サザンカと少女
サザンカの突拍子もない行動に、珍しく大変ご立腹なベロニカ。
「サザンカちゃん…神の存在を公言してどういうつもりかしら…。
力が強い者の存在が知られたら混乱を招くと、ついこの間マツリカちゃんが説明していたはずよ。」
「…はい…。」
「それに、未来は不確定要素ばかり…。
私達の存在が知られた事によって今後、悪影響があったらどうするの。」
「それは…大丈夫と思います…。」
「どうしてそう、言いきれるの?」
「…仮に、私達の力を利用しようと考える人達が出たとしても…マツリカお姉様の『穏やかな感情を組み込む』。
私はそれを信じます…人々を信じます。」
「……。
人の感情は複雑…だからゼロからの創造は出来ない…。
だから…土を人型に形成して、息を吹き込んで知識と感情の木の実を与えたのよ。
そう言う過程があったとしても、変わる時は変わるのよ。
知らないほうが良い事も世の中にはあるわ。
それが、自分を…周りを守る事にも繋がる事もあるの。」
「……それでも、私は人々を信じます。」
「(これ以上は何を言ってもダメね…。)
はぁ…サザンカちゃん…頑固ね。
わかったわ。
今回は折れましょう。」
ベロニカの説教に、サザンカは強く揺るがない瞳をみせた。
そんなサザンカの様子に意気消沈し、呆れを含む柔らかい笑顔を見せるベロニカ。
マツリカもまた、呆れを含む柔らかい笑顔を浮かべていた。
姉二人はサザンカに近寄り、手を差し伸べてサザンカを立たせた。
「しょうがないわね、私達の末っ子ちゃんは。
もう、こうなったらサザンカちゃんを含めた万物を見守ると改めて宣言するわよ。」
「姉様一人じゃ大変だろうから、私もお手伝いしますわ。」
「ありがとうマツリカちゃん、頼りにしてる!」
『あっしも、兄さんの右腕になりやすぜ!』
「おぃ、こら。
兄と言っているわよ、鳥。」
「油断…。
それにしても、サザンカが創造したのに、ザクロは理性的と言うか…親に似ていないわね。」
『背中を見ていたら、こうなったのでさぁ!』
「なるほど、反面教師と言う訳ね。
さて…そろそろ神界に戻りましょう…アマノ様が心配しているはずだから。」
「あ、あの~…もう少し、下界を見て回りませんか?
上から見る景色と違うので、前より賑やかになった下界はなんだか新鮮で…。」
「もう~サザンカちゃんは~…。
でも、私も気にはなっていたのよね~。」
「サザンカに続いて、姉様まで…。
実は、私も…。」
『……。
(似た者姉妹…。)』
「それじゃ、ちょっとだけ散策~!!
ベロニカ姉様についてきなさ~い!」
話しがまとまり、神界に帰ろうとしたが、下界が気になっていた女神たちは少しだけ人気のない自然の中を散策する事にした。
「マツリカちゃんの創造、この辺りもしたのね~。
いろんな作物が実っているわ。」
「こっちはキレイな色のキノコがありますよ!
あ!こっちは小さくて可愛いです!」
「サザンカ、回復効果のあるキノコもあれば、毒があるキノコも実っているわ。
拾い食いはダメよ。」
「そんなお行儀悪い事しないですよ~。
って…ん?」
「どうしたの、サザンカ?」
「あっちに…小さい子がいます…。」
「本当だわ…何しているのかしら…。」
サザンカ達は自然の中を歩き、さらに森の中に入ってマツリカの創造したものに見入っていると、小さい子がうずくまっているのを目にした。
遠くから様子を見ていたサザンカ達だが、近づいて声を掛ける事になり、真っ先に声を掛けたのは、最初に見つけたサザンカだった。
「どうしたの?
こんな所に一人?」
サザンカが近づいた事で、体をビクッと震わせ、恐る恐る振り向く小さい子。
その姿は肩までの髪の長さの女の子だった。
女の子は目に涙を溜めながら、手は土で汚れ、何かを持っている様子だ。
サザンカは一瞬驚いた表情をしたが、すぐに柔らかい笑みを浮かべて女の子の視線に合わせるようにしゃがみ込んだ。
「何か探し物?
お姉ちゃんが一緒に探すの手伝うよ。」
「…ふぇ…うわぁぁん。」
サザンカの言葉に、突如泣き出す女の子。
その女の子をなだめるように頭を撫でるサザンカは、話を聞こうと泣き止むのをじっと待った。
ベロニカ達は二人を見守るように、サザンカの後ろで立っている。
少し落ち着いてきたのか、涙をぬぐいながら鳴き声の代わりにポツリポツリと話し出す少女。
「お…おかあさんが…おかあさんがいなくなっちゃう…。
からだ…こわしちゃって…。
おうとの…けんじゃ…さまが…どうにも…ならないって…。
もう…ながくないって…いってたの…。
だから…なおるように…やくそう…けんじゃさまが…。
おかあさ…うわぁぁん…。」
「…お母さん…助けよう…いなくなんてならない。
私が何とかする!
だから、泣かないで?ね?」
サザンカは再び泣いた女の子の頭を撫でながら、優しく抱きしめた。
「何とかするって…どうするの?」
「癒しの力を使います。
今ならまだ間に合うので。」
サザンカは女の子の手の汚れを自分の服で拭い、抱き上げながらベロニカの問いに答えた。
そうして一行は、泣きながらも道案内をする女の子の言葉に従って、歩き始めたのだった。




