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お供え物の相談

家族を流行病(はやりやまい)から助けて欲しいと言う、村人達の後ろを付いて行くサザンカ達。


村人達に案内されるがまま、サザンカは一軒一軒の家に入り、スキル『癒しの力』を施していった。


その間、家には入らず、家の外からサザンカの行動を見守る姉二人とザクロ(雀鷺)

ベロニカとザクロ(雀鷺)は困った表情を浮かべ、マツリカは眉間にしわを寄せたまま険しい表情を浮かべている。


「この家で最後かな!

よし!ちゃちゃっと終わらせるよ!」


そう勢いよく最後と思われる家の中に入り、宣言通り素早く事を成し終えたサザンカ。


サザンカが病に伏せていた人々を治し終え、姉達のもとへ戻ろうとした時、健全な村の人達全員がサザンカのもとへ集まり、サザンカは瞬く間に人々に囲まれた。


『ありがとうございます、ありがとうございます!』


『この御恩は一生、忘れません…女神様…。

せめてお名前を…お名前をお教えください…。』


「いえ…ほんとにお礼は…それに女神では…。

名乗るほどでもありません…。」


『いいえ、お礼をしなければ我々の気がすみません。』


『あなたが女神ではないと言うのなら、聖女様だ…。

聖女様、何か…お礼をさせてください…。』


涙ぐみながらサザンカを取り囲む人たち。

その人達の言葉をかわすため、先程の姉達からの教訓を活かしながら対応するが、いっこうに引く気を見せない彼らにさすがのサザンカも困った表情を浮かべている。


村の人達の熱心な瞳に負けたサザンカは俯き、少し考えて顔を上げた。


「あの…そこまで言うのでしたら、一つ聞いてもいいですか?」


『はい、なんなりと!』


「この村にいっぱいいる、牛や羊…ヤギから乳が出ると思うのです。

その乳を使った食べ物って…ありますか?」


『…賢者様が言っていた、チーズやバターの事でしょうか…。』


「そ、それです!

それって、今ありますか?!」


『……。』


村人の言葉にサザンカは目を輝かせた。

だが、サザンカの問いに村人たちは表情が曇る。


『…それが…まだ出来上がっていません。


先日、賢者様がこの地にいらした際に、流行病(はやりやまい)の事と、チーズやバター…乳製品の事を作り方から知識まで教わりました。


ですが、作り始めたばかりなので…。』


「そう…ですか…。


あの…その乳製品…が出来たら、病を治したお礼として神に供える…と言うのをお願い出来ますか?」


『…神に…。

そうか…聖女様のお力…神から授かったと…。


承知しました。

そのお約束、お守り致します。』


「あ!お供えは生活に支障がない範囲で!

その方が神様も安心すると思うので!」


『ふふっ…神…いえ、神様はそうとうにお心が広いですね。

まるで、貴方様のようだ。


どこまでも…感謝致します。』


サザンカと村の人達の話がまとまり、村の人達はサザンカに向けて深く頭を下げた。


その様子をずっと見守っていたマツリカが、サザンカや村の人達に近づいた。


「話がまとまった所で申し訳ないのだけど…。

私からいいかしら。」


『はい…なんなりと。』


マツリカの言葉に、村の人達は頭を上げ、マツリカに体を向けた。


「今日の出来事で、この子がどれだけお人好しかわかったのだけれど…。


少しは自分達で知識を付けなければダメよ。

病の原因から治す方法まで、自分達でみつけるの。


いつもこんな風に危機を乗り越えられる訳ではないわ。


運命は…時に残酷かもしれないけれど、それを受け止める強さも身につけて欲しい。」


『…そう…でございますね…。

今回は運がよかった…。』


「(ごめんなさい…生死に関わらないと言った以上、こういう事しか言えないわ。


それに、エネルギーがなくて魔法やスキルを持てないあなた達には強くなって欲しい…。

でも、これだけは…届いて…。)


大丈夫、あなた達なら出来るわ。

神はずっと、あなた達を見守っているもの。」


『…はい…お言葉…ありがとうございます…。』


「さ、私達はここでお(いとま)しましょう。


それでは、この村に…あなた達に…神のご加護があらんことを。」


マツリカは軽く会釈(えしゃく)して(きびす)を返し、ベロニカ達のもとへ歩き出した。

ベロニカやザクロ(雀鷺)もまた、(きびす)を返して歩き出す。


姉達が歩き出したのを見て、サザンカも人々の輪から抜け出した。


輪から抜けたサザンカは村の人達に体を向け、一瞬深くお辞儀をして姉達のもとへ駆け出した。


その刹那、サザンカの後姿に村の一人が、声を掛ける。


『聖女様!

……いえ、女神様!』


村の人の声に、反射的に足が止まったサザンカは、驚いた表情で振り返った。


『あなた方からの御恩やお言葉…生涯忘れません!

今日の出来事を…気付きを胸に真っ直ぐ生きていきます!


本当にありがとうございました!


また機会がありましたら、この村…ヴィリオにお越しください!

いつでも歓迎します!』


村の人達の思いは同じだったのか、言葉は一人だけだったが、周りの人達も力強く頷く。

村の人の言葉が終わるのと同時に、人混みをかき分けてノーラがサザンカのもとへ駆け寄ってきた。


『おねーちゃん!

おかあさん、よくなったの!

ありがとう!おねーちゃん!


ノーラ、おねーちゃんみたいに、やさしいひとになる!

いっぱい、わるいのなおすひとになる!』


サザンカは駆け寄ってきたノーラの言葉に、嬉しさで目頭が熱くなり、優しい笑みを浮かべ、ノーラの頭を優しくなでた。


「…ノーラちゃん…。


ノーラちゃんに『癒しの力(小)』のスキル付与…。

ケガや病気を治す癒しの力とします。

ただし、限界手前でスキルの発動が出来ないと言う制限付きで…。

エネルギーも少し譲渡…。」


サザンカが唱え終えるとノーラは光に包まれ、その光は一瞬で収まった。

その光景にノーラや村の人達は言葉を失い、驚いた表情を浮かべる。


サザンカは皆に微笑みながら口元に人差し指をあてた。

そんなサザンカを見た村の人達は、キュッと口を堅く閉じ、胸に手を当て、深々と頭を下げる。


サザンカは軽く頷き、ノーラに笑顔で手を振り、(きびす)を返して姉達のもとへと再び駆け出したのだった。

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