一章 魔王さまによる迷宮《ダンジョン》ぶっちゃけ解説 - 05 - フリップ解説
一章 魔王さまによる迷宮ぶっちゃけ解説 - 05 - フリップ解説
簡単にコメントを処理しながら、魔王バランはフリップが良い感じに画面に収まるのを待つ。
「よし、そのへんかな? それじゃ、これを見て欲しいんだ」
魔王バランが示した断面図は、上段中段下段と色分けされており、指し棒は上段部分を示している。
「この色分は、魔物の生息分布を表してるんだ。これを見ると分かると思うけど、段階的に強い敵が現れるように出来ているのが、すべての迷宮に共通する特徴だよね。
でも、これって実に不合理なんだ。これが拠点となるような要塞なら、そもそも内部に侵入させた時点で失敗なんだよね。施設を守ることが目的なら、戦力を集中できる場所を造っておいて、そこに敵を誘導するように設計するのがセオリーなんだ。
キルゾーンって呼ばれる場所なんだけど、味方の損耗を可能な限り減らして確実に敵を殲滅することができればそれが一番いいよね。でも、迷宮ってどこもそうなってない……ああ、今いい指摘があったね。迷宮にもトラップとかモンスターが一斉に襲いかかってくるような部屋があるだろって……」
ここで魔王バランは一旦飲み物を飲んで口の中を潤しつつ、目の前のフリップを別の物に取り替える。
「カメラはそのままでいいから動かさないで……」
スタッフに指示を出しつつ、指し棒でフリップの一部を示す。
「これって、とある迷宮のマップなんだけど、代表的な作りになってるから持ってきたんだ。今、俺が指し棒で指しているのが、いわゆるモンスタールームって呼ばれているモンスターが大量発生する部屋なんだけど、見てのとおりここに辿りつくまでには複数の経路があって、かならずしもここにくるとは限らない。
しかもここに入った冒険者の大半が、傷の大小はあっても生き延びることができている。逆説的な説明になっちゃうけど、そのことがモンスタールームがキルゾーンではないことの証明になってるんだ」
ここまで説明した後、魔王バランはフリップを元の断面図に戻す。
「それで、話を元にもどすけど、もう一度これを見て欲しいんだ。この図が示すとおりに、上から下に向かってだんだんと強いモンスターが出現する。しかも、強いモンスターは上の階層には現れない。
この特徴が意味することは、迷宮というのが、要塞のような軍事拠点ではないし、何かを守るために作られているというわけではないってことなんだよね。では迷宮が作られた目的は何かって話になるんだけど、ここで最初の話を思い出してくれ」