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第57話 少女の晴れ舞台

 次の日。アメルはレオンに連れられて冒険者ギルドに姿を現した。

 訓練場に来ていた子供たちは彼女を見て、罵倒することこそなかったが彼女からは距離を置くようになった。

 レオンはそれを気にすることはないとアメルに言い聞かせた。

 その言葉が効果あったのかどうかは分からないが、アメルは子供たちの様子に臆することなく特訓に取り組んだ。

 訓練場の中をランニングし、案山子相手に武器を振るい。

 そして、先日レオンに課せられた課題である仕事クエストに挑戦するための準備を自分で整えた。

 レオンに借りた鞄の中に、ポーションと噴煙玉、折り畳んだ麻袋を詰め込んで。

 いつもの双剣を腰に下げ、彼女はレオンに言った。

「それじゃ、行ってくるね。レオン」

「ああ。僕は此処にいるからね。気を付けて行っておいで」

「あたしが言ったことは覚えてるね? スナイプバードの嘴には注意するんだよ」

「うん、ありがとう。ナターシャさん」

 手を振って、アメルは背筋を伸ばして訓練場から出ていった。

 それを穏やかに見守っていたレオンが、急に顔を顰めて胸に右手を当てる。

 ふぅふぅと間隔の短い呼吸を繰り返す彼を、ナターシャは呆れた顔をして見つめた。

「……あの子に心配を掛けさせないために我慢してたのかい」

「……晴れ舞台に水を差すのは、野暮……だからね」

 はぁ、と溜め息をついてナターシャは腰に手を当てた。

「馬鹿だね。苦しい時は我慢しないでお言いって言ったじゃないか」

「…………」

 自分の左手をちらりと見るレオン。

 袖の陰から赤黒い痣のようなものが覗いているのを見つけて、彼はぐっと息を飲んだ後それを人目から隠すように袖を引っ張ったのだった。


 リンドルの森は、普段と変わらぬ穏やかな様子を見せている。

 かつてアメルが発見された場所ではあるが、彼女が自分の意思で此処に足を運んだのは初めてだった。

 鳥の声が満ちた緑の世界を、彼女は双剣を手に草を掻き分け進んでいく。

 今回の目的であるスナイプバードの巣は、木の上にある。高いところにある小さな巣を下から見つけるのは、葉っぱの中に埋もれた宝物を見つけるようで労力を要した。

 スナイプバードが巣に帰っていく姿でも見かけることができれば見つけやすいのかもしれないが、こう枝葉が茂っている環境だと飛んでいる鳥の姿を見つけるのも一苦労だった。

「……木に登れば、見つかるかな……」

 木の根元からでは分からないと判断したアメルは、双剣を鞘に戻して傍の木を登り始めた。

 途中何度かずり落ちそうになりながらも、何とか足を掛けられるところまで上がり、枝の上に立つ。

 そのまま周囲をぐるりと見回すと、枝に鳥が止まっている様子が見えた。

 あれは、普通の鳥だ。スナイプバードではない。

 もう少し奥まで行ってみよう。

 アメルは木を降りて、更に森の奥を目指して歩を進めた。

 変わり映えのしない森の景色。その中に開けた場所があるのを見つけて、彼女は怪訝に思いながらそこに近付いていく。

 そこは、一面の木が薙ぎ倒された空間だった。

 アメルがレオンに発見された例の場所である。

 嵐が来てもここまで甚大な被害にはなるまい。そんな光景を目の当たりにして、彼女は喉を鳴らした。

 凄い……凶暴な魔物でもいるのかな……

 まさかこれをやったのが自分だとは露ほども思っていない彼女は、恐る恐るその空間に足を踏み入れた。

 そんな彼女の目の前を横切っていく、青色の大きな鳥。

 嘴が槍のようにしゅっと尖っている。翼は大きく、足はピンク色。背中に白い模様があるのが特徴だ。

 その鳥は倒木の上を滑空して、ある場所で降り立った。

 ……いた、あの鳥だ!

 アメルは鳥が降りた方向に視線を固定したまま、懸命に倒木を跨いで鳥のいる方へと近付いていった。

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