三章 魔王さまによる魔法解説『魔法ってなんだろう?』 - 09 - 現代魔法
三章 魔王さまによる魔法解説『魔法ってなんだろう?』 - 09 - 現代魔法
そんな視聴者の期待を裏切るように、一分ほどでリュールは姿勢を立て直す。
「ごめんなさい。お見苦しい所をお見せしました。それでは最後の実験をしようと思います。次の実験には魔法を使います。ただし、今の実験でわたしは全ての魔力を使い切ってしまいましたので、とある装置を使います」
話しながらリュールはテーブルの右端に置いてあったものを取り上げる。
幅77ミリ、高さ156ミリ、厚さが8ミリの長方形をした見た目はスマートフォンである。
「見ての通り元はスマートフォンですが、携帯電話機能は使えません。この実験のために開発したアプリがインストールされています。さらに魔力はUSBケーブルをこちらの魔法コアに接続して供給しています。魔法コアの魔力は満タンの状態にまで注入してあります」
話しながらリュールは横に置いてある、USBケーブルが繋がった魔法コアを持ち上げる。
魔力を使い切って疲労困憊しているリュールが、同じ魔法を使うことはまず不可能だろう。
そんなことは見ている視聴者も分かっているので、これから何が始まろうとしているのかじっと見ている状態だ。
リュールは魔法コアを下に置き、両手でスマートフォンを持つ。
「それでは初めます。まず最初にアプリを起動すると、画面はカメラの映像に切り替わります。カメラが捉えた画像の中で、ターゲットとして有効な対象物に緑色のマーカーが表示されます。今の所は一つだけです。最後に残った岩がマークされていますね」
リュールはスマートフォンの画像をカメラから見やすい位置に持ってくる。
すると、視聴者にもはっきりとわかるようになった。
「次にマークされた対象物をタップすると、マークの色が緑から赤に変わります。さらにもう一度タップすると、使用する魔法の選択画面になります。この中から『破壊』を選択して、安全確認にチェックを入れて実行ボタンをタップすると……」
その後は一瞬で進んだ。
空中にコンパスで書いたような円が浮かび、強烈な光を放つ。その光と合わせるように対象物となった花崗岩の周囲が一瞬だけ光りすぐに消える。光が消えたその後には花崗岩の姿はなくなっていた。
その間、瞬きするほどの時間も経っていない。
「ご覧の通り、岩石は粉々になりました。以上、実験は全て終了しました。それでは……最後、なんて言えばいいの? えっ? 好きにしていい……って言われましても……じゃぁ、実験終わります」
最後、グダグダな感じになって、動画が終了した。




