第60話 残酷な宣告
日暮れ時。世界が夕焼け色に染まった頃、アメルはリンドルの森から街へと帰ってきた。
随分と上機嫌で冒険者ギルドへと向かい、ただいまと言いながらその戸口をくぐる。
彼女を迎えたラガンは、ギルドカウンターで台帳の整理をしながら彼女に声を掛けた。
「おう、帰ってきたな。その顔だと、無事に卵を獲ってこれたみたいだな」
「うん、頑張ったよ!」
アメルは鞄から麻袋を取り出して、カウンターの上に置いた。
早速麻袋の中身を検めるラガン。
取り出した卵を見つめて、頷く。
「……確かに、スナイプバードの卵だな」
「三個しかないけど……大丈夫?」
「問題はないぞ。初めて一人でこなした仕事にしちゃ上出来だ」
ラガンは卵を背後の棚に置いて、麻袋はアメルに返却し、金庫から小さな革袋を取り出した。
「それじゃあ、仕事の報酬だ。銀貨八枚入ってる。確認してくれ」
アメルは革袋を受け取り、口を開けて中を覗き込んだ。
確かにラガンが言う通り、袋には銀貨が八枚入っている。
革袋を腰のポケットに入れて、アメルはラガンに尋ねた。
「レオンは何処? 訓練場?」
「……あー」
ラガンは気まずそうに答えた。
「レオンは……」
「やあ、帰ってたんだね」
裏口の扉が開き、ナターシャが姿を見せた。
「レオンは此処にはいないよ。今は自分の家で寝てる」
「……寝てる?」
怪訝そうに小首を傾げるアメルに、彼女は静かに告げた。
「昼間、倒れてね……吐いたりしてちょっと普通じゃなかったから、あたしが家に連れて行ったんだ」
「……!?」
アメルは息を飲んだ。
今までに、レオンは何度も倒れたことがある。しかし吐いたりしたことは一度もなかった。
そんなに状態が悪いのか、と彼女は思った。
ナターシャは言った。
「……アメル。こんなことを言うのは酷かもしれないけど……あんたのためにも言うよ」
ゆっくりと、自分自身の言葉を噛み締めるように、続けた。
「レオンは……もう長くはないよ。あんたも、覚悟しておくんだね」
「…………」
残酷な、その宣告に──
アメルは唇を噛んで、俯いたのだった。




