やっとできた!
サザンカ達が平原で修業を始めてから数時間後。
時はすでに日も落ちた夕刻。
休憩をはさみながらとはいえ、さすがに体力にも限界がある。
お腹も空き始めたことも相まって、修行は一時中断となった。
『さーて、そろそろ時間も遅いし、この辺で切り上げるかー』
「つ……疲れた……」
『あげは様、お疲れさまでした!
お水どうぞ!』
「ありがとう、オウカ……。
……ふー、生き返るー」
『……しっかし……上達しねぇな、エネルギーの使い方……。
……どうすんだ……この土地……』
オミが向けた視線の先には、いくつもの地割れの跡や、大穴が開いていた。
それは、サザンカがエネルギーを剣に流し込んで切りこむという修行や、体中にエネルギーをまとって武術を行うという修行で出来たもの達だった。
サザンカのエネルギーの扱い方がままならないため、その場はひどく荒れていた。
『……あげは様は創造とか、スキルの作成、付与は上手なのに、エネルギー自体を扱うことが苦手なんだね……』
『ヒスイ、惜しいぞ。
あげはは、スキルの付与もヘタクソだ』
「うぅ……返す言葉もございません……」
『……あげは様……。
この土地……オウカに直してもらいませんか?
それと……あげは様のエネルギーも少々使用して……。
そうすれば、エネルギーの使い方をマスターできるかもしれません……』
「レイさん、どういう事?」
荒れた土地をどうしようか考えるサザンカ達にレイは身振り手振りで考えを提案した。
レイが考えた内容とは、オウカの土魔法を使って荒れた土地を修復するものだが、オウカ一人のエネルギーだけではこの荒れた土地一帯を修復するのは難しい。
そこで、スキルを発動させるオウカの手の上にサザンカが》の手を重ね、オウカのエネルギー使用の補助をするというものだ。
『この方法なら、あげは様のエネルギーコントロールの練習になるかと思います』
「……なるほど……。
……うん、やってみる!!」
『あげは様、コツは、料理をするみたいに……ですよ。
あげは様は料理がお上手です。
野宿中でも美味しく作ってくださります。
食材を扱う時、丁寧に扱いますし、目分量も出来ています。
それを活かすのです。
お料理の要領で、オウカにエネルギーを流し込んでみてください』
『……オウカを食材に例える……はは……』
『オミ様、渇き笑いやめてください……。
……あげは様……信じております……』
「うん! 任せて!
それじゃ、いくよ……」
オウカが地面に向かって手を伸ばし、スキル『土魔法』を発動させた。
サザンカも、オウカの手の甲の上に自身の手を重ね、レイが言っていたように、慎重にエネルギーを流し込むイメージをした。
「……お料理のように丁寧に……丁寧に……」
そうして二人が力を発動しているおかげで、荒れていた地面が徐々に平らな草原へと戻り始めていった。
しばらくして、荒れていたすべての土地をもとに戻し終えたサザンカとオウカ。
二人はもとに戻った光景に歓喜の声をあげながら抱きしめ合った。
「やったーー!!
やっとエネルギーのコントロールできたー!!
ありがとう、レイさん!!
お疲れ、オウカ!!!」
『やりましたね、あげは様!! お見事です!!』
『やっぱり、レイの教え方……上手だね』
『そんな事ないよ、ヒスイ。
あげは様が頑張った結果だ』
『やれやれだな……。
そんじゃ、ちょっくら狩り行ってくるなー。
ヒスイ達も行こうぜ』
オミの声掛けで頷いた四人はそそくさと狩りに出かけていき、その場に一人残されたサザンカ。
「なんで皆して颯爽と行ってしまうのーー?!」
彼らの本能的なものは狼だ。
それらが働いたため、狩りだと聞いて体が反射的に動き、颯爽とその場を去った。
その本能的なものを知らないサザンカは、愚痴をこぼしながらエネルギー修行を一人でまた始めたのだった。
「……これじゃぁ、スキルを与えすぎて神界を追放されましたじゃなくて、スキルを与えすぎて一人草原に取り残されました……だよ」
一人での修行を早々に終え、野営の準備をしていたサザンカのもとに狩りに出かけていたオミ達が帰ってきた。
『ただいま戻りましたーー!!』
「おかえりー……ってなに、それ?」
『なにって……魔物だけど?』
「魔物だけど? じゃないよ! それ食べるの?!」
オミ達が獲物として狩ってきたのは、牛のかたちをした魔物だった。
それを見たサザンカは信じられないものを見るように驚愕したのだった。
『あげは様、これは魔物ですが、もともとは牛が魔物へと変異したのですよ。
エネルギーを持ち、狂暴化した牛……という分類なので、牛肉として食べられます』
「説明ありがとう……レイさん……。
そっか……そうなんだ……」
さらにレイは、豚型や鳥型の魔物がいる事を説明し、通常の家畜より繁殖が早く食用として冒険者が狩りに出ている事などを説明した。
また、食用だけではなく、素材として高く売れる魔物もいると説明を受けた。
ちなみに今回狩ってきた牛型の魔物の討伐ランクはBで、食用にもなるが、角が大きいため、素材として高く売れると説明を加えた。
「魔物とかはやっぱり下界での生活の長いオミ達が詳しいから、その辺は任せるね!」
『おう!
よし! 解体するぜ!』
そう意気込んだオミは、手際よく刀を使って牛型の魔物を解体し始めた。
解体していった肉は必要分だけ手に取り、残りの肉や素材となる角はサザンカの収納庫へとしまわれた。
『……あげは様のそれ……収納庫……とおっしゃりましたが……俗に言う、アイテムボックス……ですよね。
便利ですよね~』
「下界ではアイテムボックスって呼んでるんだね。
いろんなものをいくらでも出し入れ出来るよ」
『じゃぁ……いっぱい狩りをして素材集めて、売り飛ばして金儲けしようぜ!』
『……オミ……何その発想……』
『なんだよ、ヒスイ、その目は。
金は大事だぞ!
こんな初心者の冒険者みたいな服から早く脱したいんだ、俺は!』
「他のを造る?」
『違う!!
街で売ってる、亜人がつくった特製の服がいいんだ!
そっちの方がデザインがかっこいいんだよ!!』
「あ……はい……うん、なるほど……デザイン、ね……」
『そうしましたら、あげは様もお着替えしなければですね!!
狩り、はかどります!!』
「(……人型だから忘れがちだけど……ここにいるの私以外、全員狼だった……。
狩り……大好きなんだなぁ……)」
狩りだと聞いて体をウズウズさせているサザンカ以外の面々。
そんな彼らを前にサザンカは一人、遠くを見るような眼をしたのだった。




