三章 魔王さまによる魔法解説『魔法ってなんだろう?』 - 15 - スタッフ・リュール
三章 魔王さまによる魔法解説『魔法ってなんだろう?』 - 15 - スタッフ・リュール
「いえいえ、あんなことでよかったらいくらでも。正式なスタッフになったことですし」
リュールはどちらかと言うと型通りの返答を返した。
「それでどうだった? ロケ」
魔王バランはとっかかりとしてそこから入る。
「そうですね、とりあえず緊張しました。実験をやってる時は、一体自分がなんのためにやってるか良く分かってなかったんですが、魔王さまの今の話を聞いてなんとなく納得しました」
リュールは魔王バランの意図を汲んでか、いい具合に話の流れを作っていく。
「それじゃ、さっそく聞いていくけど、実験の中で一番たいへんだったのはどの実験かな?」
魔王バランは本題となる質問に入っていく。
「見ていた方はおわかりだとは思いますが、もちろん二回目の実験です。全力で魔法を使ったお陰で、なんとか花崗岩を破壊することはできましたが、疲労困憊な状態になりました」
正直にリュールは話す。
「それじゃ逆の質問するね。一番簡単だった実験はどれ?」
答えを聞いた魔王バランはさらに質問をする。
「もちろん、それは爆薬を使うやつです。わたしがやったことはボタンを押すだけでしたので」
リュールの答えは映像でみ、そうだろうと思うものだった。
「なるほど。では聞くけど、最後にやったスマートフォンを使った実験が、簡単でもなくたいへんでもなかった理由を教えてくれる?」
魔王バランはまるで待っていたかのようにそのことを聞いてきた。
さすがにこのことに関しては、魔王バランだけでなく視聴者全員が気づいていたことだ。
なのでコメントの数もそれほど多くは流れてこない。
「もちろん疲れるとかいうことはありませんでした。ただ、スマートフォンの操作がよくわからなくて、使えるようになるまでが結構たいへんでした。もちろん、使えるようになったらとても便利なことがよくわかりましたが」
この答えもまた、十分に予想できるものだった。というのも、スマートフォン初心者が誰もが通る道だからだ。
「それで、実際に使ってみた感じはどう? 便利とかではなく、自分で魔法を使った時と比べてどんな違いがあったかとかいうことなんだけど」
魔王バランはさらに深い質問をする。
「えーっと、そうですね。さっき話した通り、自分で魔法を使った時には本当に疲れました。自分の中にある魔力を総動員して魔法の詠唱をして、全力をぶつけました。なにしろ、あんな大きな花崗岩を壊したことなんてありませんから。
失敗したらどうしようという思いもありました。とても疲れましたが、それよりうまく壊れてくれたことにホッとしました」




