一章 魔王さまによる迷宮《ダンジョン》ぶっちゃけ解説 - 06 - 分析
一章 魔王さまによる迷宮ぶっちゃけ解説 - 06 - 分析
また魔王バランはフリップを取り替える。
一番最初に使ったフリップだった。
「カメラ少し引いて……どうしたの、右にずれちゃったよ。左に戻してフリップ全体が映るようにして」
魔王バランと運営スタッフによる、心温まるやり取りがあった後、丁度おさまりの良い位置を見つけて画面が止まった。
「なんか、ぐだくだ感がでちゃったけど、少数のスタッフで毎回手探り状態でやってるってことで納得して。それで、この最初に見せたフリップだけど、迷宮を攻略したパーティの統計データだったよね。
さっきは触れなかったけど、ここには迷宮ごとの攻略平均レベルがあるんだ。これを見るとはっきり言えるんだけど、上の階層から迷宮を進んでくることで、確実にパーティが強く成長していることが分かるよね。
パーティの人数ごとの平均攻略レベルも書いてあるけど、パーティの人数が少ないとより高いレベルが必要で、低いと少ないレベルが必要だってこともこれで分かる。考えれば当たり前なんだけど、ちゃんと数字で見るとわかりやすいよね……」
ここで魔王バランに腰を屈めたスタッフが寄ってきて、何やら話しかけている。
マイクの音量をゼロにしたので何を話しているのかは見ている側からは聞こえない。
魔王バランはうなずきながら聞いていたが、簡単な指示を出すとスタッフは離れて行った。
「あーごめん。どうやら、ダンジョンからの映像が途切れたそうだ。原因を調べてるけど、復旧にはしばらく時間がかかるらしい。一通りの解説が終わったら、みんなと一緒に見ていこうと思ってたんだけど、出来るかどうか分かんなくなったね。
えっ? 運営仕事しろって? 気持ちは分かるけどさ、今それ言っても心折れるだけだから、書き込むなら回復してからにして。それじゃ、話しを元に戻したいんだけど……どこまで話したっけ? ……ああ、そうそう、攻略平均レベルの話ししたとこまでだったね、コメントありがとう」
魔王バランは飲み物を口に含んで、軽く体制を整える。
「ようするに、迷宮の目的は冒険者の排除とか、魔界の拠点にするとかそういうことじゃないってことなんだ。俺が今まで話したことをすべてつなげていくと、ずっと隠され続けていた真の目的が明らかになってくると思う。
……おっ、さっそくコメントきたね。正解する人も多いけど、ダイエット効果があるとか、宇宙との交信とか書いてる人は、もうちょいヒネろうよ。で、わかってる人多そうだからもう言っちゃうけど、迷宮の目的の一つが冒険者を強くすることなんだ。通路を適切な広さに保つことで、パーティの人数を制限して、個々の力を十分に高めることができるように作られている。
……なんでそんなことする必要があるの? って、いい質問が来たね。でも、それはひとまず置いとこう。置いとく必要があるのかって? それは、こっちにも都合ってもんがあるんだけどって……さっきのやつかって、分かってて聞いちゃうの? あんまり、運営おもちゃにしてたら泣いちゃうよ?」






