第39話 初めての狩猟
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自分に迫ってくるものの気配を察知したのか、ゼブララプトルが振り向く。
その時には、アメルはゼブララプトルのすぐ後ろにいた。
「やあっ!」
ゼブララプトルの背中を狙って右の双剣を一閃させる。
双剣の刃は縞模様が見事な皮膚を切り裂き、一筋の赤い線を付けた。
ギャアアアア、とゼブララプトルが吠え声を上げた。
素早い動きでくるりと反転し、口を大きく開いてアメルに咬み付こうと迫ってくる!
慌てて身を引くアメル。彼女が今し方立っていた位置に、ゼブララプトルの口ががちんと音を立てて咬み付いた。
「魔物を攻撃する時は急所である顔や首を狙うんだ! 刀身が小さい双剣だと、胴を狙っても致命傷にはならない!」
レオンがアメルに呼びかける。
アメルはゼブララプトルを見据えながら、ふーっと息を大きく吐いた。
大丈夫……怖くない。私だって、やればできる!
左右の双剣を構えて、真っ向からゼブララプトルに向かっていく。
喉を狙って、十字に双剣を振るう。刃はゼブララプトルの長い首を深く斬りつけて、纏った血を宙に飛ばした。
「グェッ、ギェ──ッ!」
ゼブララプトルが身を捩った。
首から血を流しながら、発達した後ろ足で地面を勢い良く蹴る!
アメルと同じ大きさの体が宙を舞う。足の爪で相手を抉ろうとするかのように、後ろ足を前へと突き出しながら、アメルに圧し掛かってきた!
「きゃ……」
咄嗟に顔を庇うアメル。
彼女はゼブララプトルに腹を踏みつけられ、仰向けに倒れた。
爪が腹に食い込む。刺さってはいないが、ちょっとでも足に力を入れられたらそうならない保障はない。
ゼブララプトルはアメルの顔を見下ろして吠えている。
並んだ牙の間から真っ赤な舌が覗き、涎が垂れてアメルの服を汚した。
「うう……!」
アメルは何とかゼブララプトルの足の下から抜け出そうと腹を踏みつけている足を掴む。
しかし、足はびくともしない。
ゼブララプトルがアメルの顔に開いた口を近付けてくる。
咬まれる!
アメルは咄嗟に腰のポケットに手を突っ込んで、噴煙玉を取り出した。
親指の爪でがりっと表面を引っ掻いて、それを迷わずゼブララプトルの口に突っ込んだ!
ぶしゅーっ、と勢い良く煙が噴き出す。
何か変なものを口に入れられた、と思ったのだろう。ゼブララプトルは奇声を上げて暴れ始めた。
その隙に、アメルはゼブララプトルの足を払い除けて地面を転がった。
立ち上がり、双剣を縦に構えてゼブララプトルに突進する!
どがっ、と双剣の刃がゼブララプトルの胸を貫く。血がばっと飛び散り、ゼブララプトルは悲鳴を上げた。
そして、崩れ落ちるようにその場へと倒れていく。
足の先がびくんびくんと震えている。ぐるると唸り声を喉の奥から漏らして、何とか起き上がろうと首を持ち上げようとしている。
しかし、それは叶わなかったようだ。
次第に動きは小さくなっていき、漏れていた声が消えていく。
持ち上げようとしていた首が、力なく地に横たわる。
そして、遂に動かなくなった。
「…………」
はあはあと肩全体で息をしながら、アメルはその場にぺたんと座った。
それを見ていたレオンが、にこりと微笑んだ。
「……討伐成功だ。よくできたね、アメル」
「……私……勝ったの……?」
「ああ」
アメルに手を差し伸べながら、頷く。
「初めてにしては上出来だ。花マルをあげるよ」
「…………」
レオンの手に掴まり、アメルは立ち上がる。
自分の力で、魔物を倒した。
その実感が腹の底から湧き上がってきて、彼女は思わず笑顔になった。
「……嬉しい……」
その笑顔は、太陽のように明るく輝いていた。




