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まさかの…

ベロニカの言葉に頷き、眷族となった種族達に声が届くように雲や光を造ったマツリカ。


ベロニカは下界を写している鏡で雲や光が出来上がったのを見て、鏡に手をかざし、空間魔法を創造して鏡とマツリカが造った光を一時的に繋げた。


「これで声が届くはず…。


え~…、皆さ~ん、私の声は届いているかしら?」


『な、なんだ?!

空から声が聞こえたぞ?!』


『これは…賢者様が言っていた神々…という偉大なるお方の声では…。』


「混乱しているところ申し訳ないけど、早々に要件は伝えるわ。


私はマツリカ。

天と地を管理している者よ。

先程のはベロニカ。

火、水、風を(つかさど)るいわば自然の女神。


私達二人が、貴方達の生きづらい環境を少しでも良くしようと、眷族にしました。


種族、亜人は私、マツリカの眷族。

魔族はベロニカお姉様の眷族となっています。」


『眷族…ご加護というものか…。』


『ありがたい事だ…。』


「それぞれの種族に、私達が考えた能力が引き継がれる事になっているのよ。

詳細は直接脳内に伝えるわね。

それを子孫代々に語り継いでちょうだい。


私達からは以上よ。

それじゃ、ご武運を。」


マツリカやベロニカが眷族となった者達に声を届け終え、鏡と下界の空間魔法を解いた。


二人は、ベロニカの宣言通りに脳内に直接声を届けるイメージでそれぞれが魔法を駆使して眷族としての説明を行った。


「…ふう…。

とりあえずは、全員に伝え終わったわ。」


「そうですわね。

これであとは…争いごとが減ると良いのだけれど…。


でも…どうして急に争いごとが増えたのかしら…。」


「うーん…今はどんなに考えてもわからない事ばかりだわ。」


事を成し終えた二人は、それぞれの席に着き、一息入れる事にした。



皆が下界の様子を見守りつつ、今出来る事を行う中で、人々の争いというのは神々の心中をものともせずに、着々と火ぶたをきっていくのだった。



眷族としての言葉を伝え終えてから神界では一週間ほどが経った頃。


この日は噴水広場で会議をしていたのだが、アマノミコトだけが浮かない表情をしている。


「アマノ様…いまだに解決しないのですね?

神界と下界の時間の流れの問題。」


「うむ…我の空間魔法と時空魔法を用いているのでな…。

いろいろ魔法をいじっているのだが…さらにズレが生じたようだ…。」


「アマノ様も失敗するんですね…。

ちなみに、どれくらい進んだのですか?」


「……六十年くらいだろうか…。」


そう、あれからアマノミコトは自身が施した魔法を調べ、どうにか下界と神界の時の流れのズレを修正しようと試みていたのだが、その努力もむなしく、結果的に大幅にズレが生じていた。


「だから、この一週間で転生の泉の動きが活発だったのね。」


「六十年もあれば、人の生死は活発になる…。

でも、それだけじゃないですわ…。


最初は小さい事だったのに…今では争いごとが大きくなっていますわ。

まだ武力行使に至っていませんが…国同士…種族同士がにらみ合っています。


紛争…領土拡大…どうして争いごとが生まれたの…。

穏やかな感情だけを組み込んだはずなのに…。」


「マツリカちゃん…そんなに気を落とさないで…。

マツリカちゃんのせいではないわ。」


下界の様子の物々しさに、珍しく表に出るくらい落ち込んでいるマツリカを、ベロニカが(なぐさ)めている。


アマノミコトやザクロ(雀鷺)、フィリーが何と声を掛けていいかわからず、押し黙る沈黙の中でサザンカは席を立ちあがり、勢いよく変わっていく下界の様子を鏡と噴水をつなげて覗いた。


「(なんで急に争いごと増えたんだろう…。

私が付与したスキルも一部、争いごとに使われているし…。)」


サザンカのスキル付与の中には魔法系や知識系が施されている。

それらを駆使して、人々は争いごとをしていた。


だが、それは日に日に激しさを増す一方だ。

現に今、神々が目を離したすきに下界では大きな争いごとが始まろうとしていた。


その戦いは、種族間同士で場所はオウト(桜都)から離れた平原だ。


魔法攻撃に()けている魔族と戦略や裏工作に()けている亜人が手を組み、それに対して物理攻撃や知識、一部魔法攻撃に()けているパーソンの(いくさ)だった。。


「…あ…にらみ合っていただけなのに…(いくさ)…始まっちゃった…。

こっちの人達負けそう…。


そうだ!人々にスキル『防御特化』を付与!

効果は魔法による特殊攻撃をはじくものとします!」


『な、急に敵が強くなったぞ!!

どういう事だ!!

こっちの攻撃がはじかれて、仲間がやられた!!

回復しないとマズイぞ!!』


『なんだかわらんが、相手の攻撃が効かなくなった!

一気に攻め込むぞ!!』


「わわ?!

一方だけが強いと、やられて世界の均衡が崩れちゃう!!


ど、どうしよう!

えっと、こ、こっちの人達には『超回復』と『攻撃特化』を付与します!

効果は物理攻撃に特化して、どんなケガも治すものとします!


攻撃が強くて、超回復があれば大丈夫だよね…。」


「何を…やっているのだ…お(ぬし)は!!


そんなスキル付与のやり方があるか!!


見てみよ、下界を!!

ただでさえ、大きな(いくさ)が始まっておるのに、むやみやたらにスキルを付与するでない!」


サザンカが一人、噴水で下界を見ていたのだが、いつの間にかアマノミコトやマツリカ達が席を立ち、噴水に近づいてきていた。


「ですが、アマノ様!

この(いくさ)止めないと!


それに、一方がズタボロに負けて終わるなんて、そんなの嫌です!」


(いくさ)とは、いずれは一方がズタボロで負けるものなのだ…。

そんな甘い事を言っていられるものではない…。」


「…私が造った大地を…血で汚すなんて…許さない…。

地震を起こして止める…。」


そう言うやいなや、マツリカは噴水を通して下界に魔法を放ち、地震を起こした。


戦いは始まったばかりで、マツリカの対策により、死者は出ていないものの、負傷者の数は大規模となっていた。


「……マツリカちゃんの地震で(いくさ)は止まったようだけど…。

無残ね…。」


「……サザンカ…スキル付与の結果を…自分の目で確かめよ。

これより、サザンカのエネルギーや能力を没収し、下界へと強制追放する!」


「な、なんでですか!?


追放までしなくてもいいじゃないですか!!

地球にあるファンタジーの物語の神々は、スキルをバンバン与えているのに!

それで無双する人だっているのに!


私だけ追放って……ただ仕事をしただけなのに!!」


サザンカは良かれと思って己の仕事をしただけなのだが、最悪の事態を招いた事により、創造神のアマノミコトによって神界を追放されたのだった。

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