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鋼の筆が折れる時



 最初の壁にぶち当たって、それでも小説を書き続けていると――どこかでレベルアップするはずです。


 修行僧(Lv.2)です。


 Lv.2とLv.1は、格が違います。


 食事をする必要がなくなります。


 ポイントが付かなかろうが、PVが死んでようが、関係ありません。


 というか、そもそも確認していないはずです。


 先ほども書きましたが、私がレベルアップしたのは、20万字あたりだったようです。


 修行僧(Lv.2)は最強です。


 外界に惑わされることなく、己の内の衝動だけで、文章を書くことができます。


 モチベーションは自分自身。


 エタるなんてあり得ない。


 そう思って、私は執筆していました。


 順調に、全体の6割、70万字ほど書き終わった時――筆が止まりました。


 パソコンの前に2時間座っても、1文字も書けなくなりました。


 それが、何日も続きました。


 原因は分かっていました。


 当時の私は、戦争を描こうとしていました。


 かなり序盤の方から、コツコツと伏線を張っていたエピソードです。


 このエピソードを通して、主人公が大きく成長する――絶対にカットできない、重要な話でした。


 で、書き始めてから気付いたのですが……私は、軍記物が超絶苦手でした。


 数千の軍隊とか、どうやって描けばいいんですか?


 ふわっとした黒い塊しか、頭の中に浮かばないんですけど。


 そんな状態でも、無理やり筆を動かしました。


 苦痛でした。


 全然、楽しくありませんでした。


 で、戦争編が終わった時、私は書くのを止めました。


 書くことが、心底イヤになってました。


 あの時、私は一度エタりました。


 ――修行僧(Lv.2)のモチベーションは、自分自身の気持ちです。


 書くことが苦痛になったら、そこで終わりです。


 ポイントや感想じゃ、どうにもなりません。


 書きたいという気持ち――モチベーションが無くなると、小説を書けなくなります。


 私の場合は、「苦手な展開」が発端でした。


 他にも色々あると思います。一番多そうなのは、時間が取れないパターンでしょうか?


 このパターンでは、完全にモチベーションが無くなったわけではないと思います。


 もっと大事なことができて、「自分の小説」の相対的な価値が下がってるんだと思います。


 数百時間を注ぎ込んだ小説です。


 本来なら、すごく大切な物のはずです。


 見限ったり、ましてや忘れることなんて、普通はできないはずです。


 私も、そのはずでした。


 それなのに、私は……あの時、たしかにエタりました。


 自分の小説を、ゴミ箱に投げ入れました。






 ――突然ですが、私は医療関係の人間です。


 余命幾らもない患者さんに、よく会います。


 エタっている最中に、ある患者さんに会いました。


(特定されたら駄目なので、以下の話は、実際にあったこととは変えています)


 その患者さんは、末期の肺癌でした。


 患者さん本人が医者だったので、自分の状態を、完全に理解していたと思います。


 ある日病室を訪ねると、その患者さんは、パソコンを触っていました。


 何をしているのか聞いてみると、数ヶ月後の勉強会のために、資料を作っていると答えました。


 ほぼ百パーセント、数ヶ月後には亡くなっています。


 それなのに、どうして資料を作っているのか……そんな無神経なことは聞けませんでした。


 家に帰って、私は考えました。


 死の間際に、自分が何をしているのか、想像してみました。


 皆さんも、想像してみてください。


 私の場合は……小説を書いていました。


 家族や友人と過ごしたり、美味しいものを食べたり……そんな姿よりも先に、病室で小説を書いている自分の姿が想像できました。


 「なろう」を開いて、自分の小説を頭から読んでみました。


 色々とアラが目立ちました。


 こいつは何を書きたいんだ? と思いました。


 それでも、やっぱり、面白かった。


 自分の小説が、好きだと思いました。


 続きを書きたいと思いました。


 修行僧(Lv.2)の皆さん。


 鋼の筆が折れかけている、あるいは既に折れてしまった皆さん。


 皆さんは、どんな姿を想像しましたか?


 もしも私と同じなら、自分の小説を、もう一度頭から読んでみてください。


 それでもやっぱり、何も湧いてこなかったら……それは仕方ありません。


 とはいえ、たまには自分の小説を見てあげてください。


 月に1回、いや年に1回でも構いません。


 いつかまた、何かが湧き上がってくるかもしれません。



 ――



 まとめ。


 待つしかない。



 ○○○

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