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14.仲良くすべきは可愛い子かおかしな人か

 今日も朝食に大量のもやしを用意してくれるとのことで、有り難く食堂の席に着き待っていた。

 朝という時間よりも昼に傾きつつある時間帯ゆえか、食事をする人はほとんど見かけない。

 逆に従業員であるらしい子供達が複数おり、掃除などをしていた。


 私、これから食べるんだけど……。ハタキとか、ホコリがさ……。

 まあ、お金も払ってないし、客じゃないから気にされなくても当然なんだろうけどさ……。


 とか思っているところで、もやしを給仕の子供が持って来てくれる。

 ちょうど良いので気になっていたことを、聞いてみよう。


「ねぇ。ここの従業員ておばちゃん以外、君ぐらいの子供ばかりだよね。やけに多いけど何人ぐらいいるの?」


「今は、10人です」


「今は……ね。それと実はずっと気になってたんだけど、それって本物?」


 と私は給仕の少女の頭に乗るものを指差した。

 ピコピコと動く、柴犬の耳を思わせるそれを。


「え?? は、はい。本物ですけど……」


 うん。やっぱり気のせいだったり、気の迷いではなかったんだね。

 ファンタジーだねぇ。この世界。


「いや、変な意味はないんだよ? 始めてみるからさ。珍しくて」


「ああ、そうだったんですね」


「ん。そうそう。それでさ、君の名前ってなんていうの?」


 ナンパ野郎のごとく、少女に尋ねる私。

 お、警戒してる?

 尻尾が立ち上がってこちらからも見える高さになっていた。


「あはは、警戒しなくても大丈夫だよ。この宿にも散々お世話になったし、これからも会う機会が多いかもしれないからね。可愛い子の名前でも覚えておこうかなって思ってさ」


 と笑いかけ「仲良くしたいんだけど……ダメ?」とキッカちゃんを真似してかわい子ぶってみた。

 女の子は頰を少し赤らめながら、


「そんなにか、可愛くないよ……。でも、私も仲良くしてもらえたら、嬉しいな……。私はトーカって言うの……」


 モジモジと恥じらいながら、答えてくれる姿が可愛らしすぎる!!

 マジ萌える!

 ふ、私ってナンパの才能ありかも!?

 とか、悶えたり自画自賛したりを内心で行いつつ、表には出さないよう気をつける。


「トーカちゃんかー。もうすっごく可愛いよ! あ、私はミズカ。名前教えてくれてありがとうね。仲良くしようね」


 とトーカちゃんに微笑みかける。


「は、はい! よろしくです。 あ、もうお仕事に戻らなきゃ。ごめんなさい」


 と言ってトーカちゃんは厨房裏にかけて行った。

 残された私はもしゃもしゃもやしを食べながら、『トーカちゃんかー。可愛い子だったな。しっかり覚えておかなきゃ』とどこかのメガネのように、独白するのだった。


 食事を終え、画材をキッカちゃんに渡しに行かなきゃと、外に出たのだが、日が既に高く上っている。

 昼間にはギルドに行く約束があるため、仕方なくギルドの後、そのまま返しに行こうと画材も一緒に持っていくことにした。




 ギルドに到着し、なんとなくにメガネの受付を探していた。

 あの外ズラと内面とのギャップは、個人的に嫌いじゃない。むしろ面白い人だなと好感を持っていたから探してしまったのかもしてない。

 言動は嫌味ったらしくて、少々ムカつくが。

 少し見渡して、メガネの受付を見つけたのだが、メガネはどこか元気がないような、覇気のない様子であった。


「こんにちは。なんだかしみったれた顔をしてますけど、どうしたんですか?」


「え、あ、あぁ。貴方ですか。しみったれた顔などしていませんよ」


 受付に並んでいる人もいなかったので、話しかけてみたが、やはりどこか覇気がないように感じられた。

 毒も吐いてこないし。


「そうですか? 誰にも打ち明けられない悩みを持った女々しいもやし男のような表情をしていますよ?」


「ふん。どんな表情ですかそれは。そのクリクリのお目々を一度くり抜いて洗って来た方が、良いのでは無いのですか?」


 お、少しは元気が出て来たかな?

 少し口角が上がって、意地の悪いニヤつきが顔に現れ始めている。


「クリクリで可愛いでしょう?」


 と私も少しニヤつき返してやる。


「それはそうと、メイガスさん」


「ん? 私の名前お教えしましたっけ?」


「そんなことはどうでもいいでしょう。メイガスさん」


 私は繰り返しメガネの名を呼んだ。

 夢の通りメイガスであっているようだ。

 そして、彼の耳元に口を寄せ。


「もしかしたら、私。悩み事について協力出来るかもしれませんよ?」


 と小声で囁いたーー。




 驚いていたメイガスは放っておき、約束通り係員のところに行った私は待たされていた。

 誰にって、私を引率してくれる予定の絵魔師にだ。

 かれこれ1時間は待っているような気がした。

 時計などないので感覚的にだけど……お腹の。


 それからさらに1時間ほど、お腹の虫がおやつの時間ですよと報せてくれた頃。

 ついに待ち人はやって来た。

 私も締め切り以外の時間についてはルーズな方であるが、自分がやられて嬉しいわけもない。

 正直な話、第一印象は既にあまり良くない。


「いやー。まいったまいった。小鳥を飼っているのだがね? その小鳥が目を覚ますと2メートルを越す巨体になっていたのだよ。ビックリするだろう? しかしね。それ以上に驚愕すべきことに、私の愛鳥がメイドたちをバリバリと……阿鼻叫喚とはこの事だと思ってしまったよ。いや、驚きすぎると笑ってしまうものなのだね。それにも驚き、驚いてばかりだったのだけれど、なにが一番驚いたかって、それが夢で、本当に目が覚めた時、私は鳥など飼っていない事を思い出したことさ。あれは呆然とさせられてしまったよ。あはははははー」


 現れると共に長々と語り出し、よくわからない話で笑い出す。この人が私を引率してくれる絵魔師『ハーナイト・ヨルド・ワーナリス』と言う女性との出会いだった。


「ワーナと呼んでくれたまえよ? さあ、仲良くやって行こうじゃないか!」


次回! ついに魔法の登場か!! 乞うご期待!


(作者も魔法書けたらたらいいなーと思っとります)

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