フィリーの悩み
サザンカ達が調味料をつくってから数分後。
サザンカとベロニカが収穫した野菜や果物は倉庫に収納され、フィリー達が製造した調味料も倉庫に収納された。
皆は再び噴水広場に集まり、雑談を交えていた。
そんな中、一人だけ浮かない顔をしている人物がいる。
『……。』
「どうしたのフィリー?、浮かない表情よ。」
『…ベロニカ様…悩みがいくつかあります。』
「なぁに?
生みの親の私に出来る事があれば何でも言ってちょうだい。」
『……。
えっと…では…相談ですが…。
私達の家と、畑の広さ…それと、作物を植えるにあたっての季節についてです…。』
「家…家なら造りましょうか!畑に近い所がいいかしら!」
『いいのですか?!
私達専用の家を造って頂いて!』
「もちろんよ!
この神界、広いからまだまだ造れるわよ!」
『ありがとうございます!
では、可愛らしいツリーハウスとかがいいのですが…。
あと、池とかもある方が…。』
「池は姉様だけど、ツリーハウスなら私ね。
それに、畑も広すぎたかしら…。
調節するわね。
後は季節…と言ったわね。」
『季節にあった作物を植えたいのですが、この神界には季節がなく気候が安定しているのでどうしたものかと…。』
「それなら私に任せて!」
「それじゃ、フィリー達の家造りと畑の調節に向かいましょう!」
アマノミコトとザクロを除いてサザンカ達は、フィリーの悩みを解消すべく再び広大な畑に足を向けた。
「あ!そうだ!
倉庫にスキル付与!
『新鮮・長持ち・永久保存』
倉庫に入れた野菜、果物、調味料たちは鮮度を長く保ち、永久保存出来るものとする!」
「野菜や果物…たしかに量が多いものね…。
今の人数で消費できるかどうか…。
それで腐らせちゃってももったいないし…。
うん、いいんじゃない、今のスキル。
ありがとう、サザンカちゃん。」
サザンカは畑に向かう途中で足を倉庫に向け、スキル付与を施した。
倉庫へのスキル付与に皆が納得した表情を浮かべる。
先に歩いていた皆に、サザンカは満面の笑顔を向けながら駆け寄り、共にまた畑に向かったのだった。
畑に着いたサザンカ達。
ベロニカと妖精達は、風魔法を使って残りの作物を全部収穫した。
畑が空いた所で、マツリカが魔法で畑の面積を少し調節して縮小させた。
「さて、畑の広さはこんなものかしら。」
『ありがとうございます、マツリカ様。
あとは私達がスキルで整備します!』
「次は私だね!
畑にスキル付与!
『四季折々、万能畑』を付与!
季節関係なく、数多の種類の作物を栽培出来るものとする!」
『ありがとうございます、サザンカ様。
これで季節関係なく、いろんな物が作れます!』
「あとはお家ね!
う~ん…あの辺に小さい池をいくつか造って~…。」
「その周りに小さい木々や花畑を植えて、木々の上に家を造りますわ。」
ベロニカは畑の近くの空いた空間に、妖精の体に合わせて小さい池をいくつか造った。
ベロニカの創造に合わせるようにマツリカもまた妖精の体に合わせたものを創造していく。
池の周りに花畑や木々、家、小さいテーブルや椅子、その空間を囲むように白いフェンスなど、生活空間を造っていった。
「うん、いい感じじゃない?
フィリー、どぉ?」
『すごい!
あんなに素敵に造って頂いてありがとうございます!ベロニカ様、マツリカ様!』
「そうだ…転移魔法を施しとくわ。
妖精の体ではいろんな場所に行くのも大変だと思うから。
魔法陣を創造…。
場所を各地へとつなげるイメージで…。
うん…出来たわ。」
『ありがとうございます!
これで皆様のご自宅まで行けますね!』
「あ!それなら、私のスキル付与で…。」
「「ダメよ!!」」
「サザンカちゃん、今、私達に転移のスキルを付与しようとしたでしょ!」
「あと一つしかスキル持てないのに、重要性のないスキルは付与しないで。」
「わ、わかりました…(姉様達…目がマジもんだ…。)」
「それじゃ、フィリー達の問題も解決したし、収穫した残りの作物を収納する為にも噴水広場に戻りましょうか。」
ベロニカを筆頭に、問題を解決した皆は作物を手にしながら噴水広場に戻るのだった。
数日後の噴水広場。
この日、サザンカは一人で鏡を見ながら地球の様子を眺めていた。
姉二人やアマノミコト、フィリーやザクロは自宅でゆっくり過ごしているのか、いまだ噴水広場に姿を見せていない。
「地球の文化がすごい発展している~。
料理の種類も多いし、美味しそうだなぁ。
あ!このお料理美味しそう!
材料は~……卵…牛乳…バター…砂糖…。
卵?牛乳?バター?…って何?
え~っと…あ、これだ…。
……これは…神界にないや…。
下界にあるかな…。
………う~ん…下界の地形…まちまちだから鏡だと探しにくいなぁ…。
噴水に繋いで探してみよう!」
サザンカは鏡を持ちながら噴水へと近づき、片手を鏡や噴水にかざして鏡に写る風景を噴水に写した。
「よし!
これで、下界の様子がよく見えるかな!
そうだ!バターについて妖精さん達に聞きに行こう!
発酵も必要って書かれていたし。」
サザンカは鏡や噴水をそのままにし、駆け足で妖精のもとへ向かった。
サザンカと入れ替わるように噴水広場にベロニカとマツリカが姿を見せた。
「あら?
私達が一番乗りかしら。」
「…違うみたいですわ…。
噴水の所に鏡があります。
形からしてサザンカのだわ…。」
二人は話しながら噴水に近づき、水面を覗き見た。
「サザンカちゃんたら、下界の様子を見ていたのね。」
「…下界の人の数…多くなってませんか?
しかもサザンカが創造した桜の木を中心に…。」
「本当ね。
獣耳を持った種族もいっぱいで、ほんと、前よりずいぶん数が増えたわね…。
それに、技術も少し高くなっているみたい…。
家や服装が前より立派になっているし、大きい噴水みたいなものも出来てるし…。
でも…どうして?」
ベロニカとマツリカが下界の様子のあまりの変わりように思考を巡らせていると、妖精のもとから戻ったサザンカが、走りながら噴水広場の二人に近づいてきた。
「姉様達~!!きゃ?!」
「「危ない!!」」
サザンカが走る足を緩めようとした矢先、地面につまずき、倒れそうになった。
それを姉二人が受け止めたのはいいが、走ってきた勢いとサザンカの体重も合わさって三人して後ろの噴水の中に倒れ込んだ。




