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第41話 狩猟の結末

 レオンは目を開けた。

 涙でぼやけた視界に、迫り来るグレイウルフの群れの姿が飛び込んでくる。

 普段なら何てことはない相手だが、身動きが取れない今は脅威以外の何でもない。

 アメルは……

 自分の前に立ち塞がるように、双剣を構えてグレイウルフの群れと向き合っているアメルの後ろ姿を見つける。

 彼女は、戦うつもりなのだ。それが、伝わってきた。

 ……アメル。無茶だ。今すぐ、此処から逃げるんだ。

 呼びかけるが、声にならなかった。震える唇がはくはくと息を吐いただけだった。

 何とか、起き上がって……

 腕に、力を込める。

 しかし、腕は力なく地面を擦るばかりだ。体を起こす力は入らなかった。

 ずぐん、と心臓に激痛が走る。

「……ぐ……ッ!」

 視界が渦を巻く。息苦しさが押し寄せ、辛うじて保たれていた意識を浚っていく。

 ……駄目だ、今、倒れるわけには……

 必死に自分に言い聞かせるレオン。

 だがその思いも空しく、彼は体を丸めてそのまま意識を失ってしまった。


 グレイウルフたちが迫ってくる。

 それに向けて双剣を構えながら、アメルは強張った唇を開いた。

「……来ないで……」

 グレイウルフたちとの距離はもう幾分もない。

 彼女は眉を撓めて、精一杯の声で叫んだ。

「来ないで!」


 ぎゃいん!


 グレイウルフの一匹が、悲鳴を上げてボールのように地面の上を跳ね転がっていく。

 周囲のグレイウルフたちがびくっとして足を止めた。

 転がっていったグレイウルフは、腹から血を流して事切れていた。よく見ると腹は爆砕したように目茶苦茶になっており、腸がはみ出て覗いている。

 ふーっふーっと息を荒げながら、アメルはグレイウルフたちを睨んだ。

「帰って! こっちに来ないで!」

 ぶわっ、と彼女を中心として力の塊が膨れ上がる!

 迸る雷光のように宙を駆け抜けた彼女の力は、グレイウルフたちを残らず吹き飛ばした。

 首が吹き飛び、足がもげたグレイウルフの体が宙を舞う。血煙が舞って、辺りを色濃く化粧した。

「……!」

 アメルは目を見開いた。

 無意識のうちに発動した力がグレイウルフを残らず引き裂いたのを目の当たりにして、自分の力に助けられたことを理解したのだ。

 ……私たち、助かった……?

 ……そうだ、レオン!

 彼女はばっとレオンの方に振り向く。

 レオンは、顔を顰めた状態のままぴくりともしなかった。

「レオン!」

 双剣を鞘に収めて、レオンの傍に膝をつく。

 肩を掴んで揺すってみるが、反応はない。

 彼女は、彼が心臓の痛みに負けて気絶してしまったことを悟った。

 ……どうしよう……

 腕を肩に回して持ち上げてみようとするが、全身が弛緩した成人男性の重さは少女にとっては難のある重さだ。持ち上げることは、彼女にはできそうになかった。

 とはいえ、レオンがいつ目覚めるかも分からない状況下で、彼をこのまま此処に転がしておくわけにもいかない。

 アメルはこの状況を何とかできないものかと、必死に考えを巡らせた。

 誰かが傍を通りかからないものかと、縋る思いで辺りを見回す。

 そんな彼女の目に飛び込んできたのは──狩猟帰りだろうか、巨大な猪の魔物を担いで歩く男たちの小さな姿だった。

 人がいた!

 アメルは彼らに助けを請おうと、その場を全速力で駆け出した。

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