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第59話 失われゆく命

 太陽が西に傾き、空がゆっくりと黄金色に染まっていく。

 レオンはゆったりと椅子の背凭れに身を預け、訓練場で体を動かしている子供たちを見つめながら、呟いた。

「……アメル……無事に仕事クエストをこなせたかな……」

 アメルのことを笑顔で見送りはしたものの、本心では彼女のことが心配だったのだ。

 スナイプバードの嘴は下手な武器よりも鋭い。彼女がその嘴を受けたら浅い傷では済まないことを分かっていたのである。

 仕事クエストは、完遂できなくても構わない。無事に帰ってきてほしい。

 それを願って、彼はふう……と息を吐いた。


 ずぐん。


「…………!」

 ぎゅうっと縮む心臓。頭の芯が圧迫されるような息苦しさがレオンを襲う。

 レオンは体を二つ折りにして、目をぎゅっと瞑った。

「……う……ぐ……!」

「……レオン?」

 子供たちを見ていたナターシャが、レオンの様子に気付いて彼の元にやって来た。

 彼の体を支え、顔を覗き込む。

「また心臓が痛むのかい」

「…………」

 はーっはーっと全身で息をするレオン。

 今までにない辛さに、涙が滲み出て彼の頬を伝っていった。

「……か……は……う……っ」

 びくん、とレオンの全身が震える。

「……うげ……っ」

 べしゃ、と彼は胃の中身を地面へとぶちまけた。

 ナターシャはびっくりしてレオンの体を揺すった。

「ちょっと……レオン、あんた、大丈夫かい!」

 彼女の声に気付いた子供たちが、訓練を中断して二人の周りに集まってきた。

「レオンさん!」

「大変だ、レオンさんが、レオンさんが吐いた!」

「あんたたち、静かにおし!」

 騒ぎ始める子供たちを一喝し、ナターシャはレオンを椅子から下ろした。

 地面の上に彼を横たえて、体が少しでも楽になるような体勢を取らせてやる。

「……ナター……シャ……」

 息も絶え絶えに、ナターシャの名を呼ぶレオン。

 ナターシャはレオンの頭の傍に膝を付いて、答えた。

「何だい、あたしは此処にいるよ!」

「…… …………」

 小刻みに震える唇で何かを言っているが、言葉になっていない。

 そのうち、気力が尽きてしまったようで、レオンは目を閉ざすとそのまま気を失ってしまった。

「…………」

 ナターシャはレオンの体を抱き上げて、立ち上がった。

 周囲の子供たちに、言う。

「……みんな、このことは誰にも言うんじゃないよ。騒ぎになるからね」

「ナターシャさん、レオンさんを何処に連れて行くの?」

「此処に置いといても体は休まらないからね。レオンの家に連れて行くよ。みんなは訓練を続けておくれ」

 ぐったりと弛緩したレオンの体をしっかりと抱いて、彼女は訓練場を出た。

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