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癒しの力

少女の案内で森を抜けたサザンカ達。

場所は桜都(おうと)の反対側にある(ひら)けた場所だ。


その(ひら)けた場所には、数件の家屋と数十の家畜がいた。


「村…?牧場…と言ったところかしら…すごい数ね。」


「お家はどこ?」


「……あっち…。」


サザンカ達が家畜の数に圧倒されつつも村の中を歩いていると、一人の男性が声を掛けながら正面からやってきた。


『ノーラ!』


「?

えっと…どちら様ですか?」


『あー…すみません、この子の隣の家の者です。

ドマニと言います。

あなた方は…。』


「私はめが…。」


流浪(るろう)の者です!

名乗るほどの者ではありません!」


男性がサザンカ達の前で足を止め、女の子に向かって名を呼んだ。

サザンカもまた歩いていた足を止め、男性と女の子を交互に見やった。


軽く自己紹介してる最中(さなか)、サザンカの言葉を遮るようにベロニカが会話に入ってきた。


流浪(るろう)の者…そうでしたか…。

その子はノーラと言います。

歳は7つです。』


「ノーラちゃん…。

この子とは森で会いました。

お母さんが体を壊したと…それで薬草を採っていたと聞きました。」


『……はい…。

どうぞ、ノーラの家はこちらです。』


サザンカ達は、ドマニと名乗る男性の案内で再びノーラと呼ばれる女の子の家に向かって歩き出した。


ドマニの案内でノーラの家の前に着いたサザンカ達。


サザンカは抱きかかえていたノーラをゆっくり地面におろした。

ノーラは泣き止んでいたものの、顔は涙のあとでぐちゃぐちゃだ。


そんなノーラに案内されるままサザンカ達は家の中に入り、ドマニは諦めているような、どうにもならないと悟っているような形容しがたい表情でそのまま去って行った。


「お邪魔しま~す。」


「「お邪魔します。」」


ノーラの家に入ったサザンカ達は、遠慮がちに辺りを見渡した。

家の中は簡素な作りで、台所と食事用のテーブルに椅子、二人用のベッドしか置いてない。


そんな部屋の隅にあるベッドに、ノーラの母らしき人物が横になっていた。

サザンカ達はそのベッドに近づき、横になっている人物の顔を覗き込む。


「……ノーラちゃん…。

お母さん…助けるね。」


『おねぇちゃん…ほんとにできる?

おかあさん…いなくならない?』


サザンカがノーラに声を掛け、母らしき人物に手をかざした刹那、姉のマツリカに止められた。

マツリカはノーラに近づき、しゃがんで目線を合わせながらゆっくりと話した。


「ノーラちゃん…今から見るもの…誰にも言わないって約束出来るかしら。

秘密…守れる?」


『ひみつ…うん…まもる…。

ノーラ、だれにもいわない!』


「…ありがとう。」


ノーラの返事を聞いたマツリカは優しく微笑み、ノーラの頭を撫でた。

その様子を見たサザンカも笑みを浮かべたが、すぐに目を閉じ、引き締めた表情を浮かべ視線をノーラの母に戻した。


「では…いきます。


スキル『癒しの力』。

この者の状態を治し、体力ともに回復させよ。」


サザンカが唱え終えると、ノーラの母は光に包まれ、青白く生気のなかった表情が和らぎ、温かみのある表情に変わった。


光が収まると、ノーラの母は息を小さくこぼし、ゆっくりと目を覚ました。


『おかあさん!』


『…ノーラ?』


目を覚ました母にすぐさま駆け寄るノーラ。

ノーラは再び泣き出してしまい、そんなノーラの頭をぎこちないながらも撫でる母。


その様子にサザンカを始め、姉達やザクロ(雀鷺)は涙ぐんだ。


『おねーちゃんがなおしてくれたんだよ!』


『…そう…なの…。』


ノーラの言葉に起き上がろうとする母。

そんな母をサザンカは慌てて止めた。


「まだ寝ててください!

治ったばかりなのですから!」


『……すみません、それじゃ、お言葉に甘えて…。

実は…賢者様に流行病(はやりやまい)と言われたのです。


治す術はないとも言われました。

どこのどなたか存じませんが…神のおぼしめし…この度は本当に…ありがとうございます。


何かお礼を…私に出来る事があればなんなりと…。』


「いえいえ、そんな、お礼は良いですよ!

気持ちだけ受け取っておきますね。」


「さ、病も治した事だし、ゆっくりさせましょう。

私達がいると、ゆっくりも出来ないでしょう?


そろそろ失礼しますね。」


『…どこまでもお気遣い…感謝致します…』


病が治ったばかりのノーラの母をゆっくりさせるべく、ベロニカはサザンカの肩を抱き、(きびす)を返して入口へと向かった。


マツリカが扉を開け、先に外に出たが、目の前の光景に歩きかけた足を止めた。


マツリカの目線の先には、先ほどのドマニを含む村の大人達が地面に座り、地面に頭を伏せていたのだ。

言わば、土下座状態だ。


『女神様、どうか…どうか我々の家族もお助け下さい…どうか…。』


「…私達は流浪(るろう)の者です。


……何故…女神だと?

それに、助けて欲しい…とは。」


マツリカの問いに、高齢の女性が頭を地面に伏せたまま答えた。


『先程…見てしまいました…。

この村に人が来るのは珍しいと思い、こっそり様子を見ていたのです。


そしたら…不思議な力を使って病を治しました…。


これはもう、神の領域だと…思ったのです。


その事を、病に伏せる家族を持つ皆に話したのです。』


「…なるほど…。


…見られたなら致し方ないわね。

先程も言ったようにあくまで流浪人(るろうにん)…。

神から授かったこの不思議な力は、あまりにも代償が大きいの…。」


『神に選ばれしお方…。

そこをなんとか…なんとか、そのお力でどうか我らの家族も流行病(はやりやまい)からお救いください…。

なんでもします…。

この命さえも好きにして頂いてもかまいません…。』


「……。」


「そのお話、私が解決します!!」


マツリカと村人が話し込んでいると、サザンカが勢いよく話に入ってきた。


サザンカの言葉に村人は勢いよく伏せていた頭を上げ、目には涙を浮かべており、期待を込めた視線をサザンカに向けた。


その一方でマツリカは眉間にしわをよせ、ため息を吐き、呆れた表情でサザンカを見たのだった。

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