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17:事件の真相1

 門番さんのお家からの帰り際、今日は泊まっていったらどうだ? と門番に行ってもらえたが、なにも言わずに他で泊まるのも、おばちゃんに悪い気がして遠慮させてもらった。

 まあ、また宿に泊めてもらえる保証もないので、その時は門番さんのとこに泊めてもらおうかな。

 なんだか家出少女みたいだけど……。

 早く仕事を見つけないとな……。




 私はそこそこ暗くなってしまった街道を1人恐々と進んでいた。

 明日は依頼を受けられないかワーナさんに相談してみようとか、不用意に街中で魔法は使用してはいけないと言われていたが、ここで明かりを出しちゃダメなのかなぁとか、様々な事を考え恐怖心から目をそらす。

 通りには住宅が並んでいるが、住人たちはすでに就寝しているようで、物静かなものだ。

 そうして進んでいるうちに、比較的明かりの多い通りに出る事が出来る。

 安堵に一息つき、どの辺りなのかと周りを見渡す。暗かったこともあり、覚えたての道を間違えていないか不安があったのだ。


 想定していた位置ではなかったものの、辛うじて見覚えのある場所を見つける事ができ、通りを一本ずれてしまっただけだということに気づく。

 そこは裏路地へと続く道の近くだった。

 人通りは少なく、裏路地に続く道から賑わう声がかすかにここまで届いている。


 時刻としては20時ぐらいだろうか。一般のお店はすでにしまっており、まだ営業しているのはお酒などを取り扱うような飲食店だけである。

 裏路地には、そう言ったお店があるのかもしれない。


 かすかに響くガラの悪そうな笑い声に興味を惹かれ、聞こえてくる薄暗い道を少し覗きこんでみる。

 裏路地に続く薄暗い道……そこに……。


 --ッ!


 覗き込み、フードを被った人物に私が気づくのと、フードの人物がこちらに気づき走り去るのは同時であった。

 そしてそのフードの人物がいた場所に残る2つの人影、それは宿のおばちゃんと見覚えのない少年だった。


 私はこの場面を見て、もう間違いないのかもしれないと、心が冷え切ってしまったような、そんな感覚に襲われる。


 メイガス。貴方が落胆していた……人に落胆してしまった気持ちが少しわかるよ……。


 人は絵顔を振りまきながら、酷い嘘をつくんだ。

 その嘘に気づいてしまった時、心が凍えそうになってしまうんだね。

 キッカちゃん達が温めてくれたのとは逆にさ……。


「あれ、おばちゃんじゃないですか。それと……宿で働いてる子だったよね?? 2人だけでどうしたんですか?」


 努めて明るく、意外そうにおばちゃん達に声をかけた。走り去ったフードなど気づきもしていない。見覚えのない少年は覚えていないだけで宿にいた子であると思っている。そう見えるように。


 酷い嘘に気づいてしまった時、その嘘に傷つけられないようにする方法。

 それは嘘を突き返すのが一番簡単だ。そんな酷い嘘には気づいていませんよと。


「……いや、ちょいと迷ってしまってね。もう歳なのかねぇ。よかったら宿まで案内してくれないかい? そしたら今日も泊まっていくといいさね」


 そう言うおばちゃんの目には、いつもの優しげな眼差しが消えてしまっているように感じられた。

 それはここが薄暗いからなのだろうか? それとも--。


 おばちゃんに嘘などなく、私に同情してくれているだけ。

 少年の目が虚ろで泣き跡があるのも気のせいで、おばちゃんに裏などなく身寄りのない子達を雇い入れているだけ。


 そう思いたい……。


 でないと悲しいから。




 少年は押し黙り、おばちゃんと私は本心を隠し、たわいもない会話を交しあっていた。


 宿に着くとおばちゃんは食事の用意をしようかと言ってくれたが、すでに食べてきたので大丈夫だと伝え、そそくさと部屋に戻った。




 その夜私は寝ずに考える。昨日の夢で気づいた失踪事件の真相について。


 昨夜の夢で見た、事件の資料に出てきた容疑者のフードを被った人物と、裏路地に続く道にいたフードの人物。これが別人だと考えるには特徴が合いすぎている。

 少なくとも、明日メイガスに確認すれば確証が得られることだと思う。

 メイガスが広げていた書類、そこにはメイガスが集めたこの容疑者の情報も細かく記載されていて、メイガス自身この容疑者を尾行していたのではないかと思わせる内容もあった。

 そして、このフードが誘拐を行なっている犯罪者達の一員だと確信しているようでもあった。


 書類には、


 ◇コークの街

 失踪者:リンカ

 母:カリン(職なし) 父:エドガー(草魔法師)


 失踪者:ユート

 母:サリー(針魔法師) 父:(失職中)

  ・

  ・

  ・

(以下は省略するが、書類には計13名の失踪者について記載されていた)



 ◇サイーダの街

 失踪者:エミリア

 母:イレーヌ(職なし) 父:スード(土魔法師)


 失踪者:トーカ

 母:カナリア(職なし) 父:ヨグド(呪文魔法師)

  ・

  ・

  ・

(以下は省略するが、書類には計12名の失踪者について記載されていた)


 とこのように、行方不明となった子供達の名前と、両親の名前、それと職業が住まいの街ごとに分けてまとめられていた。コークの街と言うのがこの街である。


 書かれた街はコークとサイーダの二つだけで、それ以外の街では行方不明者は出ていないとなっていた。


 また、フード達は人身売買を生業にする犯罪者集団である可能性が高いと言う事も、記されていた。

 そして、売買に経路として考えられる港町や国境沿いへの通達が行われていることも。


 これによって、犯罪者達の退路も封じてしまう計画をたてていたようであった。


 しかし、タヌキ警備隊長の一言でこの計画は頓挫する。


 失踪事件は解決した。

 そう決定が下されてしまえば、いつまでも退路を封じては置けないのだから。付け加えて言えば、人身売買の通達もなかったことになり、秘密裏に国外に出されてしまうかも知れない。


 そうなってしまえば、もう取り締まるのは難しいだろう。


 この事とさらにもう一つ、この事から考えられる要素に、メイガスは気づいてしまったのだと思う。


 犯罪者達は確かにいる。そう課程した場合、タヌキ警備隊長もまた犯罪者達の協力者である事に。


 つまりメイガスが気づいた事件の真相とは、以下のようなものだと思われる。


 失踪者達は人身売買を目的とした犯罪者達にさらわれ、密かに港町などに運ばれ、国外に出されてしまっている。

 そして、それを突き止め港町や国境沿いに通達し、退路を塞ぐ計画を立てた。しかしこれをタヌキ警備隊長が崩す。初めから警備隊長は金銭でつながっており、この状況を打開するべく、事件は解決したと嘘をついたと言う事だ。

 そしてこれによって、犯罪者達の生業は続けられ、警備隊長の懐は暖かくなる。


 メイガスはそう推理したのではないだろうか。






 しかし私が考える真相は少し違う--。


 そして、私が考えるその真相が真実であった場合、私はどうすればいいのか悩んだ。


 悩んで悩んで……。


 結局、朝になるまで答えは出なかった……。




 悩んでいるうちに寝ちゃって……アハハハ……。


長くなりそうなので、ここで一度きります。

次回は早めに投稿します。

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