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35.感情の中の様々な感情

ちょっと分かりにくい説明が多いかもしれませんが、めんどくせぇって思ったら飛ばしつつ読んでもらえたらと思います。

いつか分かりやすく書き直せると良いんですが……;

 昼食を済ませ、アトリエに戻ってきた私たちは早速屋敷の絵の仕上げに取りかかった。


 食事をとりながらワーナさんに教えてもらった、想いを込める魔法のコツを意識しながら、一筆一筆に魔力を通していく。


 想いを込める魔法は、自分の想いを魔力に押し込み、絵の具へと定着させて行く事で為すことのできる技術なのだが、この込める想いによって魔力にも色が付いてしまう。

 喜びの感情などは黄色やオレンジの暖色系、悲しみなら青や紫などの寒色系といった具合に、感情に左右されてしまうのだと言う。

 それによって変色した魔力は、絵の具の色にまで侵食してしまうため、一色塗るたびにその色に合わせた感情を込めていかなければいけない。

 しかしワーナさんが言うには、この魔力の色の変化をコントロールするコツがあり、それをマスターできれば、悲しみの感情からでも暖色系の変化に調整来たりするんだそうだ。


 試しに何度かやってみたが、まだ一度も成功していないのだけれど……。


「本当に出来るんですか? 全く上手くいかないんですけど……」


 空に青色を塗る祭に、思い出の中の暖かさを表現したかった私は、そのイメージを感情に落とし込み描いて見たのだが、赤い夕焼け空になってしまっていた。


「ああ、コツさえ掴んで仕舞えば、そう難しくはないと思うのだがな」


 と、ワーナさんは私から筆を取り、塗り残してあった箇所に澄み切った青を塗る加えていった。

 その描かれた青い空を見ていると、驚くことに感情がダイレクトに胸を打ち付けてくる。


 その空からは、陽の光の柔らかな暖かさと、それがもう今ではないと言う少しの寂しさが、感じ取れた。


「言葉では分かりにくいのだよ。だが、実際に見て感じて、少しは何かがわかって来たのではないかい?」


 そう言って筆を返してくれる。

 言われた通り、私は何かがわかりかけていた。何かが閃きそうで、しかしもどかしくもハッキリしない。


 コツについて教えてくれた時のことを、再び思い出しつつも再度チャレンジして見る。


 コツについてワーナさんは確か、こう言っていた。


「感情というのはどんなに言葉で表そうと、それに縛られるものでは無いのだよ。悲しいと言ったところで、その悲しみは何通りもあり、それこそ星の数ほど様々であるのだと思うのだよ。だからなのだがね? 胸温まる悲しみもあると思わないかい? 怒り狂うほどの悲しみや、ほんのり優しい悲しみとか、悲しみという言葉の中にも様々なものがあって、それは悲しみの色だって赤だったり黄色だったりと、様々な色をした物があるという事になるのでは無いのかい?」


 そう言っていたのに対して「つまりはどういうことですか?」とも聞いたが「それを理解することがコツなのさ」と、思い返してもよくわからないまとめ方をされただけだった。


「んー。なんかわかりそうなんですけど……分かんないんですよね。ワーナさんの言っていた、同じ感情にもいろんな物があるって言うのは分かるんですけど……」


「それが分かっているのなら、ミズカにももう魔力色の調整が出来るはずなのだよ。と言うか、ミズカは既に一度出来ているのだがね」


 なんでも無いことのようにワーナさんが言うが、聞き逃せない事が含まれていた。


「私がもう出来ている?? 全然覚えとか無いんですけど??」


「ああ、そういえば描いていた時のことは覚えていないと前にも言っていたな」


 なんのことなのか分からず私は首をかしげるばかりだ。


「ほら。サガナ姫が倒れていた森を描いたあの絵なのだよ」


 そう言われても、私にはピンと来ない。

 あの絵のことは思い出せるが、どこに想いが込められた魔法があったのだろう??


「気づいていないのかい?」


 私の様子にワーナさんが意外そうにしている。


「はい……全然思い当たらないんですけど……」


「君はあれだね。鋭いんだか、鈍感なんだか、よくわからない生き物なのだね。森であの絵が突然光り出していただろう?」


「あ、そういえばそうでしたね。あの後のことですっかり忘れてしまってましたよ」


「あの光には二つの魔法が込められていたのだと、私は思うのだよ」


「二つですか?」


「そうだ。一つは道しるべにも使ったトラップの魔法。トリガーがよくわからないが、何かに反応して光り出したことは間違いがないからね。それと二つ目が感情の魔法という訳なのだよ」


「でも、ワーナさんの描いたこの空のように、グワッと感情を動かされる感じはしなかったですよ?」


「それは感情が流れ出すイメージを与えていなかった為だろう。無意識に描いていたようだからね、きっと感情を込めることはしていても、それを外部に放つためのイメージはしていなかったのだよ」


「そもそも、その感情が流れ出すイメージとかってなんですか? なんかこの魔法にとって、重要そうな事に思えるんですけど……まだ教えてもらってないですよね……」


 それこそコツであり、そのイメージがなかったから私は上手くできなかったのではないか? という疑惑が芽生え、教え忘れ? うっかり? と言いたげな目をワーナさんに向ける。


「うむ、それは最期の仕上げに行う行程だったからな。教えるのは後回しにしていたのだよ」


「あ、そうだったんですか?」


「そうなのだよ。だからそんな怪しげに見てくるのはやめたまえ。ちょうど良いからその辺りも今教えてしまうから」


 本当にうっかり教え忘れたとかじゃないらしい。


「まず今回の屋敷の絵の依頼には2種類の魔法技術を使用する必要があるのだよ」

「一つは今やっている想いを込める魔法“シンク”」

「二つ目は最期の仕上げに行うもので、想いを呼び起こす魔法“メニファー”」

「このメニファーはさっきも話した、想いを外に流すイメージがコツなのだよ」


「ふむふむ、でもさっきワーナさんが描いた空は2つも魔法を使っているようには見えなかったですけど」


「あれは、シンクとメニファーを同時に使った応用技術なのだよ。実戦ではいちいち分けて使っていられないからね」


 実戦てなんだろうとは思ったけれど、なんか聞くのも怖い気がしてやめておいた。


「まあ、魔法を流すイメージってのが、メニファーの魔法だと言うことはわかりました。つまり私の描いた森の絵にはトラップとシンクの二つの魔法が込められていたと言う事ですか?」


「そう言う事だね。まあ正確にはシンクではなくシンクに限りなく近い、シンクもどきの様な魔法に思えたのだよ」


 そこからワーナさんの見解やら魔法談義が始まってしまったが、長かったので割愛する。


 簡単にまとめると、私が無意識に使ったシンクは感情を込めるという部分が曖昧で、漏れ出した感情が込められていたトラップの魔力に反応し赤く光りを放つという形で具現化したのではないかという事だった。


 まとめてみても、私にはよく分からない原理の話で相槌を打つのがやっとだったのだけれど。


「まあ、話を戻そう。だいぶ脱線してしまったからな。詰まる所その森の絵に描かれていた赤い実には、シンクもどきの魔法が込められていたのだが、込められた感情は憎悪や憎しみなどのもので、本来なら紫や黒色になっているはずなのだよ」


「でも、実際は赤く着色されていた。つまり森の絵を描いていた時、私は魔法色のコントロールが出来ていた。という事ですか……なんだかいっぺんに色々出てきて混乱してきちゃいましたよ」


 むーと唸りを上げるていると、


「一度順序立てて整理して見ると良いのだよ。魔法とは学問であり、哲学であるからね。考える事が大事なのだよ」


 とワーナさんがアドバイスしてくれる。

 その言葉を素直に聞き入れ、頭の中を整理し少しまとめ直してみよう。



 今私が出来ずに困っているのが、想いによる魔力の色の変化を調整するという事。

 つまり魔法色のコントロールという事になる。


 この魔法色をコントロールするコツが、一つの感情をとってもその中には様々な感情があるという事を、理解する事がコツだと言う。

 これ自体は理解できているはずなのだが、結果に現れていないことから、どこか検討間違いがあるのかもしれない。


 しかし、無意識とはいえ、以前に私は魔法色のコントロールができていた様でもある。

 その時はワーナさんの言うコツ、感情の中に様々な感情がある事を理解していたという事?


 森の絵を描いた時私は何を想い描いていたのだろう?


 私は筆を握り直し、あの森の絵を再び描くとしたらどう表現するか想像して見る。


 ワーナさんはあの赤い色には憎悪や憎しみの感情が込められていたと言ったけれど、本当にそれだけだろうか?


 いや、そんなはずはない。

 私があれを描くのであれば、込める感情は--

 。


 その時私はサガナ姫の事を思い出していた。

 憎しみ、憎悪、嫌悪、そう言った負の感情を瞳に宿し、しかし決意した鋭い瞳を。


 私があの絵に込める感情は、きっとサガナ姫の感情だった筈だ!

 彼女の瞳の様に、憎しみと憎悪が満ち、それでいて決意に溢れた強い意志。それは怒りと悲しみだったのではないか?


 夢の中で垣間見た彼女に、私はそう感じていたのだから。


 そしてそれを思い出す事で気づいた。


 憎しみや憎悪の感情の中には怒りや悲しみの感情があったのだと。

 感情の中にある様々な感情。それを私は細かいニュアンスの差であったり、感じ方だと考えていたが、そうではない。

 いや、そうでもあるが、それだけでは無かった。

 一つの感情があったとして、その中にも更に他の感情が混ざっていたりして、それはきっと“光”なのではないだろうか。


 光を構成する色には、三色の色がある。

 赤、緑、青である。ザックリとした言い方になるが、これらが重なり合うと白い光となる。

 色を感情に置き換えると、白い光の感情の中には赤い感情と緑の感情と青い感情があると言えるのではないだろうか。


 つまり、RGB!

 ペイントソフトで色を作るときの仕組みだ。

 そう考えれば、私が上手く魔法色をコントロール出来なかった事も理解できた。


 私は屋敷の絵を描くのに、オレンジ色の感情しか込めていなかった。その為魔力もその色でしか現れずにいたというわけである。


 しかし、この中に他の感情(色)もRGBにのっとって用意してやればどうなるのか。


 それは、今私の握った筆先に結果として現れていた。


「おお? 掴んだ様だね。コツを」


 ニヤッとワーナさんが口角を上げている。


「ええ、気づいて仕舞えば単純な事だったのかもしれないです」


 そう言う私の持つ筆先には、青い魔力光が灯っていた。


 実際にそれで塗ってみて色を確認し、調整し、また塗ってみて、と繰り返していく。


 私の頭の中では、慣れ親しんだペイントソフトの色を設定するツールが浮かんでいた。

 四角形の中に白から黒に向かって、虹色のグラデーションが付いて。

 その下にRGBを表す、赤(R)のバーと緑(G)のバー、青(B)のバーが伸びている。

 このRGBのバーを動かすと、その組み合わせにそった色に合わせて、四角形の中にポインタが置かれる仕組みなのだが、ペイントツールを触った事がなければ、イメージしづらいかも知れない。


 このツールを私は頭の中で構築し直し、色と感情を同期させていく。

 これによって、脳内だけで出力したい色と感情の組み合わせを効率的に選ぶ事ができる。


 少々分かりづらいかも知れないが、青い空を暖色系の感情を込めて描きたい場合、赤(R)の感情と緑(G)の感情を少しと、青(B)の感情を多く設定すれば、出力される色は青系の色になると言う事だ。

 これは実際の感情の強さに関係はしない。

 感情の強さはあくまでも、込められる感情でしか無いのでこのRGBの強弱までは影響しない様であった。


 具体的には、

 赤(R)を155、

 緑(G)を205、

 青(B)を225

 ぐらいの割合で出力すると水色になる。

 この数値は1〜255まであり、感情ごとにこれらの数値が変動すると考えてもらいたい。

 試してみた感じ、単純な感情で、

 怒りが赤255、

 悲しみが青200、

 と言った形で数値化ができ、激しいや静かななどと言った感情のニュアンスで数値も上下する。

 このニュアンスとは関係なく、1番強くイメージした感情が表に出せる感情になる。

 極端な話、このコツを覚えた時点でどのような感情でも、好きな色としてコントロール出来るようになったのだと思ってもらえればいい。


 実際は結構難しんだけどね、これが。


 そんなこんなで、私は繰り返し繰り返し、一色ずつ試していきながら、屋敷の絵に色彩と感情を詰めていった。


 それは、翌日の昼過ぎにメイガスがある人を連れ、訪ねてくるまでノンストップで続いたのだった。

RGBのくだりなど、もっと分かりやすく説明出来れば良かったのですが、中々難しくて;

作者も混乱しながらなんとか書いた次第で;

取り敢えず、ミズカがコツを掴んだんだなーって言うことが何となくわかってもらえたならそれで十分かと思います。


この拙い説明で、理解してくれた人の為に一応補足として……。

ミズカも流石に全ての色をRGBの数値で覚えていたりと言うことはありません。

ただ経験則で、大体この色ならこのぐらいの数値だろうと言う、大まかな感覚で当てはめているだけです。

その為繰り返し塗ってみて調整してと言う作業をしていたと言うわけです。


果たしてこの説明で理解していただける読解力が半端ない人はいたのでしょうか;

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