三章 魔王さまによる魔法解説『魔法ってなんだろう?』 - 16 - 質問
三章 魔王さまによる魔法解説『魔法ってなんだろう?』 - 16 - 質問
とっくに終わったことなのに、リュールは今この瞬間もホッと胸をなでおろす。
その仕草をみた視聴者がコメントを流して来たが、魔王バランは構わず質問を続ける。
「それじゃ、スマートフォンを使った時はどうだったの?」
質問は短かった。話の流れ的に合いの手のような質問だからだ。
「なんというか、あっけなかったですね。なんの手応えも感じなかったもので、正直こんなものかと思いました。でも、結果はああなったわけで、つかったわたしが一番びっくりしてるかもしれません」
リュールが話したことは、とても大切なことだった。ただ、さすがに鍛えられた視聴者だからと言って、そのことに気づいた者はほとんどいなかった。
「今の話はとても重要なことに関係してるんだけど、そのことに触れる前にちょっと補足しとくね。魔法学では魔力をエネルギーだと捉えていると言ったでしょ。当然エネルギー量としての独自の単位があるんだけど、ただあまりにマイナー単位だからほとんど知られてない。
もちろん、君らもそんな単位ではなされてもポカーンとするだけだよね。だから、わかりやすくここだけの単位を決めよう。そのための基準となるのが、最初に実験で使った爆薬のエネルギー量だ。仮にこれを10とする。
次は、リュールちゃんが使った魔力を同じ単位に直して計算すると、実に2576にもなるんだ。桁が違いすぎる、計算間違いじゃね?……コメントありがとう。後で説明するから、今は待ってて。
で、最後の実験に使われたエネルギー量は1程度なんだ。信じられん、嘘じゃね?、計算間違いに間違いない……まぁ、だいたい似たような意見ありがとう。それで、リュールちゃんは今のこの話聞いてどう思った?」
けっこうややこしい話に流れているので、魔王バランはリュールに話を振って空気を変える。
「えーと。そうですね、わたしもコメントと同じような意見ですね。さすがに計算間違いということはないと思いますけど、でもスマートフォンでの実験結果は他の二つが破片になったのに比べて、細かく砕かれて砂のようになっていました。
それを見ると、さすがに感情的に納得できないというか、いくら考えてもよく分からないのですよね」
魔王バランが話をふったリュールは、みごとなまでに視聴者の疑問を代表してくれるような答えをしてくれる。




