第22話 仕事を終えて
「大丈夫だった? 怪我はない?」
剣を鞘に収めて、レオンはアメルの全身を見た。
アメルの服は、これまでに森の中を歩き回ったせいで土汚れや草の汁が付いてはいたが、血や傷の類は付いていない。
どうやら彼女は無事らしいという事実に安堵して、彼は微笑んだ。
「良かった。あの男たちは君が狙いだったみたいだから……何かされたんじゃないかと思ったよ」
「ううん、大丈夫……ありがとう、助けてくれて」
アメルはレオンに礼を言って、ふと、視線を彼から反らした。
彼女が見ている先には、先程の騒ぎの中で折られた木がある。
アメルの視線を辿って、レオンもそちらに目を向けた。
「……折れてるね」
「うん」
「ひょっとして……君がこれをやったの?」
木の太さは、大人が両腕を回して指先が触れるかどうか、くらいある。
これを倒そうとしたら、普通はそれなりの労力を要するはずだ。
それが、あの一瞬の間にこうなった。
……何があったんだ、僕がちょっと目を離してる間に……
どう考えても、アメルの細腕ではこの木を倒すほどの力は出せない。
……あの男たちがアメルを連れて行きたがってる理由に関係しているのか?
アメルの顔に注目すると、アメルは顔を伏せた。
「……分からない……連れて行かれそうになった時に、嫌って言ったの……そしたら、急に木が爆発して……」
「……そっか」
アメルにも分からないらしい。
となると、この現象に関してはこれ以上知れそうなことはないな。
まあ、今気にする必要はないだろう、とレオンはこの件に関しては考えるのをやめた。
今はとにかく、無事にリンドルまで帰ることの方が大事だ。
レオンはその辺に放り投げていた麻袋を拾って、肩に担いだ。
「じゃあ、街に帰ろうか。冒険者ギルドにこれを届けないとね」
こくり、と頷くアメル。
レオンはにこりと微笑むと、元来た道を引き返し始めた。
こうして、一騒動あったが無事に仕事を終えた二人は、リンドルの街へと帰りついた。
ハニー・ホーネットの巣を冒険者ギルドに納品し、報酬として金貨一枚を受け取ったアメルは初めての報酬に目を輝かせていた。
仕事で稼いだお金は装備を整えたり旅に必要な道具を買うために使うんだよ、というレオンの教えを守り、彼女は報酬をいつか一人前の冒険者になった時に買い揃える武具のために使おうと、この場は貯金することに決めた。
初めての仕事体験は、彼女にとって色々なことを教える勉強の場になったようである。




