倒しました!
山を抜け、ルーベルの街に着いた一行。
街の入り口には大勢の人の列が成し、列の先に二人の門番が立っていた。
どうやら、街に入る者達の身分確認を行っているようだ。
サザンカ達も街に入る為の列に並び、各々ギルドカードを門番に見せ、何事もなく街に入ることが出来たのだった。
「わぁ~~! おっき~~い! ひっろ~~い!」
『ふふっ……あげは様ったら、そんなにはしゃいで』
『……あげは様は上からしか見ていないから……』
『ったく、子どもか!』
『……こほん、あげは様、はしゃぐのはよいですが……目的を忘れてはいませんね?』
「うん、大丈夫だよ!
まずは、ギルドに行って魔物を売るんでしょ?」
『上出来です。
では……この星で使われている、世界共通の通貨は覚えていますか?』
「レイさんがここへ来るまでの間に説明してくれた内容だね!」
この星で使われている貨幣を、サザンカは一つ一つ思い出しながらレイに説明した。
通貨単位はベリル、最少が10ベリルの銅貨1枚。
それが100枚あれば1000ベリルで銀貨1枚になり、銀貨10枚で1万ベリルで金貨1枚になるのだ。
『お見事です。
よくできましたね』
「えっへへ~」
『……マジで子どもだな……』
「それじゃ、ギルドにレッツゴー!!」
『あ、おい、走るな!……ったく……。
なんで女神なのに、あんなに落ち着きがないんだ?!』
サザンカは、皆をその場に残して、一人颯爽と街の奥へと走って行ったのだった。
街中を走っていたサザンカは、走る速度を落とし、街の人に道を聞きながら一人ギルドに着いた。
「ここが……冒険者ギルド……おっきい……」
目の前に立ちはだかる建物の大きさに圧倒されつつも、意を決し、緊張の面持ちでギルドの扉を開け、中へ入った。
「わ……中も広い……。
えっと……まずは魔物を買い取ってもらわなきゃ……」
サザンカが魔物を買い取ってくれるカウンターを探していると、男女数人の冒険者達が近づき、声を掛けてきた。
「お~?
こんな所にこんなカワイ子ちゃん一人か?」
「な、なんですか、あなた方……」
「俺たちは優しい優しい冒険者だ。
悪い事は言わねぇ、ここは嬢ちゃんのような子が来る場所じゃねぇと思うが……」
「これでも一応、冒険者なんですよ!」
「え~、嬢ちゃんみたいな子が……冒険者?
あっはははは! 冗談はよせやい。
そんな風には見えねぇや」
「そ……そんな……」
「なんだ? 何の騒ぎだ?」
サザンカが数人の冒険者達に絡まれていると、建物の奥の部屋からガタイの良い中年男性が現れ、会話に入ってきた。
「げ……ギルドマスター……」
「なんだ、お前ら、また若い冒険者をからかって、カツアゲしようと考えてるんじゃねぇだろうな」
「ち……違いますよ……。
このか弱い嬢ちゃんがこんな場所に何の用かと思って……」
「だから、冒険者ですって!
ちゃんと魔物も倒しましたし、買い取ってもらおうと来たんです!」
「ほぉ?
魔物の買い取りか、なら、向こうのカウンターだぜ。
こいつらは気にすんな、あとは俺に任せろ」
「ありがとうございます! 失礼します!」
サザンカはギルドマスターと呼ばれた男性に勢いよく頭を下げ、この場を任せる事にし、教えてもらった買い取りのカウンターに駆け足で向かった。
「こんにちはー! 買い取りお願いします!」
買い取りのカウンターに着いたサザンカは、カウンターの奥で作業をしている男性に向かって声を上げた。
「よぉ、買い取りだな? 何の魔物だ?」
サザンカに声を掛けられた男性は、作業していた手を止め、カウンターの奥から顔を出した。
「え~……っとですね~……」
サザンカが、アイテムボックスの中から魔物を取り出そうと準備していると、ギルドの正面扉が勢いよく開かれ、一人の男性が息を切らしながら飛び込んできた。
「皆、聞いたか!
この街の南側にある山に、縄張りを張ってたファークバイソンが、一掃されたって話!」
「何?! 南側のファークバイソンだと?!
何かの間違いじゃないのか?! 討伐ランクAで、ここいらの冒険者じゃ討伐は厳しいだろ!
それに数もそれなりにいただろ!?」
「それが、本当に本当なんだ!!
俺のダチが山の向こうから依頼を終えて帰還したんだが、行くときはファークバイソンの群れに命からがら逃げきったのに、帰りは群れどころか気配すら消えていたんだそうだ。
しかも、妙な事に、山が割れているとも言っていたぞ……」
「ファークバイソンの群れがいなくなっただけでなく、山も割れてる……。
新たな魔物か?」
「それが本当なら、えらい脅威となるかも……」
「そのやばいやつ……まだこの辺にいるのか?」
「それほどの魔物がいたとしたら、俺たちで倒せるかどうか……」
「あ! あったーー!
買い取って欲しい魔物はこれです!」
背後で繰り広げられる会話をよそに、サザンカは買い取ってもらう魔物の一部をアイテムボックスから引っ張り出した。
「あ、すみません、この魔物、結構大きいので取り出すの手伝ってもらってもいいですか?」
「お、おぅ……」
サザンカに手伝うようにお願いされた、買い取りカウンターの向こう側にいた男性がカウンターを一部開け、こちら側にきてサザンカを手伝った。
「いったい、どんな魔物……って……これ、ファークバイソンじゃねぇか!」
「「「「な、なにーーー?!」」」」
サザンカを手伝った男性の言葉に、一気に視線を集めたサザンカ。
サザンカは突然の出来事に、状況を把握できてない様子でキョトンと首をかしげた。
「嬢ちゃん……その魔物……どうしたんだ?」
サザンカが首をかしげる中、恐る恐る声を掛けてきたのはギルドマスターと呼ばれた男性だった。
「どうって……倒しました!」
「たお……え、倒した?」
「はい、倒しました! 全部で~……七匹います!」
「……南側の山に巣くっていた数……七匹と報告を受けている……。
そして嬢ちゃんが倒したと言っている数が七匹……はは……まさかな……。
ちなみに嬢ちゃん、どの方角から来たんだ?」
「方角? えっと……ヴィリオの街から来ました!」
「ヴィリオってたしか南……てことは……」
「は、はは……」
ギルド内にいた冒険者であろう者達は皆、顔を引きつらせ、一部は顔を見合わせ、そそくさと逃げるようにギルド内から去って行った。
中には悲鳴を上げながら出ていく者もいたのだった。




