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旅は道連れ

 サザンカ(あげは)がヴィリオの街にある自分の像を壊してから数時間後。

ようやくすべての旅の支度を整え終わり、いよいよ街を出る事にした。


「それじゃ、ノーラちゃん、いろいろありがとう!

ギルドへの案内とか、当分の食事とか、その他のことも!」


「サ……いえ、あげは様……。

私にはこんな事しか……」


「ううん、十分だよ。

本当にありがとう。

それじゃ、お世話になりました!!」


「あげは様……ご武運を……」


 サザンカ(あげは)は、ノーラとの挨拶もほどほどにして、皆とヴィリオの街を出た。


「この街にも冒険者ギルドがあって助かったよ」


『身分も証明されるみたいですし、よかったですね』


「うん、皆の分も登録できてよかった。

武器もノーラちゃんに用意してもらったし!!」


『それにしても驚きました!

あのノーラさん、この街でそれなりに顔が効くみたいで、権力……というものでしょうか。

当面の金銭や食事などいろいろ力になってくださりましたね!!』


『なんか、医療の分野で功績をあげたし、今でも実力があるから……って言ってたな。

あげはのスキル付与がこんな風に役立ってるとはな』


 そう、ノーラはこの街でそれなりに権力と財力を持ち合わせており、一部秘密裏にサザンカ(あげは)を支援する事が出来た。


 そしてそのノーラにヴィリオの街にもある、冒険者として登録できるギルドに案内してもらい、サザンカ(あげは)達は各々登録を済ませる事が出来たのだ。


 サザンカ(あげは)は女神という事を知られてはいけないため、魔導士として登録をし、オミ()達狼は、スキル『人狼』を使って人の形を成し、亜人として登録をした。


『ランクや登録期間などがありますから、次の街を目指しながら戦闘出来るように体制を整える必要がありますね』


「うん、レイ()さんの言う通りだね。

スキルは任せて!!」


『……任せるのはいいが……スキルばかりにも頼るのもなぁ……。

もっと人型にも慣れないといけないし、武器を使っての戦闘も身につけないとな』


「なるように、なるなる!」


『……呑気なやつだな……。

本当に女神かよ……』


『……そういえば……どうしてレイ()にはさん付けなの?』


「あ……いやー……なんか……レイ()さん見てると、二番目の姉様を思い出して……それで……」


『……あげは様のお姉様……マツリカ様?』


「うん……すごく知的で、厳しくも優しくて……大人しくて……レイ()さんに雰囲気が似てるの……」


 狼達はスキルの使い方に慣れて来たのか、人の姿が安定し始めている。

最初の頃は耳が出ていたり、尻尾が出ていたりしたが、今は完全に人の姿だ。


 銀色のオミ()は、銀髪の髪に八重歯が特徴的な青年に、紅い色のオウカ(桜華)は紅い髪にスタイル抜群の女性に、翡翠色のヒスイ(翡翠)は翡翠色の髪にサザンカより背の低い少年の姿に、そして黒色のレイ()は、黒髪の成人男性の容姿に安定している。


 性格もそれぞれ違っており、オミ()は口が少々悪くも活発で、オウカ(桜華)サザンカ(あげは)に少し過保護でそれでいて活発、ヒスイ(翡翠)は姉とは反対に口数が少なく、レイ()も基本的に口数が少なく物静かだ。


『あげは様、これからどちらに向かわれるのですか?』


「うーん……とりあえず、街を渡り歩きながら……オウト(桜都)に向かおうかな」


オウト(桜都)か……ここからだとだいぶかかるが……まぁ、行ってみるか』


「(いよいよ旅が始まる……。

今は神界に戻れないし、これから何が起こるかわからないけど……私に出来る事を精一杯やるんだ……)」


 サザンカ(あげは)は意気込みながらも、空を見上げ、一人、姉達を思い出しながら足を進めるのだった。



***


 一方、神界。


 サザンカ(あげは)が追放されて直後の事。


「アマノん、さすがに追放はやり過ぎじゃないの?!」


「……世間を知ってほしいとの思いだ……。

キレイ事だけでは済まない時もある……。


戦をやめさせたい……その気持ちはわからんでもないが、下界の者が勝手に始めた事を我々が関与するのは見当違いというものだろう」


「だからって……」


「……可愛い子には旅をさせよ……という事ですわね」


「……うむ……」


「だけど……もう、鏡でもサザンカちゃんの足取り掴めなくなったわよ……。

神界と下界の時の進み方が違うのもあると思うけど……」


「人口増加に文化の発展……いろいろな要因が重なって、サザンカを見つけるのは困難ですわ」


『……あっし……思うのですが、サザンカ嬢ちゃんはそれなりに行動力があるお方でやす……。

もしかしたら、下界で何か起きた時、その場所にいるのではないでやすか?』


『……たしかに……サザンカ様は巻き込まれたり、自分から事を起こしたりしかねません。

それが吉ともなりえるのでは……』


「……うむ……では今後は下界の様子を見つつ、大きな事柄が起こった所にはサザンカがいるものだと推測したうえで捜す……という事でよいか」


「「異議なし」」


『『同じく』』


「……すみません、私……しばらく、自分の天陸殿(あまくぬがでん)にこもります」


「……マツリカちゃん……そうとう今回の事がこたえたのね……」


「神界からどこまで調べられるかわからぬが、下界での異変を我々で調べておく……。

マツリカはしばし休息をとるとよい……」


「はい……では……」


 サザンカ(あげは)のいなくなった神界はいつもの賑やかさはなく、少しばかり物寂しさを覚えるそんな神界へと変わっていた。


 マツリカはしばらく自分の住居にこもり、ベロニカとアマノミコト、ザクロ(雀鷺)やフィリーは噴水広場、またはアマノミコトの蓬泉殿(ほうせんでん)にある水辺から下界を覗いては、サザンカを捜す日課が始まったのだった。

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