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第52話 勇者、怒る

 通りに面した建物が破壊され、煙を上げている。

 逃げ惑う人々と、血を流して倒れている警備隊の兵士たち。

 石畳の道は砕け、そこかしこに瓦礫の山を作っている。

 その中を悠然と歩くのは、真っ黒な二足歩行の物体。

 首と尻尾のない恐竜の体のようなフォルムのボディに、人間の腕ほどの太さがある銃口が備えられている。側面には折り畳まれた翼のような飾り。そして上部には椅子が誂えられ、そこに甲冑の男が座している。

 彼は上機嫌で、目の前を蜘蛛の子を散らすように走り回っている人々を見て高笑いを上げていた。

「ふはははは、アガヴェラの人間よ、我がビブリード帝国が誇る機動装甲の力の前にひれ伏すがいい!」

「エヴァ隊長~」

 彼の後ろを付いて歩く黒い兵器に乗っている鎧の男が、彼に呼びかけた。

「調子に乗って砲撃しまくって……肝心な時に弾切れ起こしたらどうするつもりなんですかぁ~」

「アガヴェラの人間に我らの力を見せつける良い機会なのだ、持っている力を見せつけんで何とする! ローラン!」

 エヴァの機動装甲の銃口が火を噴く。

 行く手に停まっていた無人の馬車が銃弾を浴びて砕け散り、繋がれていた馬が暴れて逃げていった。

 ローランは溜め息をついた。

「……も~、此処に来た目的を忘れてるんじゃないでしょうね。自分たちは娘を取り返しに来てるんですよ~」

「おおっ」

 ぽんと手を打つエヴァ。

「そういえばそうだったな!」

「…………」

 駄目だこの人。

 ローランは脱力した。

「……これは勇者と戦うための大事な切り札なんですから、少しはその辺のことも考えて下さいよ……」

「ふん、いかに勇者といえど我が軍が誇る機動装甲の前には為す術もないだろう! 奴が尻尾を巻いて逃げる様が見えるようだぞ!」

「そう簡単に諦めるわけがないと思いますけどねぇ……」

 がしゃんがしゃんと派手な音を立てながら道なりに進んでいく二人。

 見覚えのある通りに来て、彼らは前進を止めた。

「……確か此処ですよね。前回勇者が現れたのは」

「奴が現れるのを待つのは面倒だ。引き摺り出してやろう!」

 操縦桿を握ってエヴァが声を上げる。

 ローランは天を仰いだ。

「え~、わざわざそんな藪を突っつくような真似をしなくたっていいじゃないですかぁ……」

「さあ、隠れてないで出てくるがいい勇者!」

 言葉と共に放たれた砲弾が、建物の入口横の壁を吹き飛ばす。

 煙が上がる。その中から、煙を突っ切るようにして剣を両手に携えた男が飛び出してきた。

 怒りの表情を浮かべたレオンは、エヴァたちを見据えて低い声で吐き捨てるように言った。

「……またお前たちか……」

「現れたな、勇者! 今日の我々は一味違うぞ!」

 びっ、とレオンに人差し指を突きつけてエヴァは席を立つ。

「この機動装甲は、貴様には絶対に破壊できん! 今日が貴様の命日になるのだ!」

「エヴァ隊長、喧嘩売るんじゃなくて娘のことを忘れないで下さいってばぁ」

「……今日という今日は堪忍袋の緒が切れた。ただで帰れると思うなよ、お前たち」

 レオンは構えを取った。

「この街に攻め入ったことを後悔させてやる!」

「弱い犬ほどよく吠えるものよ! 望み通り、引導を渡してくれるわ!」

 ばっ、と右腕を振り払う仕草をして、エヴァは高々と言った。

「行け、ローラン! 機動装甲の力を見せつけてやるのだ!」

「だから、人にばっかりやらせないでたまには自分から動いて下さいよ~!」

 ローランを乗せた機動装甲が前に出る。

 レオンは奥歯を噛み締めて、剣を振りかぶりながら地を蹴った。

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