止まない雨1/2
正直な話、僕は自分には自信がある方だ。
昔から勉強は出来るし、知識は幅広く持っている。運動だって中の上くらいには出来る。低めの声質もあって歌は得意だし、絵も描けるし、ピアノやギターだって弾ける。家事や料理もお手の物だ。ゲームも得意で、その繋がりで友達も沢山いる。顔だって、とてもイケメンとは言えないが整ってはいる方だ。
そんなマルチな僕だが、本日6月9日、好きな女の子にフラれてしまった。
そもそも告白したのは3日前の夜で、友達に唆されて勢いで告白した。電話越しでの告白で、その時に言われたのは、
「少し待って欲しい」
だった。
僕としては、出来れば今聞きたいと言いたいところだったが、こちらは告白をした立場だ。だから急かすのは少し違う気がして、返事を待つことにした。
そして今日、電話で
「ごめん、君とは友達でいたいな」
と告げられたのである。
正直な話、僕は頭では理解していた。彼女は多分、僕が傷つくと思って断りの返事を先延ばしにしているのだろう、本当は最初から返事は決まっていたのだろうと。しかしその中に、ほんの少しだけでも期待をしていた。もちろん、根拠がなかった訳では無い。
“断る理由が無い”
そう考えていた。まだ僕らは高校生で、男女交際なんてよくある事だ。それに、僕は自分に自信があった。だから断られた時は、何と言うか、様々な感情が混ざってとても複雑な気持ちだった。
胸が苦しい。頭が痛い。動きたくない。いっその事死んでしまいたい。そうして硬いベッドに蹲っているうちに、いつの間にか眠ってしまっていた。
どれだけの時間が経っただろうか。時刻は午後5時30分。外を見れば、空は厚い雲に覆われていた。
「気分転換に、散歩にでも出るか」
そして僕は、いつものランニングのコースを散歩することにした。田舎で人や車の通行はなかったが、律儀に歩道をとぼとぼと歩いた。
歩きながら考える。僕は一体、何がダメだったんだろうか。それとも、他に好きな男でも居たのだろうか。もしそうなら、そいつと僕は何がどう違うのだろうか...。
考えても考えても、答えは出なかった。同じ横断歩道の、何度目かの青信号が点滅する。
ぽつり、と。
梅雨の湿った雨が、僕の頬を伝った。地面を打ち付ける音が段々と増えていく。傘は持ってきていなかったが、構わず歩き始めた。
ただただ、歩いた。
ちょうど家まであと数百メートルというところで、信号を待つ人が見えた。僕とは違い、ちゃんと傘をさしていた。
僕は何を思ってか、行き先とは違うのにその人と同じ横断歩道に並んで立った。横目の視線を感じる。信号はまだ変わりそうにもなく、時間がゆっくりと流れた。
「ねぇ、何でこの雨の中、傘もささずに歩いてるの?」