三章 魔王さまによる魔法解説『魔法ってなんだろう?』 - 17 - 実験解説
三章 魔王さまによる魔法解説『魔法ってなんだろう?』 - 17 - 実験解説
「そうだそうだ、納得できねぇ、説明しろ、スタッフが仕込んだんだろ……そんなわけないでしょ。それじゃなんのために実験やったんだよって話だよ? でもまぁ、言いたいことはよく分かるから、説明するね。
さっき説明するとき使ったフリップをもう一度だすね。さっき書き込んだ矢印のことなんだけど、それがベクトルだっていう話はさっきしたよね? で、肝心なのはそこなんだよ。
一つ目は中から外に向かってベクトルが伸びてるよね。エネルギーがほぼまんべんなく周囲に向かって伸びていく形になっている。ただ、エネルギーの一部は岩石を破壊するための力ではなくて、破壊された岩石が外に向かって飛び出す力に変わってるんだ。それに比べて二番目の実験のこの図では、ほとんど横からエネルギーがぶつかってきている。
このエネルギーは岩石全体を移動させようとする力になって、その一部がこの図に書いてあるように破壊するための力に変わったんだ。しかも、片方だけからエネルギーが加わっているために、反対側まで影響を及ぼすためには相乗的なエネルギーが必要になった。
そういった複合的な要因が、200倍以上もの力が必要になった理由なんだよね。つまり、リュールちゃんが必死で使ってくれた古典魔法は、非常にエネルギー効率の悪い方法なんだ。その視点から、最後の実験を見ていくよ。スマートフォンでやったやつだね」
魔王バランは話ながら、フリップを一枚だけ残す。
「さっきの説明で使ったこれを見て欲しいんだ。エネルギーの発生源が花崗岩の中心部になっているよね。これは、転移魔法を合わせて使ったんだ。それによって、最も内部破壊するのに相応しい位置にエネルギーを発生させた。
でも、それだけでなくて、周囲に魔法シールドを張ることで外に魔法エネルギーが漏れないようにした。同時にその内側にまんべんなくエネルギーを発生させて内向きに向かうエネルギーを発生させたんだよね。
これによって、外側のエネルギーと内側のエネルギーはそのほとんど全てを運動エネルギーへと変化することなく、岩石を破壊するためのエネルギーになったんだ。周囲から内側に向かうベクトルと外側から内側へと向かうベクトルが意味することはそういうことだったんだよね。
あの砂状になった花崗岩の意味は、構造解析によって正確に計算された一切無駄のないエネルギー効率の良さによって生じた現象なんだ。当然その結果、必要な魔力は圧倒的に少なくて済むことになったんだよね」




