助けてくれたから
ノーラの家で幾分か回復をしたサザンカは、身支度を軽く整えてとある場所に来ていた。
そこは先程までサザンカが倒れていた森の中だった。
「ノーラちゃんの話では、森の中の川は一本しかないと言っていた。
なら、その川を辿れば、あの滝にまた行けるかも」
サザンカはノーラに教えてもらった道順を頼りに、森の中を歩き、川を見つけては川上を目指して歩いていた。
「あった! あれだ!」
川の流れに沿って歩いていたサザンカは、滝を見つけ、滝の近くにそびえ立つ桜の木の根本に駆け足で近づいた。
サザンカが狼達を埋めた桜の木だ。
「この桜の木……さっきはちゃんと見る余裕なかったけど、気になって来てみたの……。
やっぱり……光ってる……。
ここに桜の木を埋めた記憶はないけど……きっと、オウトにある桜のエネルギーが地中を通ってこの場所にも桜の木を生やしたんだね。
狼さん達……私、決めたよ。
世界の異変を調べるために旅をする。
その挨拶……ってところかな」
サザンカは狼を埋めた桜の木に手を添えた。
すると、桜の木が光り輝き、声が聞こえ始めた。
『でしたら、その旅、ご一緒させてください』
「えっ……声?! どこから?! おばけ?!」
『おばけって……お前も似たようなもんだろ』
「また声!!
この声って……狼さん?!」
サザンカの呼び声に応えるかのように桜の木が一層光を増した。
その光はサザンカの背後に集まり、四つの大きな塊を形成し始めた。
桜の木の光や、形成していた光が収まり、現れたのはサザンカが埋めた四匹の狼だった。
「狼さん達……どうして……」
『……この桜の木が……私達の魂をこの世界に繋ぎとめたのです』
「紅い毛色の……」
『ですが……このまま……魂だけでは身動き取れません……』
「(今度は黒い毛色の……)
魂だけでは……あ!
それじゃぁ、私が追放されてからの初仕事!!
貴方達にスキル『生命の固定』を付与!!
効果は、受肉がなくても、エネルギーがなくなっても、生きられるものとします!!
まんまだけどね……」
『これなら、魂だけでも生きられます!!』
『……そうなると、お前もこのスキルいるんじゃねぇか?
お前こそ、エネルギー体だろ』
「私は……。
アマノ様の涙から生まれて……って、あれ?
たしかに……肉体がない……かも?
うーん……念のため私にも付与しとこう。」
サザンカが狼達に向かって手を伸ばし、さらに自分自身にも手を当て、力を発動させると、今までのように皆が光り輝いた。
サザンカのスキル付与が出来たと言う証だ。
「やった!! 付与出来た!!
力を没収されてそんなに時間が経ってないのに、なんだか久しぶりな感じ!!」
『お前……さっきから何言ってんだ?
スキルとか、追放とか……そういや、俺たちが眠るとき、この世界が……とか言ってたな。
お前、何者なんだ?』
「えっと……話せば長いけど……」
『聞きます!!』
「う、うん……それじゃぁ、ちょっと座って話そう」
サザンカの提案で桜の木の下に座る一人と四匹。
狼達はサザンカを間に挟む形で両側に二匹ずつ座った。
皆が座ったのを見て、サザンカは今までのことを静かに語り出し、狼達はその言葉に耳を傾けた。
「――と、いう事があって……」
『なんだそりゃぁ?!
たしかに話を聞く限り、不器用な所があるかもしれないが、戦いが起こったのはあいつらのせいであって、断じてお前のせいじゃない!!』
『そうですよ!!
サザンカ様は何も悪くありません!!』
『……僕も、そう思う……』
『ですが、サザンカ様を悪く思う輩がいるのも事実……。
それを承知の上で旅に出るのですよね』
「うん……。
さっきも言ったけど、こんな世界を造りたかったんじゃないから……」
『でしたら、やはり、おともします!!』
「……どうして……そこまで」
『……サザンカ様は……力が使えない中で……私達を庇って助けようとしてくださりました。
今まで出会った種族は、自分達の能力を誇示したり、あげく仲間ではないとわかると暴力に走る者もいました……。
そんな身も心も疲れていた所にサザンカ様に出逢ったのです。
私達の体は……残念でしたが……心は、救われたんです。
サザンカ様に……救われたのです。
ですから、一緒にいたいと願いました。
……この桜の木が……願いを聞き届けてくださったのかも……』
「……そっか……。
エネルギーは時として不思議に働く……か……。
ありがとう……狼さん達……。
なら……私と……一緒に戦ってくれませんか」
サザンカは立ち上がり、狼たちの前に立って向き合うと、手をそっと差し伸べた。
そのサザンカの手に、狼達は頷きながら手を添えた。
『そうなると……いろいろ準備をしないといけませんね……』
「うん……あ、そうだ!
旅の第一歩として、狼さん達に名前を付けてもいい?
四匹とも毛色が違うから見分けられるけど、皆を「狼さん」って呼ぶのはちょっと……」
『サザンカ様が……名づけを?!
ありがとうございます!!
ぜひ、お願いします!!』
サザンカの提案に皆はどこかしら恥じらいを見せているが、紅い毛色の狼だけはその場で飛び跳ね大いに喜んでいる様子だ。
名づけに抵抗がない様子を見て、サザンカも安堵の表情を浮かべたのだった。




