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第三話

「さて……と」

 王宮を追い出されて――あんなに気を使われたのにこんな言い方をするのもアレだが、とにかく追い出された。キサラギ君は同じ世界の人間があの広間から退場するのをどんな感情で見ていたのだろうか。少し不安そうな表情をしていた気がする。冴えないオッサンでもいなくなると寂しいものなのだろうか。


 城の外はちょっとした庭園があって、かなり遠くのほうに門が見えた。そこまで案内に従って進むとお付きの者みたいなやつが話しかけてきた。全身鎧でがっちり固めた武骨そうな男。騎士団とかに属してそう。団長とかやってそう。っていうかやっていてほしい。


「あなたも災難でしたね。これからずっとこっちで生活しないといけないなんて」

「はあ、まあ、そうですね」


 フランクに話しかけてもらえるものなんだな。まぁ、俺なんてこの世界では珍しい人間だもんな。姿かたちがこの世界の住民とそっくりなことに感謝しよう。日本の東京とかいう地域は他人に干渉しないから初対面の人間に親しく接することは少ない。お国柄ってやつなのだろうか。ちょっと好きになっちゃうだろ。コイツは男だけど。


「私が付き添えるのは門までですが、何か御用があればいつでもここまで来てください」

「それは助かります。ありがとうございます」

「……あ、そうだ。それから国王から」


 結構おおらかな人柄だった。RPGとかで言うとゲームの終盤までお付き合いするような感じじゃないのか? ……まあ、これはゲームじゃなくて異世界なんだけど。しかも死んだら復活できない、現実世界だ。門前に到着して、重い木の扉を開けてもらっている最中に、付き人が大きな麻袋を手渡した。なんだろう。ずしりと重い。中を覗くと金色の硬貨がぎっちりと詰まっている。

「当分の資金です。これで家を買うのもよし。冒険に出るもよし、だそうで」

「ほう。ちなみに、おいくら……?」

「ええと、確か三万ジュムなので……三年は働かなくていいですかな!」

 ジェニム。なるほど円と違ってかなり一枚の価値が高いんだな。とにかく金の心配は当分なさそうだ。これからどうしよう。まずは食べ物を買うか。なんだか腹が減った。……それから、一つ気になることが。

「冒険って言ったけど、勇者しか冒険する訳ではないのですか?」

「はは、まさか! グランバートの若者達は魔物を倒しに酒場に集ってチームを組んだりしてるんですよ。魔物の皮は丈夫なんでね。素材にもってこいなんだ」

 なるほど。そういう産業も発達してるのか。侵入する魔物を有効活用するのはいいことだ。ゴミにもならないだろうし。こういうのは何次産業になるんだろうか。農業……じゃないな。加工産業? まあ、なんでもいい。それに街の外に沸くのは雑魚の魔物ばかりだという。得られる素材は少ないものの、貴重な資源らしい。なるほどなぁと納得していると門が完全に開いて、お付きの人も俺を促してくれる。


「いろいろとありがとうございました」

「いえ、お達者で」


 そうしてお付きの人と別れた。俺が門から出てしばらく歩いて振り返るとまだ門は開けっ放しで付き人は手を振っててくれた。名前、聞いておけばよかった。


 門の外は一面の花畑だ。木も一本も経っていない。丘の上にでも城を立てたのだろうか? ゆるやかな坂道が続いていて、よくよく目を凝らすと街らしい影が見えていた。なるほど、あれがグランバードの街なんだな。柵でぐるりと周りを取り囲んでいるのだろうか、門のようなものがぽつんとひとつある。あそこが出入り口らしい。広さはちょっとした湖くらいの大きさか。それでも視界いっぱいに広がっているから大きいんだろう。東京と比べたら全然だけど。というか発展具合も全然違うな。電車なんてものはなさそうだし、車も走ってない。信号なんて無いし、アスファルトも、ビルも無い。会社みたいな組織もないんじゃないのか? それは言いすぎか。

とにかくあの街を目指そう。それから今後の計画を立てるんだ。



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