人口増加と体質変化
サザンカ達一行は村を出た後、人気のない森の中を歩いていた。
「私達がこんな所を歩いているのって…人前で魔法やスキルを使って、女神だと言う事を知られない為…ですよね。」
「そうよ。
誰かさんのおかげで、もう一部には知られてしまったけど…。」
「てへっ。
それにしても、先ほどのマツリカお姉様の言葉…村の人達にとって、少し厳しい気がしました…。」
「…。
…彼らは私達のように力を持てない…。
だからと言って、大きな力に頼り過ぎては、生きていくのが困難になるわ。
だから、知識を付けて欲しいの…。
サザンカだって、作物を収穫した時、道具を使って手作業で行ったでしょう?
それと一緒で、力だけに頼るのではなく、他の誰かに頼るのでもなく…出来ない事をそのままにしたりせず、自分の足で…ちゃんと生きて欲しいの。」
「……。」
「誰かに頼る事…時には大切な事だけど…最初から他の人に頼るのは違うでしょ?」
「…いざ一人になった時、何も出来ない人になってしまう…。
そういう未来を見越した上での言葉だったのですね。」
サザンカの言葉に、マツリカは肯定するかのように微笑んだ。
そんな二人の会話を見守っていたベロニカが、ふと思い出したように疑問の表情を浮かべ、サザンカに問いかけた。
「そういえば、大勢の前で女神を名乗った時、私達の事は具体的に紹介したのに、自分のスキルの事はどうして紹介しなかったの?」
「えっと…スキル付与の事をどうやって説明していいかわからなかったので…。」
「「……。」」
『嬢ちゃんらしいや…。』
サザンカの言葉に姉二人とザクロは呆れた表情を浮かべ、小さくため息をこぼした。
だが、そんな状況が可笑しく思え、姉二人とザクロは次第に笑いが込み上げた。
そんな皆をサザンカはキョトンとした顔で見つめた。
「もぅ、サザンカちゃんたら…ほんと予想外というか、なんというか。」
「本当ですわ。
ちゃんと見守らないと危なっかしい。」
『猪突猛進で純粋…ついでに頑固…クセが強い親でさぁ。』
「ふふっ…さ、そろそろ神界に戻りましょうか。」
キョトンとするサザンカをよそに、いまだ笑いあう二人と一匹。
その中でマツリカは皆に声を掛け、神界に戻る為に皆が乗れるような雲を魔法で造った。
皆はその雲に乗り、神界へと戻ったのだった。
―――
サザンカ達が下界から戻って数日後。
いつものように会議をする為、サザンカ達女神とザクロ、フィリーは蓬泉殿の会議室へと集まっていた。
「さて…今日の議題だが…。
会議用に造ったこの大きな鏡に写る下界を見て欲しい…。」
「下界?
そういえば、この間も思ったけど、人の数が異常なほどに増えているわよね…。
それに、技術もものすごい勢いで発達しているし…。」
「うむ…ベロニカの言う通り、その事について話し合おうと思ってだな…。
世界が動き出してから神界では数日が経つ。
だが…どうやら、下界では神界以上に時が進んでいるようだ。
神界でも下界の様に日が昇り、月は沈むが…調べた所、我が神界と下界を分ける際に施した空間魔法と結界魔法が影響しているとみた。
それに、技術の発展はおそらく、サザンカが付与した賢者のスキルを持つ者のおかげだと思われる。」
「そういえば、私達が寄った村で、賢者様が…って言っていたわね。」
「…サザンカの付与した『賢者』…本人の中で進化をしたのでは…。
でないと、ここまで人の技術が急速に発達しないはずですわ。
それに、おうと…とも言っていたわ。
そのまま桜都と言う言葉がスキルに引き継がれていると思われます。」
「うむ…それだけではない…。
我はここ最近下界を眺めていたのだが…。
どうやら、人々の体質にも変化があるようだ…。」
「何が…あったのですか?」
「この世界のエネルギー…。
桜の木のおかげで収束されているが、全回復している今現在、微かに桜の木や地上から漏れ出ているのだ。
その影響を人々は少なからず受けており、体質変化しておる。」
「…つまり…人々がエネルギーを微量ながらに浴びたから、エネルギーに対する耐性が出来て、それに加えてエネルギーも保持している…と言う事かしら。」
「その通りだ。」
「…てことは…私の仕事が心置きなく出来ると言う訳ですね!!」
『「「……。」」』
「まぁ、そういう事になる…。」
「サザンカちゃん…そんなにお仕事したかったの?」
「はい!
ずっと楽しみでした!
今までお休みした分を返上して尽くします!」
「…社畜体質。」
「まぁ、倒れないようにエネルギーの使用には気をつけよ。」
「はい!!
そういえば、下界ではどのくらい時間が進んでいるのですか?」
「そうだな…事細かにはわからぬが…月単位で…と言う所だろうか…。
もしかしたら、時の流れにズレが生じるかもしれぬ…。
すこしばかり様子をみて、あまりにもズレが大きくなるようであれば、修正させる。」
「月単位…数ヶ月くらいかしら…それで人口増加が激しいのね…。」
「それだけではないようですわ。
生活している場所の中で、子孫を多く残した方が有利な立場になれる…と言った制度があるみたいですわ…。」
「え…何それ…一夫多妻制でもしてるの?」
「いえ、この鏡を見る限り…ただ純粋に一人のパートナーとの間に子を多く残しているようですわ。」
「へぇ~。
あれから人の知識や行動もいろいろ進化しているのね。
それに加えて体質変化…。
まだまだいろんな事が起こりそうね。
見守るのが楽しみだわ。」
皆は鏡に写る下界を見て雑談を交えながらも、人々の進化の速さに驚きと期待の表情を浮かべていた。




