57/66

三章　魔王さまによる魔法解説『魔法ってなんだろう？』　－　13　－　基礎魔法学

　魔王バランは今立てかけてあるフリップの横に、先に説明で使った二枚のフリップを並べて立てかける。

　画面上には計三枚のフリップが並ぶ形になった。

「スマホすげー、スマホ最強、スマホ便利、リュールちゃんハァハァ……リュールちゃん見てるから嫌われないようにしなよ。

　あらためて、こいつを見てくれたらわかると思うけど、一見まったく違う結果になっているように見えるけど、実際はまったく同じ法則に基づく結果だったんだよ。それが矢印かってコメントありがとう。

　その通り、まったく違う結果に見えたのは、力が働いた方向が三つともそれぞれ違っていたからなんだよね。これをベクトルと呼ぶんだけど、力のベクトルが働いた方向に物体は動いていく。

　それは、物理的に生じた力でも魔法的に生じた力でも全く同じなんだ。それは最終的にどちらも物理現象になるんだよ。これがどういうことなのか、基礎魔法学は研究し続けてきた。

　そして近代基礎魔法学の研究において出た結論は、魔法もまた物理現象の一部であるということだったんだ。どうしてそう言い切れるようになったかというと、エネルギーとしての視点から捉えた魔力研究が飛躍的に進歩したからなんだ。

　その研究の応用として、生命体に内在する魔力を使うのではなく、魔力を魔鉱石から抽出する方法が発明された。この発明によって、三番目の実験でやってみせたようなことが可能となってきたんだ。

　正直な話し、魔王とか勇者とか言っているような時代はもう、お終いなんじゃないかって思ってるよ。さみしい話しだけどね」

　めずらしくしんみりした感じになった放送だが、別にここで配信が終わるわけではないので魔王バランはこの後普通に話しを続ける。

「僕らの夢を奪うな、知ってた、魔法は物理じゃない、魔法はロマン、世界は物理で出来ている……少し考えれば誰でも分かることなんだけど、その通りなんだよね。心臓も流れる血液も骨も筋肉も全てが質量を持った物質で出来ている。

　俺らは例外なく物理そのものだっていうことなんだ。極めて単純化して表現すれば、魔法は物質の状態を変化させるためのエネルギーなんだよね。ただ古来から人間たちにとって、不可思議な現象だと思われてきた最大の原因は魔力が熱や電気や運動といったエネルギーの一つなのだと考えられてこなかったからなんだ。