところで、さっき言いかけた相談……いいか?」
「あ、そうでした!」
「俺の部屋に案内する……付いてきてくれ」
ギルドマスターの言葉にサザンカは意気揚々とした様子で彼に付いていき、オミ達は怪訝な表情を浮かべながらサザンカとギルドマスターの後を付いていった。
ギルドマスターに付いていき、奥の部屋に通された一行は、案内されるがままソファに腰かけた。
「え~……まずは自己紹介だな。
改めて、俺はこのルーベルの街のギルドマスター、ライナーだ。
よろしく頼む」
「私はあげはです! よろしくお願いします! こちらは私の旅の仲間達です!」
サザンカの言葉にギルドマスターのライナーに軽く会釈する面々。
皆は軽く名乗り、簡易に自己紹介が終わったところでライナーがさっそく本題に入った。
「街の南西に炭鉱があるんだが、そこに魔物が住み着いてしまってな……。
採掘が出来ないからどうにかしてほしいとギルドに依頼が持ち込まれたんだ。
住み着いてる奴はガイラドラゴンって言って魔法攻撃も物理攻撃も効かないやつだ。
あのファークバイソンをほぼ無傷で倒した嬢ちゃんに頼みたい!
この通りだ!」
ライナーに勢いよく頭を下げられたサザンカは、自信満々の笑みで二つ返事をした。
「そうと決まれば、さっそく炭鉱に行ってきます!!」
『って、また俺たちを置き去りか?!』
勢いよくソファから立ち上がり、意気込みを入れたサザンカは、そのままの勢いで部屋から飛び出していったのだった。




