11.メガネとギルド登録
昨日とうこうできなかったぶん、少し頑張って二つ目投稿です。
次のも明日の昼過ぎにアップ予定です。
別れの挨拶のため立っていた私は渋々ソファに座り直した。
「それでは始めましょうか。まずは絵魔師の職につきたいとの事でしたので、ギルドへ登録をしてもらいます。これは魔法職に着く者を把握し、魔法を使用した事件などの捜査を円滑に進めるための措置でもあります。くれぐれも悪用はしないようにして下さい」
メガネが説明を始めるが、なんか口調は丁寧なのだが、端々に毒を感じるのは気のせいだろうか……と言うか、悪用する前提で言って来てない?
「また5年に一度、更新の為ギルドに来て講習を受ける義務があります。どこのギルドでも行う事が可能ですが、5年を過ぎても講習を受けなかった場合、職の資格を失い仕事の受注が出来なくなります。資格のないまま魔法職の仕事を行なった場合、最悪捕まってしまいますから、忘れず講習は受けに来て下さい」
やっぱり元の世界の免許っぽい。
「5年経ったら、お知らせとかしてくれるんですか?」
元の世界ではそうだったので聞いてみたのだが、「んなわけないでしょう」と呆れた声で返されてしまった。
「5年後にどこに居るかなんて、知るわけないんですから、そんなことできるわけないでしょう。仮に5年後にギルドへ来た際に知らせるにしても、登録者全員に対応などして入られませんよ」
とだめ押しまで来た。
最後にはため息までついている。
「早めに来るぶんには、いつでも良いので早めに来ることをお勧めしますよ。講習を受けてもらった日からまた5年後に更新とうい形になります」
との事だそうだ。
でもこれ、やろうとすればギルドに来た際に知らせることは出来そうだよね。
5年以上講習に来てない人の資格を剥奪しなきゃいけないのだから、その辺りを把握してないわけがない。
つまり、人に頼る前に自分でしっかり自覚して来いと言うことだろうか?
いや、対応がめんどいってのが本当のとこだな。講習受けさせるよりも、何も言わずに剥奪しちゃった方が楽そうだし。
「と言うわけで魔法を使用した犯罪が増加しています。こう言ったことに巻き込まれたり加担しないようにするためにも、講習を受ける事が重要になるのです」
やばっ、話続いてた。
「ん? 聞いていましたか?」
「もちろん!」
聞いてましたよ? 最後の方は……。
嘘はついちゃいけないって、おばあちゃんから言われてるから、嘘は言わないよ!
「そうですか。では登録を始めますので、こちらの水晶に魔力を流し込んで下さい」
いつの間にか、机に置かれていた水晶玉をこちらに押し出して来る。係員さんが入って来る時何か持っていたような気がするので、これだったのだろう。
「魔力って言われても……」
「あぁ。魔力ガイダンスはまだでしたね」
あんたが勝手に登録の説明を始めちゃったからね。と心の中で毒づく。
「測定した時のイメージを思い出しながら、水晶に触ってください。そこからイメージした色の流れをこれに注ぎ込むよう意識を向ければ出来ますよ。想像力が貧相でなければ」
最後の一言はちょっとカチンと来た。
私の想像力が貧相だと?
これでもイラストレーターの端くれだ。想像力を馬鹿にされるわけには行かない。
水晶玉に手をかざすと、即座に血の流れと色の流れを体内のイメージする。そしてそれを加速させるイメージを追加し、手のひらから噴射させる勢いで魔力を水晶玉に叩き込んでやった。
「(ドヤッ!)」
と言う心の声と共にメガネに顔を向ける。
「ほう……まあまあですね」
「イヤイヤ! めちゃくちゃ早いですよ! しかも量も測定時より多いんじゃないですか?!」
係員が驚き、そう言うと「チッ」と舌打ちが聞こえた。
なるほどなるほど……メガネの強がりだったと……ニヤニヤ……。
「気持ちの悪い顔をしていないで、さっさと魔力止めないとまた気絶しちゃいますよ?」
メガネが誤魔化すように言って来るので、ニヤニヤを続行してやろうと思い……。
「え! どうやって止めるの!?」
数瞬遅れて慌て出す。
「(ニヤニヤ)」
クソメガネめ! 良い顔しやがって!
私はちょっと涙目だよ、チクショウ!!
「お、落ち着いて下さい。大丈夫ですから。そのまま気を落ち着かせて、そう……。そのまま流れが緩やかになり……身体の中心に戻ってい来ます……」
係員も最初は少し慌てていたが、すぐに落ち着いた声で語りかけて来て、言葉がスーと染み込んで来た。
魔力はイメージ通り身体の中心に帰って行き、止める事ができる。
やっぱり催眠術だよね。これ。
「はい。これでもう安心ですよ。今のイメージを覚えていて下さいね」
「あ、はい。ありがとうございます」
「いえいえどういたしまして。それにしても貴方がそんな風に笑う所を他人に見せるだなんて、珍しいですね」
係員はそうメガネに微笑んだ。
「ふん。あとはこれに名前と希望職、絵魔師と書いて提出しておいて下さい。残りの説明もこの人がしてくれるでしょう」
メガネはそう言って記入用の用紙を置くと、そそくさと部屋から出て言ってしまった。
「え、ちょっと、私も残業は嫌なんですけど!?」
窓の外では、日が落ちて夜になっている。
係員の呼びかけに応えるものはなく、静かな部屋には「ほー」とフクロウだろう鳴き声だけが響くのだった。