サザンカの仕事
サザンカや姉達がアマノミコトの造った大きい鏡で下界を見ながら話し合う中、ザクロや妖精のフィリーも下界に興味津々な様子で鏡を覗き込んでいる。
『あ!
あの街、ベロニカ様達が落ちた街ではないですか?』
『お、本当でやすね!
前とは違って教会が建っていて、ベロニカ姐さんやマツリカ姐さんの像が造られていやす。
……嬢ちゃんの像は…残念ながらないでやすね…。』
『…サザンカ様…お二方とは違って、どんなお力があるかわからないので、信仰しようにも出来ないのでは…。
あ、でも、先ほどアマノ様が言っていた、サザンカ様達が訪れた村…こちらには小さいながらも教会があって、サザンカ様の像がありますよ。』
『本当でやすね!
それに、お供え物もちゃんとありやす!』
姉達と話していたサザンカだったが、ザクロやフィリーがヴィリオの村について話していた為、ザクロ達の会話に入り一緒に鏡を覗き込んだ。
「あ!前にお願いしたチーズやバター出来たんだ!
そうなれば…倉庫にお供え物が届くように通り道を造らなきゃ!」
そう発したサザンカは鏡に手をかざし、景色を噴水広場の倉庫へと変えた。
さらに創造を発動させ、目には見えないが空間魔法の類で通り道を造った。
「よし、風景は下界に戻して…っと。
これでお供え物が受け取れる!
そうだ!像にスキル『伝心』を付与!
効果は、祈りをしている者とのみ、像を通して私と話しが出来る事として…。
さらに、『化身』を付与!
こっちも同じく祈りをしている者のみ、私が造ったスキルを像を通して付与できるものとします!
これで下界に降りなくても、お仕事できるし、下界の人達にこれ以上、私達の姿を見せなくて済むかな!」
「サザンカちゃんたら…さっそくお仕事してるわ…。
しかも、あれだけ多くの人に女神の存在を知らしめていて、いまさら変な所に気を遣っているし…。」
「…これで突発的に私達にスキルを付与すると言う事はなくなるわね。
と言うより、姿は見せなくても声は届けるのね…。」
「うむ…今までよりも生き生きとしておる…。
これで少しはエネルギーの使い方にも慣れて欲しいものだ…。」
サザンカが鏡を見ながら力を使っている傍ら、姉二人やアマノミコトは安心したような、少し心配そうな表情を浮かべていた。
『あ、サザンカ様、さっそく人がお祈りに来ましたよ。』
「ほんとだ!
よし、さっそく像を通してお話してみよう!」
サザンカやフィリー達が鏡を覗いていると、一人の村の青年が像の前に訪れた。
青年は膝をつき、両手を胸の前で握り祈りを始めた。
その声はスキル通り、サザンカにしか聞こえないもので、サザンカは目を輝かせながら鏡に身を乗り出した。
『女神、サザンカ様に祈りを申し上げます。
自分達の生活…見てくれていますか。
あれから随分と時が経ちました。
医療の知識や技術もだいぶ発達しています。
サザンカ様が好きだと言うチーズやバターもご用意してますので、どうぞお受けとりください。
今日も一日平和であるよう、お見守りください…。』
「わ、すごい!
本当に声が聞こえた!やったー!!
スキル付与大成功ーー!!」
『え、うわ?!
こ、声が…誰もいないのに、声が聞こえる!!
お、おば…お化け?!』
「お化けじゃないですよー!!
女神です!!」
『へ、め、女神様?!』
「そう!
女神のサザンカです!
チーズやバターを供えてくれてありがとう!!
大事に頂きます!」
『あ、はい、いいえ!
あっ違くて、えーっと、チーズやバターを供えたのは俺じゃなくて…えっと…。』
「ふふっ…突然話し掛けてごめんなさい。
そういえば、どうして私の名前がサザンカだって知っているの?
ヴィリオの村に行った時、名乗らなかったはずなのに。」
『それは、オウトの方達が言ってました。
元気いっぱいな女神様が名乗ったと。
ただ、何をする女神様かわかんなくて、実際、女神様なのかも怪しいとも言ってました。』
「……最後の一言…聞きたくなかった…。」
『す、すみません…。
ですが、おれ…自分達の村は、サザンカ様の事はお姿も、優しさも、施しも知っていますので、サザンカ様への信仰が強いですよ!!
それに、ノーラも癒しの力を使って多くの人を助けたり、医療の研究をしたり大活躍です!!』
「…そっか…悪い話ばかりでもないみたいでよかった…。
そうだ!
せっかく像を通していろいろ出来るようになったから、あなたにもスキルを付与します!
ん~と…何がいいかな…。
そうだ!村の発展を願って、医療分野に関するものにしよう!
あなたにスキル『医学・薬草特化』と『調合』を付与。
効果は、その名の通り、医学と薬学に詳しくなり、さらに薬の調合が一級品になるものとします。」
『スキル…これで俺も村の為に何か出来るかも…。
ありがとうございます!サザンカ様!』
青年はサザンカからスキルをもらい受け、歓喜の声を上げながら像の前から立ち去って行った。
その様子を見たサザンカは、やり遂げた思いで満面の笑みを浮かべた。
サザンカと青年とのやり取りの間、皆には会話が聞こえていないため、一喜一憂するサザンカの姿を皆はキョトンとした表情で見ていた。
そんな中で、事が終わったように感じたマツリカがサザンカに声を掛けた。
「サザンカ?
やり取り…終わったの?
随分と話していたようだけど…。」
マツリカの問いに顔だけ向けて応えるサザンカ。
「医療に強くなるようにスキル付与したり、あとは今の村の事とかいろいろ聞いてました!」
「そ、そうなの…。
まぁ、サザンカが楽しそうでなによりだわ。」
「へへっ。
あ!お供え物のチーズとバターを神界に持ってこなきゃ!!」
サザンカはそう言うと、再び視線を鏡に戻した。
そうして鏡に手をかざし、力を発動させ、お供え物のチーズとバターを先ほど造った通り道を使って神界に持ってきたのだった。




