表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨夜の月  作者: こたつ、34、久本陽太、monaka、羽黒
6/8

止まない雨1/2

 正直な話、僕は自分には自信がある方だ。


 昔から勉強は出来るし、知識は幅広く持っている。運動だって中の上くらいには出来る。低めの声質もあって歌は得意だし、絵も描けるし、ピアノやギターだって弾ける。家事や料理もお手の物だ。ゲームも得意で、その繋がりで友達も沢山いる。顔だって、とてもイケメンとは言えないが整ってはいる方だ。


 そんなマルチな僕だが、本日6月9日、好きな女の子にフラれてしまった。


 そもそも告白したのは3日前の夜で、友達に唆されて勢いで告白した。電話越しでの告白で、その時に言われたのは、

 「少し待って欲しい」

だった。


 僕としては、出来れば今聞きたいと言いたいところだったが、こちらは告白をした立場だ。だから急かすのは少し違う気がして、返事を待つことにした。


 そして今日、電話で

 「ごめん、君とは友達でいたいな」

と告げられたのである。


 正直な話、僕は頭では理解していた。彼女は多分、僕が傷つくと思って断りの返事を先延ばしにしているのだろう、本当は最初から返事は決まっていたのだろうと。しかしその中に、ほんの少しだけでも期待をしていた。もちろん、根拠がなかった訳では無い。


 “断る理由が無い”


 そう考えていた。まだ僕らは高校生で、男女交際なんてよくある事だ。それに、僕は自分に自信があった。だから断られた時は、何と言うか、様々な感情が混ざってとても複雑な気持ちだった。


 胸が苦しい。頭が痛い。動きたくない。いっその事死んでしまいたい。そうして硬いベッドに蹲っているうちに、いつの間にか眠ってしまっていた。


 どれだけの時間が経っただろうか。時刻は午後5時30分。外を見れば、空は厚い雲に覆われていた。


 「気分転換に、散歩にでも出るか」


 そして僕は、いつものランニングのコースを散歩することにした。田舎で人や車の通行はなかったが、律儀に歩道をとぼとぼと歩いた。


 歩きながら考える。僕は一体、何がダメだったんだろうか。それとも、他に好きな男でも居たのだろうか。もしそうなら、そいつと僕は何がどう違うのだろうか...。


 考えても考えても、答えは出なかった。同じ横断歩道の、何度目かの青信号が点滅する。


 ぽつり、と。


 梅雨の湿った雨が、僕の頬を伝った。地面を打ち付ける音が段々と増えていく。傘は持ってきていなかったが、構わず歩き始めた。


 ただただ、歩いた。


 ちょうど家まであと数百メートルというところで、信号を待つ人が見えた。僕とは違い、ちゃんと傘をさしていた。


 僕は何を思ってか、行き先とは違うのにその人と同じ横断歩道に並んで立った。横目の視線を感じる。信号はまだ変わりそうにもなく、時間がゆっくりと流れた。


 「ねぇ、何でこの雨の中、傘もささずに歩いてるの?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ