眷族(けんぞく)
会議室に皆が集まってから午前が過ぎ、時はいつしか午後になっていた。
サザンカは久しぶりの温かい料理に、ご満悦な表情を浮かべながら黙々と食事していた。
「ん~…美味しい…。
玉ねぎのスープに、トマトのリゾット…三日ぶりの温かいご飯…生きててよかった…。」
「ふふっ本当に美味しそうに食べるわね。」
「調子にのるからよ…。」
「そうは言ってもですね。
喜んだ顔を見るのはとても嬉しいですよ。
忙しかったけど…嬉しい悲鳴…と言うものです!」
「うーむ…。」
「どうされました?
アマノ様。」
サザンカ食事をしながら休憩をとっている傍らで、再度鏡で下界の様子を眺めているアマノミコト。
「下界の様子なのだが…。
先程、マツリカが種族が増えていると言っていたな…。
その種族を種類別に見ていたのだが…。
どうやら、人と、獣の耳や尻尾を持つ亜人とエネルギーの耐性が強い者がいるようだ。」
「…アマノ様がみているのは…あ、これですわね。
スキル『能力確認』…。
たしかに…種族…パーソン、亜人、…魔族?」
「魔族…って何…。
あの魔物と関係あるのかしら?」
「いえ…関係ないようですわ…人型ですし…。
ただ、アマノ様が先ほど言っていた、エネルギー耐性が強いようです。
それに、スキルも他の種族より多く持っていますわ。
ですが…いざこざが多くなっていて、見た目や能力からでしょうか…亜人や魔族は一部のパーソン達から除け者扱いをされているようです。」
「はぁ?!
何よそれ!
種族が違うってだけで嫌うなんてありえないわ!
こうなったら、対抗策として、私が保護するわ!」
『保護…とは、具体的にどうされるのですか?
神界に連れてこられませんが…。』
「あ…そうよね…。
冷静に…冷静に…熱くなっちゃダメね。
でも…このまま放っておくのは…。」
マツリカの説明に感情的になり勢いよく椅子から立ち上がったベロニカ。
だが、フィリーの言葉に我に返り、再び椅子に座り直し、何か対策がないか考え込んだ。
そんな中、食事が終わったサザンカが、目を輝かせた。
「それなら、私にお任せください!
ご飯のおかげでエネルギーも少し回復しましたので!」
「まーたスキル付与?」
「私達の持てるスキルは五個…。
あと一つしか枠がないのに、何を付与するつもり?」
「それは、『眷族』です!
ベロニカお姉様は魔族を、マツリカお姉様は亜人を眷族にしてしまえば、よいかと。」
「…眷族にしてどういうメリットがあるのかしら…。」
「…もし、ベロニカが魔族を眷族にしたなら、魔族はベロニカの一部を引き継ぐことになる…例えば、スキルが五つ持てると言ったところか…。」
「…私が亜人を眷族にしたなら…何が引き継がれるのかしら…。」
『そりゃぁ、マツリカ姐さんと言ったら、知識でさぁ!』
「「たしかに!」」
「眷族なので、何を引き継がせたいかは、姉様達にお任せしますよ!
そう言うスキル付与の仕方をします!」
「なるほど!
それなら、異論はないわ。」
「私も…。
サザンカもたまにはやるじゃない…。」
「えっへん!
そうと決まれば、さっそくいきますよ!
姉様達にスキル『眷族』を付与。
眷族の長は、系列の者に能力など自由に振舞えるものとします!」
サザンカが姉二人に手を伸ばし、力を発動させると、光が生まれ、一度大きくなり二つに分かれてそれぞれの体へ収まった。
「それじゃぁ…さっき提案にあったように私が魔族でいいかしら?」
「いいですわよ。
私は亜人ね。
そうね…さっそくスキルを発動させますわ。
スキル『眷族』発動。
…種族…亜人を私の眷族とします。
引き継がせる能力は…パーソンに虐げられても、くじけない不屈の精神…それから、知識…生き延びる為に必要だと思うから。」
「それじゃ、私も!
スキル『眷族』発動!
種族、魔族を私の眷族とするわよ!
能力は…そうねぇ…私と一緒でスキルを五つ持てるとして…自然系の魔法に特化していて…あ!そうよ!
寿命も伸ばして、若さを保つ!
うん、完璧!」
「…ベロニカ…欲張り過ぎぬか…。」
「そんな事はないわ!
若さは大事よ!」
「…そういう意味ではないのだが…。」
『お!下界の人々が光り輝きやした!
あれは…姐さんがたの眷族のお人達では?』
ザクロの言葉に皆が鏡を覗き込むと、下界では少しの異変が起こっていた。
それは、一部の人々が光に包まれると言う現象だ。
その光はすぐに収まったが、その光景を目の当たりした人々は畏怖を感じ取り、駆け足でその場から離れていった。
その場に残されたのは光った人々だけとなった。
「なんか…あの子達…困惑しているわね。」
「(あの子呼び?!
歳は大人…って感じだけど、すごい、さすがベロニカお姉様!)
えっと…事情を話してみるのも…ありかも?です…。」
「そうねぇ…。
あまり気乗りはしないけど…今回は致し方ないわね…。
マツリカちゃん、あの子達の頭上だけ厚めの雲を造れるかしら。
その雲の隙間から光を通して、あの子達だけに私達の声を届けるの。」
「わかりましたわ、姉様…それなら。」
ベロニカの言葉にぎこちなく頷いたマツリカは、鏡に手を伸ばし、眷族達の頭上に厚い雲を造り、創造を発動させ、声が通るような光を造った。




