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30.夢の中の森

ついに30話です!

最近はなかなか書く時間も取れず、投稿間隔が離れがちですが、まだまだ続けて行きますので、よろしくお願いします。


というか元々書きたいと持っていたところがまだまだ書けていないので、早くそこまで進めたいですね;


今回は連続で投稿する予定ですので、短めにしてあります。

今書いてるので、投稿出来たらですが;

 お腹一杯でホクホクした気持ちのまま、私たちはお店を後にした。


 メイガスは仕事が残っているからと、ギルドへ戻っていき、私とワーナさんはアトリエへ帰った。


 アトリエに着いてからは、今日打ち合わせで描いたスッケチを元に、ワーナさんにラフを進めてもらった。

 私のダメ出しにもめげず、1点ずつ丁寧に仕上げていってくれている。


 私は宣言していた通りに、屋敷のラフに着手していた。

 構想はすでにある程度出来ていたので、淀みなく描いていき、気づけばワーナさんは力尽き床で寝てしまっていた。


 描き上げたラフはまだ納得のいかない箇所もあったが、それを直すのはまた明日にして、私も寝ることとする。


 アトリエに置いてあった毛布をワーナさんにかけてやり、私もその中に潜り込む。


 なんだか美術部の合宿の様だと思い、少しワクワクした。


 しかし今日だけでそれなりに気疲れしていたのか、すぐに眠りについた。



 ◆



 森でじっと身動きせず、ただ石のように隠れていることにも、もう限界がやって来ていることに“私“は気づき始めていた。


 空腹は我慢できるが、腹の虫は言うことなど聞いてくれない。ギュルルギュルルと小うるさく主張を始めてしまっている。


 これでは隠れていても、誰かが近くにくれば居場所がバレてしまう。

 それならばと、この小うるさい虫を黙らせる為”私“は食べられるものを探す為に散策を行うこととした。




 森には、いくらでも食べられるものがあったのだろう。

 しかし、サバイバルじみた事などした事がない私には、どれが無害でどれが有毒かなど区別がつくはずもない。


 宮廷の食事を思い出し、なんと幸せに包まれていたのかと、今では意味もない事が頭をよぎる。しかし、それを振り払い散策を続けていく。


 動物たちを狩る技術などは当然なく、かといって食べられる草など見分けもつかない。

 しかし果物があれば、果物であれば大丈夫なはずだと自分に言い聞かせ、一縷の望みをかけそれだけに狙いを定め探していた。


「あぁ……」


 それを見つけた時、思わず吐息が漏れてしまった。

 雑草が生い茂る中、赤い実を付けたものを見つけたのだ。


 これは似たものを食べた事がある。

 もっと瑞々しいものであったが、これもそれと同じ品種であろう。

 確かグランベリーと言った筈だ。

 プチプチとした食感をまだ思い出せる。


 それと比べれば貧相だろうが、見渡せばまだいくつもこの辺りに生えていた。

 これだけあれば、ある程度は腹の虫もおとなしくなってくれるだろう。

 そう思い、卑しくも貪るようにその果実を口に入れていった。


 こんな筈ではなかった--。

 こんな事をしなければ行けないほどの事など何もしていないはずだった。


 果実の渋みと酸味に涙が溢れる。


 それでも腹を満たす為手は果実に伸びていく。


 口に入れるたび、虚しく、ひもじい思いを積み重ね。

 それでも--。


 それでも生きてやり遂げなければならない事がある--。



 ◇



 なにかを決意し、そして私は目覚めた。


 なにを決意したのかなど、起きてしまえば忘れてしまったけれど、胸に焦燥感だけが残っていた。


 なんとなしにかろうじて覚えていた木々、きっとどこかの森だろう、その風景だけ近くのキャンパスに書き残すこととした。


 鬱蒼とし、薄暗く、それなのに赤々と燃え上がるような闘志がそこにある。

 そんな絵を--。




「--。--ズカ! ミズカ! 聞いているのかね!?」


 ワーナさんの呼びかけにハッとして、筆が止まった。

 というかなにしていたんだっけ?


「どうしたのだ? 鬼気迫るという様子で何か描いていたようだが……」


 そう言ってワーナさんは私が向き合っていたキャンパスを覗き込む。


「え?」


 私も自分がなにをしていたのかよく分からず。目の前のキャンパスも見る。


 そしてゾクゾクとしたものがこみ上げて来た--。


 これは私が描いたのだろうか?

 興奮とも違う何か、感動と言えばそうなのだろう……。確かに、私の心は動かされたのだから。


 自分で描いた覚えはない……しかしこの感覚には覚えがあった。


 ある時、1人意味もなく絵を描き続けていた時だった。

 依頼でもなく、何かこれといったものを描いていたわけでもなく。

 ただただ、1人深酔いしながら、酒瓶片手に取り留めもなく描いていた時が。


 その時描いた物を、翌日起きてから見直した時の感情に近いと思った。


 綺麗でもなく、構図もめちゃくちゃ。

 そもそもなにを描いてあるのかすら、自分以外には分からないだろう。

 そんな絵であったが、私自身にはそれがとてつもなく衝撃的なものに映った。

 私の願望、感情、そういったものそのものを表しているのがわかったから。


 この森の絵も同じなのだろう。

 お酒など飲んでいないけれど、きっと同じものなのだ。

 そう私の直感が言っている。


「これは……なんなのだい?」


「なんなんでしょうか? 寝ぼけて描いていたみたいです」


 この絵を見たときの衝撃を感情を理解できる他人などいないだろう。

 だから、ワーナさんにも適当に濁した返事を返した。


「きっと夢で見たものを夢心地で描いちゃってたんですかねー」


「ふーん。また奇怪なことをするものだね君は。まあ、それはいい。起きているのなら朝食はどうするかね。一緒に屋敷で食べるかい?」


 ワーナさんの問いに私は一も二も無く飛びつく。


「はい! ぜひ! ついでにシャワーも入って来ましょうよ。昨日はそのまま寝ちゃいましたし」


 普段は2~3日お風呂に入れなくとも気にしないたちなのだが、なぜか今は身体中が泥まみれで、何日もお風呂に入っていなかったような気がしてしまい、シャワーを浴びたい欲求が抑えられないでいた。


「ああ、そうだな。朝食を用意してもらっている間に、はいってしまおうか」


 そういうワーナさんに続き、アトリエを出た。


 私が描いていたらしい森の絵は、そっと痛まないようにアトリエの隅に隠し置いて--。

感想など頂けたら嬉しいです!

宜しくお願いします!


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