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19.事件の終わり

 その後メイガスは色々動き回ったようだ。

 一時的にギルドは慌ただしくなり、職員は各所を駆け回り、依頼を確認しにきた人たちは何が起きているのかわからず、呆然とする羽目となっていた。


 メイガスの働きかけによって、失踪事件の捜査は人身売買に対する捜査に変わり継続されることになった。

 その代わりに、この捜査で犯人達を捕まえられなければ、それなりの罰則を課せられ、最悪辞職と言うこともありえるらしかった。


 しかし、メイガスはそんなこと気にもとめず、躍進を続けている。

 各所に指示を飛ばし、すでに犯人たちへの包囲網は、構築され直したらしい。


 私が真相についての推理を語ったのが、だいたい早朝の6時ごろだとすれば、まだ6時間ほどしか経っていないだろう。

 結局メイガスも諦めきれずにくすぶっていたと言うことなのだろうか。

 自分にはなにもできないと言っていたが、どうにか国境各所の警戒網が解かれないよう、手を回していたのだと思う。

 正確には警戒解除の連絡を遅らせていたと言うところなんじゃないかと推測する。

 そうでなければ、この短時間に警戒の再構築を行うのは不可能だ。


 犯人たちへの警戒網を完了した後、メイガスは宿にいるサイーダの失踪者、売られた子供達のところに、事情聴取をしに行くとの事だったので、私も連れて言ってもらうことにした。


 ワーナさんとの待ち合わせもあったが、「昨日待たされた分、今日はワーナさんが待てばいいのよ(本心)」と、私の中の小悪魔の囁きに従うことにしたのだ。





 今日は雲一つない、日差しがさすように強い日であった。

 宿に護衛のギルド職員(元々戦闘職系についていた面々)を引き連れメイガスと私は、おばちゃんと相対している


 きっと、なにもしないでいたら私にも被害が来ていた。おばちゃんからの好意は結局のところ、おばちゃんのため私をすり潰す行為に続いていたはずなのだから……。


 私と言うカモに餌を与え、逃げられないようにした後に売り払う。そんなところではないのかと考えている。

 そう考えたきっかけは小さく。善意の割には理知的な行動がずっと引っかかっていたと言うだけのものだ。


 つまるところ、本当の善人は施しに利害など考えもしないだろうと言うこと。門番さんたち家族との触れ合いでそれがよく理解できてしまったからとも言える。


 おばちゃんの行いには、自分の損になる事を出来るだけ抑えたいと言う、そんな思いが強く感じられた。食事がもやしだったりね。


 私も、タダ働きさせられていた子供達も、残り物やもやしを与えられていたのは、同じ存在として見ていたのだろうと、私は推測する。


 そして私はフードとあっているところを見てしまった。私も誤魔化していたから、確証はなかったに違いが、そのまま放置するのも怖いだろう。

 それならばと、喋られなくするなり、さっさと売り払うなりするのではないかと思い。

 行動される前に私から行動を起こした次第だ。


 ただただ、私は私の安全のため、まだ直接になにもされていない、むしろ助けてもらっただけのおばちゃんを、追い詰めている。


 そんな罪悪感を抱き、しかしこの結末だけは見届けなければいけないと思い、ここまで来ていた。


 初めは、驚きと困惑。

 私を見つけてからは、なにかに気づいたかのように、私を罵り喚き散らかし始めた。

 そのおばちゃんの様子を私は詳細に語る気は無い。


 ただ、あったことだけを語って行くこととする。


 喚き散らすおばちゃんに対しても、ギルド職員たちは臆することなく包囲し、まずは逃げ場をなくしていった。


 メイガスがいくつか確認の、言葉を投げかける。おばちゃんにではなく、子供達へ。


 子供達の名前や両親の名前、そしてその両親に売られたのかと……。


 子供達はその問いで驚き、そして泣き崩れた。

 それはどういう感情からだったのだろうか……。


 ポツポツと今までの経緯を語り出したのは、トーカちゃんだった。


 泣きながらにあった事をそのままに語る。


 それを聴き終えたメイガスは、子供達を一時的にギルドで預かると宣言し、子供達をギルド職員に任せ、ギルドまで連れて行かせた。


 残されたおばちゃんもまた、囲っていたギルド職員たちに取り押さえられ、どこかに連れて行かれてしまう。

 ひとまず拘留し、自重聴取を行うとの事だった。


 酷く醜い顔で泣き崩れ、連れて行かれるおばちゃんに私は小さく囁き、頭を下げた。


「恩を返せなくて、ごめんなさい……」


 傍で立つメイガスには聞こえていたかもしれない。

 しかしメイガスは何を言うでもなく、ただ嘆息し、私の下げた頭をはたくのだった。


 なんだよ。もー。とメイガスを見上げるが、メイガスはすでに歩き出してしまっている。


「なにしているのですか。置いていってしまいますよ?」


 待っていてほしいだなんていってないし。

 内心でムクれながらも、テクテクとメイガスの後を小走りに追いかけた。




 ギルドに戻り、ワーナさんと合流したのはその1時間ほど後である。

 結局、また待たされたのは私の方だったようだ。


 今日はワーナさんに頼んで依頼を受けてみようかと考えていたが、そんな気分でもなくなってしまい、また修練場でいくつか魔法について教えてもらいながら、実践してみたりして過ごした。




 そんな時間を過ごし、ワーナさんとも別れた後、泊まるところもなくなってしまいどうしようかと悩んでいると。

 今日は子供達と一緒に泊まっていって良いとメイガスが言ってくれたため、ギルドに一泊することになった。


 その夜、塞ぎ込んでしまっていた子供達の気晴らしにと、枕投げを発案し行ってみると、しだいに子供達の表情も明るいものとなった。

 でも、白熱しすぎてしまって、宿直していたギルド職員に怒られてしまったが。




 遊び疲れ子供達が寝る中、私も用意されていた毛布にくるまる。

 隣にはトーカちゃんがおり、寝る前に少しお話をした。


 トーカちゃんたちの今後のことについて--。


 メイガスは子供達と今後のことについて話していたらしく、ほとんどの子がギルドで下働きをすることになったそうだ。

 全員をギルドで面倒は見きれないため、それ以外の子は商店などで見習いとして、住み込みで働くことになっているという。


 親元に帰れる子はいないようであった。


 人身販売は重罪であり、お咎めなしとも行かず、両親たちはしばらくは労役につくこととなったようである。

 しかし、それも1月程度であり、従来の刑罰と比べ軽いものでもあった。


 一月後には親元に帰れるかもしれないという期待と、迎えにきてもらえないかもしれないと言う不安の板挟みで、トーカちゃんはなんとも言えない複雑な表情でこれらのことを教えてくれた。


「そっか……」


 としか私は返せず、トーカちゃんの頭を撫でてあげることしかできない。

 撫でてあげているうちに、トーカちゃんは寝息を立て始め、私もそれに誘われるように眠りについた。




 その日見た夢には毒を吐くメガネの独白もなく。普通の夢だったと思う。


 なぜかドレスを着て森を走っていると言う、よくわからないものだったけれど--。


失踪事件編はこれにておしまいです。

当初こんなお話は予定になかったんですけどね……。

次回からはまた日常に戻り、依頼を受けたり日々の生活を書いていく予定です。


拙い文章と構成ですが、今後も楽しんでいただけたら、幸いです。

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