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第68話 平穏を破る風の音

「……そうかい」

 訓練場の中央で。レオンの話を聞き終えたナターシャは、腕を組んで彼に言葉を返した。

「まあ、そうなるのは仕方ないさ。衰弱していくってのは、体が衰えていくってことなんだから……あんたも、これからは自分の体を第一に考えて過ごすようにするんだね」

「僕は、自分が情けないよ……自分のことも満足にできなくて、周囲の人に迷惑を掛けて」

 遠くで案山子を相手に武器の訓練をしている子供たちを見つめながら、レオンは俯き加減に呟いた。

 そんな彼を、ナターシャはいつもの調子で慰める。

「あたしたちのことは気にしなくていいって言ったろ。……あんたは、少しでも長く生きることを考えておくれよ。あんたが何もできなくなったからって、見捨てたりなんてしないからさ」

「…………」

 真面目なレオンからしてみたら、自分が人の荷物になることが許せないのだろう。

 体の緊張が解れてきたからか、今は自力で立ち上がる程度のことはできるようになったが──朝はアメルの手を借りなければ起き上がることすらできなかった自分。

 彼女を一人前の冒険者に育てると約束した者として、何と情けない有様なのだろうか。

 ナターシャはふっと笑って、レオンの背中に手を触れた。

「あんたがどんな姿になったとしても、あんたがあたしの好きなレオンだってことに変わりはない。安心しな、あたしは最後の時まで、あんたの隣にいてやるからさ」

「……ありがとう」

 レオンはナターシャの顔を見上げて、微笑みを返した。

 見つめ合う二人。穏やかな雰囲気が、二人を包み込む。

 ──それを、唐突に横切った巨大な影が払拭した。

 ぶぉん、と風が巻き上がる。

 二人は驚いて、空を見上げた。


 太陽が輝く青空の下に、獲物を物色しているかのように留まっている一隻の船。

 船体の側面に、辛うじて獅子の横顔を象った紋章が見える。


 ビブリード帝国の、飛空艇だ。


「みんな、訓練をやめてギルドの中に入りな!」

 ナターシャが訓練所中に響き渡る大きな声で叫ぶ。

 訓練をやめた子供たちが、その言葉に従って建物の中に駆け込んでいく。

 アメルも案山子相手の訓練を中断して、二人の元へと駆けてきた。

「レオン、ナターシャさん、あの船……」

「アメルも中に入って」

 レオンが彼女に建物の中に入るように促す。

 しかし彼女はきゅっとシャツの裾を掴んだまま、動こうとしなかった。

「……私、あの船、見覚えあるような……気がする……」

「見覚えあるって……ビブリードの飛空艇をかい?」

「……私……」

 一呼吸置いて、アメルは言った。


「……昔、あそこにいたような、気がする……」


 アメルの告白に顔を見合わせるレオンとナターシャ。

 表の方で、わぁっと声が上がった。

 次いで聞こえてくる銃撃の音と、爆発音。

「ビブリードだ! ビブリードが攻めてきた! 逃げろ!」

「……!」

 二人の顔が険しくなった。

 ナターシャは車椅子の持ち手を掴んで、建物に向けて押した。

「……話は後だ。とにかく中に入るよ!」

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