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13.結局夢は夢?

 私は宙に浮き、ギルドの受付を見下ろしていた。

 言うまでもなく夢だ。

 この夢が始まってすぐに私は、昨日見た夢のことも思い出していた。

 起きている間はすっかり忘れてしまっていたが、ギルドの受付をしてくれたメガネは昨日の夢に出てきた、独白のメガネだ。

 そして今見ている夢もメガネの独白が続いていた。


『また、失踪事件ですか……。あまり仕事をふやさないでもらいたいものなのですが……』


 書類を手に溜息を吐くメガネ。

 どうやら、噂の失踪事件についての資料のようだ。

 どれどれ。と私は宙を移動しメガネの背後に回り、資料の内容に目を通していく。

 この明晰夢も2日目だからね。移動するぐらいのコツは得ましたよ。


 えーとなになに?

 資料には失踪者と失踪した場所、これに対する

 捜査依頼などが書かれていた。さらにこれまでの事件との関連性から、同一犯の可能性が高いことも記されている。

 関連性というのは失踪した場所、あの裏路地周辺が多いということと、失踪者が子供であるという点が挙げられている。

 また、不確かな情報としてではあるようだが、裏路地周辺で怪しい人物を見たという証言も付いていた。

 ボロのマントを着ていて、フードも被っていたため、顔や個人を特定出来る情報ではないようだ。


 あとは、と続きを読もうとしたところで、メガネが資料を畳み引き出しの中にしまってしまう。


『なにが失踪事件ですか。明らかに誘拐事件として扱う案件でしょうに。だいたい同一犯の犯行と書いている段階でそう判断しているのはわかっているのですから、自分たちで捜査を続ければいいものを。まったく。おおかた解決できずに批判を受けたくなくて、ギルドを利用しようと思っているのでしょう。あのクソダヌキが!』


 おや、今日も毒が出てまいりました〜!


「メイガスさん警備隊長殿がおいでになられましたので、3階の応接室にお願いします」


「はい。わかりました。すぐ向かいます」


 ギルドの女性職員にメガネが声をかけられ、メガネは机に纏めてあった書類を持ち、上階へ続く階段へと向かっていった。

 ふむ。メガネはメイガスと言うのかぁ。でも夢だしなぁ。とりあえずここに居て独白だけ聞いてても、よく分かんないしあと追ってみるかな。


 メガネはそのまま階段を上っていき、三階のある扉の前まで歩くとそこで止まる。

 一息つき、軽く身だしなみを整え、メガネをクイっと上げてから、


「失礼します」


 と、言ってから室内に入っていった。

 私も後に続き中に入る。そこには軽装ではあるが鎧を着て休めの姿勢で立っている2人の兵士とその前に偉そうにソファに座っている人物がいた。

 偉そうな人物も軽装の鎧を身に纏っているが、小太りなその体には全く似合っておらず、関節部など鎧の隙間からもれる肉がなんとも笑える。

 どうせ聞こえないので、散々に笑っておきました。

 こう、プニってはみ出してる感じがツボにはまってしまって……ブフっ。


「やっと来たか……。まったく、あまり私を待たせるんじゃない」


「失礼いたしました」


 不愉快げに偉そうな小太りが言う。

 メガネはそれに恭しく頭を下げているが……。


『うるせえ! 成金豚が! 勝手に来ておいてブヒブヒとわめくな!』


 内心はこんな感じ。

 外面が良すぎて、内心とのギャップがいっそ清々しい。


「それで本日はどのような御用向きで?」


 内心では『さっさと逃げて来た精肉所へ帰れ』と罵倒しながらも、小太りに訪ねるメガネ。


「失踪の件についてだ」


『もう催促ですか? 自分で解決が出来なかった時の批判や責任を怖がって、ギルドに丸投げしたくせに、図々しい』


 小太りが切り出すと、メガネがすぐに内心で悪態をつく。


「あの依頼は解決した。もう捜査の必要もない」


「は? どう言うことですか?」


「ふん、お前たちギルドがノロノロとしている間にこちらで解決したといっている」


「し、しかしそんな話」


「秘密裏に行った、我々の捜査によってだ。ギルドの情報網などに引っかかるはずもあるまい」


 馬鹿にするよう、小太りが鼻で笑う。


「そ、それは何よりでございました……因みに犯人は……」


「犯人などおらん。他所の街で失踪したと言う

 者が見つかっている。それよりも今回の件、ギルドはなにもしていないのだから、依頼料は全額返してもらうぞ」


「それは……わかりました……1階の受付で後ほどお受け取り下さい……」


「ふん。今日の用はそれだけだ。帰るぞ!」


「はっ」


 そう言うと小太りは両手を広げ、掛け声とともに控えていた兵士たちが、その腕を掴み持ち上げる。

 1人で立てないのかよ!? ならもうそんな鎧来てくんなよ!

 私のツッコミが炸裂してしまう。


「あ、あの失踪者たちはいつ戻って来るのでしょうか?」


「戻ってなどこん。見つかった街で雇われそこに住んでいる。もう良いだろう。この件は解決した。それだけだ」


 それだけ言い残し小太り達は部屋から出ていった。

 残されたメガネは独白する。


『どう言うことなんでしょう? 犯人がいない? そんばはずはないはず……既に目星も付いていたのです……。それに失踪者達、子供達が雇われ帰ってこない?? それこそおかしな話です。彼らの帰りを両親が待っていると言うのに、まだ幼い子供が1人も帰らないなど……』


 そう悩みながら、手に持っていた書類をテーブルに並べ確認していくメガネ。

 そして目が一点に止まり、


「はっ! まさか……! しかしあの豚なら……。みな嘘つきばかりです……ろくな人間などいないんですね……」


 何かに気づいたように呟くが、それも後半は何かに対する諦めをにじませるようなものになっていた。

 気になり私もメガネが見ていた書類に目を通してみた。


 あ〜。なるほど。私にもなんとなくわかったかも、この事件の真相……。


 そこで私の意識は途切れ、やや高く上った日の光を浴び目を覚ましたのだった。


 今度は夢の内容も覚えている。

 でも、まあ夢だしな〜。


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