像の破壊
狼達に名づけを決めたサザンカは、一匹一匹に視線を向けた。
「それじゃぁ、名づけを始めるよ!!」
『あ、サザンカ様、私は女の子なので、女の子にちなんだ名前をお願いします!』
「わかった!!
なら、まずは貴方からね!!
ん~……紅い毛色だから、桜華……うんオウカに決めた!!」
『良い名です!!
ありがとうございます!!』
『よかったね、姉さん』
「姉さん?
翡翠色の子とオウカって姉弟なの?」
『双子です!!
最初は私も翡翠色の毛色だったのですが、なぜか変色しました!!』
「そうなんだ。
えっと……そしたら……弟くんの方は……翡翠色だから、ヒスイでどう?
安直すぎたかな……」
『……この毛色……気に入っているから……毛色にちなんだ名前なら、嬉しい……』
「よかった!
次は……黒い毛色の……う~ん……。
なんか……大人しそうで、知的な感じで……毛並みも水のようにキレイだから、……レイ!」
『レイ……ですか……嬉しいです。
ありがとうございます』
「へへっ……。
あとは、銀の毛並みの……オミ……オミにしよう!!」
『オミ……か。
ちなみになんでだ?』
「なんとなく?」
『疑問形かよ……。
まぁ、いいが……ありがとな』
「さて、名前も決まったし、改めてよろしくね!!」
『あの、サザンカ様もお名前を変えるのですよね。
僭越ながら、わたくしがつけてもいいですか?』
「オウカが? いいよ! お願い!!」
『では……。
……蝶のように儚くも優しい印象なので……あげは……あげは様……というのはどうでしょうか』
「あげは……うん、良い名!! ありがとう、オウカ!!
では、私の名を改め、下界ではあげはと呼んでね!!」
『あ、お待ちください、サ……あげは様!!
このお姿……どうにか出来ないでしょうか……。
あげは様のように人型になりたいです』
「え……オウカ……どうして?」
『人型の方がいろいろ融通が利くかと思いまして……。
それに、あげは様の目線で一緒に旅をしたいのです』
「皆は?」
『……僕は別になんでも……こだわりないよ……』
『俺も異論はねぇな』
『右に同じく。
おそらく、狼四匹と歩くよりは目立たないかと思われます』
「わかった!!
なら、どっちも選べるようにスキル付与するね!!
貴方達にスキル、『人狼』を付与!!
効果は、狼の姿、人の姿、好きなタイミングでどちらにも変われるものとします!!
ちなみに、着ている衣服は狼の姿の時は毛並みに、人型の時は身にまとっている形で現れる効果付き!!」
『へぇ~どっちにも変化か……いいな、それ!!』
『ありがとうございます!! あげは様!!』
「私にもスキルを付与しなきゃ……。
女神だとバレないように……種族はパーソン族かな」
『お待ちください、あげは様。
あげは様の場合、パーソン族より魔族の方が……。
魔族で魔導士……という方が世間体的によいかもしれません』
「なるほど……ありがとう!」
サザンカはそう言うと、さっそく狼達に手を伸ばし、スキル付与を施した。
彼らを光がまとい、スキル付与が終わった後、サザンカは自身に手を当て、スキル付与を施す。
「私自身にスキル『復元』を付与!
効果は、私が今まで使っていたスキルや、壊れたものを復元させるものとします!!
これで、今まで通り創造・再生が出来るし、癒しの力もあるから、治療が出来る!!
それと、『生体変化』を付与!!
効果は、女神と魔族のどちらの姿にも変化出来るものとします。
これで姿を必要な時に変えられるね!
よし、これで少しは体裁が整ったかな!!」
『サ……あげは様、これからどちらに?』
「あ、行きたい場所があるんだ。
人のいる街なの」
『なら、人型だな』
「それなら、衣服造らなきゃ!!」
サザンカがそう言うと、創造を使ってオウカ達の衣服を造り彼女達に手渡した。
『……なんか……デザインが簡素だな……』
「う……もっと服のデザインを見とくんだった……」
皆の準備が整った所でサザンカを筆頭にヴィリオの街に向かって歩き出す。
皆が森を抜け、ヴィリオの街に着くと、ノーラが街の出入り口でサザンカの帰りを待っていた。
「ノーラちゃん!! ただいま!!」
「えっと……もしかして、サザンカ様?!
黒髪のそのお姿は……」
「えへへ、スキルなの。
これならサザンカだとバレないかな~と思って……。
ただ、瞳の色は変わらなかったけど……」
「とてもよくお似合いです。
そのお姿なら気付かれる事はないと思われます。
あの……後ろの方々は……」
「一緒に旅をしてくれる仲間なの!!」
「そうでしたか。
これから神殿に行くのですよね。
すみません、こんな所で立ち話を……案内いたします」
サザンカ達はノーラに案内され、ヴィリオの街の中心地に位置する神殿へと足を運んだ。
『キレイな神殿ですね~』
「はい、この街はサザンカ様のおかげで発展した街ですから。
そのサザンカ様を祀る場所なので、キレイにしております
さ、こちらです」
「神殿の責任者にはこの事……」
「伝えております」
「ありがとう。
じゃぁ……いくよ」
サザンカが像を壊そうと手を伸ばすと、神殿の奥から、一人の中年男性が姿を現した。
「お待ちください……この像を壊す前に……訳を、お聞かせください……
私はこの神殿の責任者です。
この街が村だった頃の村長の子孫です……」
「……この像に……いろいろスキルを付与したの……。
私の代わりにスキルを付与してくれるように……。
この像は私そのもの……これ以上、むやみやたらにスキルを付与してはいけない……。
私を信仰してくれる、この街の人々に何が起きるかわからないから……。
だから、この像を壊すの」
「我々の身を……案じてくださるのですか……。
その為にこの街にもとどまらず、像を壊すと言うのですか……。
下界で悲痛な思いをしてもなお……我々を……」
「うん……。
だって……これでも、女神だから。
万物を見守るって決めたから。
……生死に関われないと言う厳しい条件はあるけど……助かる命は助けたいし、守れるなら守りたい」
「……あの頃から……変わっていないのですね……」
「……本当に……お優しい方だ……。
わかりました、そういう事でしたら……。
私も、覚悟を決めます」
「ありがとう……。
じゃぁ……今度こそ……。
創造を使って……。
スキルも……取り消せなくても……『無効化』を付与!!
この像はこれより、なんの権限もないものとします!!
……像の圧縮、破壊!!」
サザンカは、像に向かって手を伸ばし、像を包むように結界魔法を施した。
さらに、スキルを付与した後、結界の中で創造を駆使し、像を圧縮した。
その力で像は粉々に砕け、その場に砂の山となった。




