表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/82

第31話 戦車VS勇者

 戦車の高さは三メートルほどある。頂に乗っているエヴァには、どう頑張っても手が届かない。

 大剣でエヴァに攻撃を仕掛けるには、戦車の上によじ登るか何とかして彼を戦車の上から引き摺り下ろすかしなければならない。

 しかし、彼を何とかしたところで戦車が無力化するわけではない。戦車を操縦する人間は戦車の中にいるのだ。

 幸い、操縦席には窓がある。そこから中の様子を伺うことができる。

 攻撃を仕掛けることも、窓を利用すればできなくはないだろう。

 そのためには──利用できるものは、利用する!

 レオンは砕けた石畳に駆け寄って、そこに転がっている石畳の欠片を手に取った。

 握り拳大ほどの大きさのある石を、操縦席めがけて投げつける!

 がんっ、と音がして、石は見事に窓の中へと飛び込んだ。

「ひっ!」

 身を強張らせて、顔のすぐ横を掠めていった石を横目で見やるローラン。

 後少し、石が右側を飛んでいたら……

 背筋に冷や汗が浮かんだ。

「ローラン! 攻撃の手を休めるな!」

「もう、他人事だと思って!」

 お返し、と言わんばかりに砲弾の発射トリガーを引く。

 しかし、砲弾の飛ぶ先にレオンの姿はない。

 いつの間にか、二人の視界からレオンの姿は消えていた。

「……ぬ。何処へ行った」

「此処だ!」

 すぐ間近でレオンの声がする。

 振り向くエヴァ。そこに、大剣を振りかぶるレオンの姿があった。

 あの一瞬で戦車の後方に回ったレオンは、側面に付いていた梯子を登って戦車の上に移動したのだ。

「ぬおおお!?」

 振り下ろされる大剣を、エヴァは間一髪で避けた。

 腰の剣を抜き、それを構えながら、笑う。

「あくまで私を狙うか! いい心がけだ、相手をしてやろう!」

「生憎だが、僕はお前に興味はない!」

 振り下ろした大剣を持つ腕に捻りを加えるレオン。

 振り下ろした体勢をそのままに、彼は大剣を斜めに振り上げた!

 大剣の刃がエヴァの顎を強打する。がいんと音がして、エヴァは頭に食らった衝撃によろけた。

「ふん、やはり棒切れは棒切れだな。そんなものでこの私を何とかできると思って──」

「甘く見るな!」

 レオンは体勢を低くして足払いを仕掛けた。

 体勢を崩していたこともあって足下への注意が疎かになっていたエヴァは、まともに足を掬われて後方にひっくり返った。

 その先に、床はない。

 エヴァは、戦車の上から滑り落ちた。

「な、何だとぉぉぉ!?」

 がしゃん、と鋼が地面に激突する音が響く。

 ああもう、とローランは頭を抱えた。

「だから中に入るように言ったんじゃないですかぁ!」

「人の心配をしている場合か?」

「っ!」

 後方から、声。弾かれたようにローランが振り向く。

 操縦席に踏み込んできたレオンは、大剣を顔の横で構えた。

「戦車を放棄しろ。さもなくばこの場で叩き潰す!」

「うっ、うわぁぁ!」

 咄嗟に肩に掛けていた銃を構えて乱射するローラン。

 放たれた銃弾は、レオンの頬や肩を掠めていった。

 レオンは深く息を吸って、大剣を突き出す!


 ──その動きが、後少しで相手に届くといったところで、止まる。


 左手で胸をぎゅっと掴んで、レオンは表情を歪めた。

「……く、こんな、時に……!」

 大剣を持つ手がぷるぷると震える。

 ローランは急に動きを止めたレオンの様子を、目を丸くして見つめた。

「……ぐ……!」

 レオンは呻いて、奥歯を食いしばる。

 力の抜けた右手から──大剣が、落ちる。

 それはがつんと音を立てて、操縦席の間に転がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ