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第27話 頼もしい相棒

 ナターシャは世界を回る冒険者だった。

 魔族との戦争の後、レオンが冒険者を引退してからも一人で魔物狩りに勤しむ日々を過ごしていた。

 その日その日の仕事を各街の冒険者ギルドから請け負い、貰った報酬で生計を立てていた。

 やがて、各国で領地争いが原因の戦争が起き、世界中が再び混乱し始めて。

 それでも、彼女は各地を旅して回ることをやめはしなかった。

 冒険者をやめたレオンの分も自分が冒険者として生き続ける。そう主張するかのように。

 そして、二年が過ぎ。

 レオンが住んでいるというリンドルに訪れた彼女は、久々にレオンのことを懐かしく思って冒険者ギルドの門を叩いた。

 久々に彼女の前に姿を現したレオンは、彼女から見て少し痩せていた。

 レオンは冒険者生活をやめたのだから、それは別に不思議なことではないのだが。

 何か、以前のレオンとは違う。彼女は、薄々とそのように感じ取っていた。

「レオン……毎日ちゃんと食べてるのかい? いくら冒険者じゃなくなったからといっても、不摂生な暮らしはするもんじゃないよ」

「食事はちゃんとしてるよ。以前と違って運動量は落ちたから、前よりも衰えてるように見えるだけさ」

 レオンがナターシャに話して聞かせたのは、冒険者ギルドで指導教官として働いている話が主だった。

 毎日子供たちに囲まれて、戦技や魔物の話を聞かせる暮らしを送っていること。

 冒険者じゃなくなっても、人のために働ける場所があるのは有難いことだと思っていること。

 リンドルで、国軍が傭兵として冒険者の人手を募集していることも話した。

 遂に本格的にビブリードとの戦争が始まるのだと杞憂していることも、聞かせた。

 ──呪いの話は、しなかった。

 そんな話をしたところでナターシャを無駄に困らせるだけだ。そう思ったからだ。

 余計なことは知らせないに限るのだ。彼女のためにも。

「君は、すぐに旅に出るのかい?」

 レオンが問いかけると、ナターシャはうーんと首を傾けた後、答えた。

「そんなに急ぎの旅をしてるわけじゃないからねぇ……旅の資金にも今のところは余裕があるし」

 ぱ、と明るい顔をして、思いついたように手をぽんと叩いた。

「そうだ。しばらくはあんたの手伝いをするよ。此処で、子供たちの戦技の特訓を手伝おうじゃないか」

「それは有難い話だけど……いいのかい?」

 現状、レオンはアメルにつきっきりになっていて、他の子供たちに対する応対が疎かになりがちだった。

 指導教官として、その状態はあまり宜しくないと言える。

 ナターシャはぱたぱたと手を振った。

「いいっていいって。あんた一人で大勢の子供たちの面倒を見るのは大変だろうしね。あたしにできることなら力を貸すよ」

「何だかすまないね」

「そこは『ありがとう』って言うんだよ」

「ありがとう」

「よし」

 ナターシャはレオンの背中を叩いて、言った。

「そうと決まったら、早速子供たちにあたしの紹介をしておくれ」

「ああ」

 レオンは深呼吸をして、訓練場中に響き渡るほどの声で中にいる子供たちに呼びかけた。

「全員、集合!」

「なぁに、レオンさん」

「はーい」

 訓練を中断した子供たちが、小走りでレオンの元に集まってきた。

 アメルも怪訝に思いながら訓練の手を止めて、子供たちに紛れてレオンの傍に行った。

 皆、レオンの隣に立っているナターシャを見て目を輝かせている。

「すっげぇ、赤竜の鎧だ」

「竜って倒すのが難しいんだろ? 竜の武具は一流の冒険者じゃなきゃ使えないんだって兄ちゃんが言ってた」

「こらこら、お喋りしていいとは言ってないよ」

 盛り上がる子供たちを嗜めて、レオンはナターシャを紹介した。

「こちら、冒険者のナターシャさん。今日からしばらくの間、君たちの訓練を見てくれることになった。僕と違って現役の冒険者だから、ためになる話が色々聞けると思う。何か訊きたいことがあったら遠慮なく彼女に訊いてほしい」

『はい!』

「宜しくね」

 気さくに片手を挙げて挨拶するナターシャ。

 彼女と視線がぶつかったアメルは、背筋を伸ばして彼女の姿に注目した。

 あれが、女の人の冒険者なんだ……格好いい。

 アメルにとって、ナターシャの姿は眩しくて、まるで自分のお手本のようだった。

 私もああなれるように、頑張ろう。

 自分の掌を見つめて、よしっと頷いたのだった。

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